IC CARD WORLD 2007が開幕した6日、FeliCaワークショップのパネルディスカッションで、フェリカネットワークスの丸子秀策氏が話したのが、海外でも使えるおサイフケータイ「インターナショナルおサイフケータイ」だ。
日本で非接触ICといえばFeliCaが主流だが、海外では蘭Philipsが開発する「Mifare(マイフェア)」を採用している例が多い。このため、日本のモバイルFeliCa(=おサイフケータイ)は、海外への展開が難しい、という事情があった。
フェリカネットワークスは主に携帯電話向けFeliCaのライセンス事業と、FeliCaサービスを行う事業者向けのプラットフォーム事業を行っており、携帯向けFeliCaチップの製造はソニーが行っている。
日本でも海外でも非接触ICを利用できる“インターナショナルおサイフケータイ”をどのように実現するのか? 具体的な取り組みの内容をソニーブースで聞いた。
IC CARD WORLDのソニーブースでは毎年、ソニーとPhilipsが開発した近距離無線通信規格「NFC」(Near Field Communication)のデモが行われている。NFCは2003年に国際標準規格として承認されており(2003年12月の記事参照)、翌2004年にはソニー、Nokia、Philipsの3社によって「NFC Forum」も設立されている(2004年3月の記事参照)。
NFCは、FeliCaとMifareの上位互換規格であり、かつ双方向通信が可能だ。NFCは自ら電波を発信するため、NFC端末はFeliCa/Mifare/NFC端末との間でデータの送受信ができる。
ソニーの考える「インターナショナルおサイフケータイ」は、2つ以上の非接触ICチップを搭載することで実現できる。NFCチップはFeliCaとMifareの上位互換ではあるが、NFCチップ上でFeliCa OSやMifare OSは動かない。そのため、無線通信機能をNFCチップが担当し、決済などセキュアな処理が必要になる機能は別のチップがFeliCa OSやMifare OS上で担当する仕組みだ。
FeliCaはこの“セキュアなチップ”に相当する。EdyやSuicaなど日本の決済サービスは、FeliCa OS上でやりとりできるように構築されているが、欧米ではここがFeliCaではなくMifareになる。NFCとMifareとFeliCaの3つの非接触ICチップを搭載した携帯を作れば、日本でも欧米でも使える“おサイフケータイ”ということになるのだ。
しかし実際には、3つの非接触ICを携帯に搭載するのはコスト・サイズの両面で難しい。そこでソニーではFeliCaとMifareを1チップ化した新しいセキュアなICチップを開発・製造するために、2006年11月に、NXPセミコンダクターズとの合弁会社を設立している(プレスリリース)。NXPセミコンダクターズは、Philipsの半導体部門が独立した半導体企業だ(2006年9月の記事参照)。
FeliCaとMifareの機能を併せ持つ新チップが開発されれば、NFCチップとの2チップ構成にすることによって、“インターナショナルおサイフケータイ”が実現できる。日本の端末が海外でもおサイフケータイとして利用できるようになるだけでなく、NokiaやMotorolaといった海外メーカーが、日本でおサイフケータイを展開する可能性も高くなると言えるだろう。
合弁会社の設立は、2007年上半期を予定している。
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