インタビュー
» 2006年10月02日 23時50分 公開

2層構造で魅せる、ハイエンド&スタイリッシュケータイの作り方――「W43H」開発陣インタビュー開発者に聞く「W43H」(デザイン編)(1/2 ページ)

デザインケータイに当たり前のようにワンセグを搭載。そんなコンセプトで開発されたのが日立製のWIN端末「W43H」だ。同社の初代ワンセグケータイ「W41H」から、どのような流れでこの新しい方向になったのだろうか。

[青山祐介(聞き手:平賀洋一),ITmedia]
photophoto 「W43H」

 日立製作所製の初代ワンセグケータイ「W41H」は、日立製作所の液晶/プラズマテレビ「Wooo」をそのままケータイ化したようなデザインで、“日立のワンセグケータイ”であることをアピールしたモデルだった。2代目ワンセグケータイとして登場した「W43H」は、一転して外観だけではワンセグ機能が入っていることを意識させないデザインへと変化した。


 今回のインタビューでは、プロモーションを担当した日立製作所ユビキタスプラットフォームグループ製品開発事業部携帯電話本部営業部の寺本信哉氏と、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの戦略推進グループ商品企画チームの白澤聡氏、そしてデザインを担当した日立製作所デザイン本部ホームソリューションデザイン部の高田裕一郎氏に、主にデザインについて話を聞いた。いかにデザインを重視して開発を進めたかが、ひしひしと伝わってくる取材となった。

photo カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム 白澤聡氏
photo 日立製作所 デザイン本部 ホームソリューションデザイン部 高田裕一郎氏
photo 日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループ 製品開発事業部 携帯電話本部 営業部 寺本信哉氏

デザインコンセプトは「Energy Seed」

 「(前モデルの)W41Hは“ケータイにテレビがついた”のではなく“テレビにケータイがついた”というコンセプトで、充電台も含めてテレビのようなデザインに仕上げています。そのW41Hが好評だったため、ワンセグケータイをある程度訴求できたと思いました。そこで今回は、コンパクトで使いやすいケータイを目指しています。ケータイとして使いやすい形状になっていて、それに当然のこととしてワンセグがついている、というスタンスです」(高田氏)。

 ワンセグ機能を搭載したハイエンドモデルのW43Hは、さまざまな情報を得られる携帯を意味する“Energy Seed”というデザインコンセプトで開発された。auの新サービスがもたらす、数多くの情報を集めて凝縮し、美しいボディとともに使いこなすことで、ユーザーを新次世代へ導いてくれるような端末になって欲しいという思いが込められているという。そのコンセプトを表現するために“Roundness and edge”“Material like clothes”“Stylish detail keys”という3つのデザインキーワードが与えられた。

 “Roundness and edge”は、主に形状や造形のキーワードで、化粧品のボトルのような豊かで張りのある面や曲線、シャープなエッジ感をモチーフにしている。“Material like clothes”は、洋服や宝石、化粧品など身近に存在する美しいものをモチーフにするキーワード。3つのカラーバリエーションでは、メタリック/深い透明層/フロストガラスのようなさらさらした質感、という異なる3つの仕上げを提案し、それぞれにファッション性を感じさせる質感と色味を与えている。

photo 「W41H」と「W43H」

 「ミスティックバイオレットは、光によって色が変化するメタリックのボディに、ゴールドのライン、そしてブラウンのテンキーとフォントなど、すべてをエレガントにまとめています。メローホワイトはさらさらした質感で、まろやかさを美しく表現しました。フォントにゴールドの差し色をすることでさらに美しい表現にしています。そして官能的なセンシアルブルーは、コスメグッズのガラスの“たまり”感を表現しました。ブルーの上に、さらに赤味を持ったブルーを乗せていて、強い光が当たったときにパッと赤いラインが見えるんです。ブラックの部分にも細かなブルーの粒子をちりばめていて、光が当たると全体的に青い印象になります」(高田氏)

photophoto W43H(奥)とW41H(手前)のダイヤルキー

 そして、“Stylish detail keys”は、PCのキーボードのように使いやすく、上質な質感を持たせるというキーワード。ダイヤルキーにはなるべく大きなタイルキーを採用し、フォントも大きく見やすいものにした。さらに、キーの上下端に段差を付け、打ちやすい形状に仕上げている。

「ダブルインジェクションモールド」という新しい表現方法

 W43Hのデザインで最も注目したいのが、ディスプレイ側本体の一部に透明感を持たせた点だ。これを「ダブルインジェクションモールド」という、表側の透明層の部分と内部のパーツ部分を同時に成形する工法で実現した。

photophotophoto ダブルインジェクションモールドによる、特徴的な2層構造

 通常、W43Hのような2層構造を行う場合、外側の透明層と内部の不透明層の2ピース構造にすることが多い。しかし2ピース構造では、ケース全体に厚みが出てしまう。ダブルインジェクションモールドでは、2つの樹脂を同時に薄く流すことができるため、2層構造であっても1ピース成形と同じ厚みで作ることができる。さらにボディの角部分では透明層の肉厚を変化させ、表情のある形に仕上げている。また、ディスプレイ側はパネル表面と周囲のケースを一体成形し、ディスプレイ周りの画面のふちを無くしている。

photophotophoto 液晶側ボディは1ピースで造形している

 このダブルインジェクションモールド技術は昔からあるもので、W41Hにも採用されている。また、iPodの透明な部分もこの方法が採用されているという。しかし、W41Hの液晶側ボディは比較的厚く、iPodの場合もパーツの厚みは2〜3ミリ。W43Hでは、この部分が1〜1.1ミリという薄さで設計されており、この薄さをダブルインジェクションモールドで作るのはハードルが高かったという。

 問題はそれだけはない。一般的にプラスチックの金型成形は、ドロドロに溶かした熱い樹脂を型に流し込み、冷やして固める。この冷えて固まる際に、樹脂に収縮が起きるため、同時に流し込んだ2つの樹脂の間に透明な線が走ってしまう。この問題をクリアするのも技術的にとても難しかったという。特に今回は、2層目の上側にあたる、トップ層の厚みを微妙に変えており、そこに着色したりフロスト調に仕上げを施している。デザインのポイントとなるこの部分の成形と仕上げには、非常に苦労したという。

 「携帯電話は手にとって目の近くで見る製品。造形でも組み立てでも非常に高い精度が求められる。これだけのラインをきちんと出すまでが、非常に苦労した点です」(白澤氏)

 「W41Hから今回のW43Hへと、ダブルインジェクションモールドという新しい表現方法を得た。手段が増えたので、デザイン的にいろいろなことが提案できるようになった。携帯に対して、これまでになかった印象を持ってもらえると思います。あまり現実からかけ離れたものではなくて、どこかで見たような美しいプロダクト。でも、工業製品やケータイにはなかったデザインにしたかったのです」(高田氏)

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