巨額の赤字で、戦略転換へ──英Vodafoneの“次の”一手英Vodafoneの現状と今後(1)(2/2 ページ)

» 2006年08月02日 16時07分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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グローバル戦略のメインターゲットは新興市場に

 同社の創業は1984年。1999年まで、その間に合併・吸収したAirTouch Communicationsと合わせた社名“Vodafone AirTouch”を名乗ってきた。社名がVodafone Groupとなったのは2000年のことだ。

 同社の歴史は携帯電話の歴史そのものといえる。携帯電話の急速な普及とともに加入者数が増加。グローバル戦略を強化しはじめたのは、1990年後半のことだ。欧州は通信方式の主流がGSMで、国境が近く陸続きという地理的事情もあって、比較的海外進出の敷居が低い。こうした利点を生かしながら同社は、国外オペレーターの買収や資本参加を重ね、欧州主要各国を初めとした世界地図をVodafoneカラーに塗り替えてきた。現在、同社は世界27カ国に進出している。

 このグローバル戦略は“One Vodafone”と呼ばれ、通信オペレーター事業に“規模の経済”のメリットを持ち込むことを狙ったもの。現在、同社は何もしなくても新規加入者が転がり込んでくる新興市場をターゲットに据え、2005年度中も、チェコ、トルコ、ルーマニア、インド、南アフリカに進出した。この新興市場は、加入者数増、売上げ増という意味で同社の大切な“エンジン”となりつつある。

Photo 2006年6月時点のボーダフォンの勢力図

“規模の経済”のつまずき

 一方で、“One Vodafone”戦略には影の部分もある。その1つとして挙げられるのは、必ずしも1つのビジネスモデルがすべての市場にフィットするわけではないという点だ。携帯電話事業では各地域の文化に根ざしたサービスや、端末が要求されることも多く、これは携帯電話市場が成熟するほど顕著に現れる傾向といえる。日本市場がまさに、その好例といえるだろう(2005年4月の記事参照)

 “Vodafoneはグローバルに進出しながらも、ブランドをうまく活用する方向に持っていくことができなかった”と指摘する声も多い。その例がローミングだ。日本でも展開している「Vodafone Global Standard」(VGS)は、GSMが普及し、ローミング設定が簡単な欧州では、さほど魅力的なサービスとしてアピールできなかった。同じVodafone網の場合はローミング料金を他社よりも格安にするなどの施策で、“グローバルブランドの携帯電話サービスに加入するメリットは何なのか”を、もっと明確に示す必要があったのかもしれない。

 なお、2005年にVodafoneは、ローミングサービスとして「Vodafone Passport」を開始している。これは、Vodafoneおよびパートナーのネットワーク上でのローミングに適用されるもので、登録は無料。国外で発信する際、自国で加入しているサービスの通話料金が適用され、ローミング料(通話時間ではなく回数に対して課金)のみを追加で払うというものだ。受信は、追加ローミング料を払うのみでよい(以前は、受信でも通話時間に応じたローミング料が課金されていた)。

 Vodafoneはこれを主要なエリアで提供することで、グローバルブランドの強化を狙うと同時に、欧州連合(EU)の規制当局から指摘されていたローミング課金体系の透明性を求める声にも応えた。このようなサービスをもう少し早期に実現していれば、Vodafoneブランドのメリットをビジネスユーザーに植え付けられたはずだが、Passportの提供は、他のオペレータがアライアンスで対抗し(2004年5月の記事参照)、格安を売りにするMVNOにも進出したあとのことだった。

 もう1つは進出する地域の選び方の問題だ。Vodafoneは、非GSM圏の日本と、GSMの対抗勢力であるCDMAが優勢の米国に進出した。日本市場については3Gで波に乗れず、撤退に踏み切ったが、米国ではCDMAオペレーターのVerizon Wirelessに44.4%出資しており、この意義を問う株主や関係者は多い。なお、Vodafoneは以前、GSMオペレーターの米AT&T Wirelessを獲得しようとして、米Cingularに敗れた経緯がある。

 それにもかかわらず、同社CEOのアルーン・サリーン氏は5月27日、「Verizon株を売却する予定はない」と表明している。この日サリーン氏は、引き続きOne Vodafoneを推し進める意向を示し、仏市場などまだ“赤”に塗り変わっていない地域への関心をのぞかせた。

 Vodafoneが7月24日に発表した会計年度第1四半期のKPIによると、この期の新規加入者は450万人、加入者増加率は10.6%となった。現在、加入者数合計は1億8680万人を数えるという。同社は通年の売上高の成長率を5〜6.5%とみている。

 Vodafoneのグローバル戦略と新興市場をみてきた第1回に続いて次回は、データ収益増を狙ったポータルサービス「Vodafone Live!」など、成熟市場における同社の課題を分析する。

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