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» 2007年03月15日 13時45分 公開

目指すのは、携帯業界の“デル”なのか“インテル”なのか──KDDIの小野寺社長 (1/2)

総務省主導のモバイルビジネス研究会で、販売奨励金やSIMロックの是非を問う議論が繰り返される中、KDDIの小野寺社長が自社のスタンスを説明。“何をもって国際競争力とするか”の意思統一なしに議論を進めるのは危険だと指摘した。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo モバイルビジネスの今後と国際競争力について言及するKDDIの小野寺正会長兼社長

 「何をもって国際競争力とするのか。どこを目指すかのコンセンサスがとれていないと、政策が正反対の方向になる可能性がある」──。モバイルビジネス研究会で議論になっている携帯電話市場のビジネスモデルのあり方について、KDDIの小野寺正社長は定例会見の席上で、こう切り出した。

 モバイルビジネス研究会は、携帯電話市場の活性化や端末メーカーの国際競争力向上、利用者利益の向上などを見据えてモバイルビジネスのあり方を検討するための会合。総務省の主導で、識者やメーカー、キャリアを集めてさまざまな検討を重ねてきたが、立場や思惑の違いから議論は平行線をたどっている(記事1記事2参照)。

 冒頭の小野寺氏の発言は、研究会に提起された問題をいま一度整理し、目指す方向性を同じくした上で議論すべきという考えに基づくものだ。

 この発言の背景には、もはや無視できないほどの規模に成長した移動体関連産業の存在がある。通話料と通信料、移動体端末、コンテンツ、インフラなどの移動体市場の売上が11.6兆円であるのに対し、携帯が波及効果をもたらす業種全体の売上は26.8兆円に達しており、「(この約27兆円という数字は)2005年のGDPに対しておおよそ5%に相当する」(小野寺氏)ほどに成長。「携帯電話の産業構造は今や、われわれの通信料以外の部分が大きく、そこを無視することはできない」(同氏)など、今後のモバイルビジネスのあり方が、関連産業全体に大きな影響を与えかねないという事情がある。

Photo 移動体関連産業の市場規模

日本の携帯業界が目指すのは“インテル”なのか“デル”なのか

 コンセンサスの不一致が正反対の政策を生む事例として小野寺氏が挙げたのが、端末開発の国際競争力強化に向けたアプローチの違いだ。

 モバイルビジネス研究会では、販売奨励金とSIMロックが端末メーカーの国際競争力を阻害する要因だと指摘しているが、小野寺氏はここに安易に手を入れることが、国際競争力が十分にある部材やモジュール分野の競争力低下を招きかねないと懸念する。

 「通信キャリアが先端的な端末を導入し、販売奨励金で普及を加速させることで、部材メーカーが次々と新製品を開発でき、それが国際競争力の源になっている。(部材メーカーが)先端的な技術開発でシェアを維持・拡大する中、販売奨励金をなくしてわれわれの新サービス導入が遅れたら、誰がそれを入れるのか。入れなければ、後発メーカーが追いついてくるのは間違いない」(小野寺氏)。こうなると、部材メーカーの国際競争力をそぐ結果になるというわけだ。

PhotoPhoto 国際競争力強化は5つのカテゴリーに分けられると小野寺氏(左)。コンセンサスの不一致が正反対の政策を生む一例(右)

 小野寺氏はまた、現状はさまざまな部材を端末メーカーとキャリアが共同開発しながら新しい端末を生み出しているが、ある時期からは現行のPCと同様に、標準規格の部材を組み合わせれば開発できるビジネスモデルに変わる可能性が十分あると予測する。

 そんな時代になったときに、「“技術力はさほど高くないが、部材をうまく寄せ集めて作るのが得意”なPCメーカーのデルのようなモデルを目指すことと、インテルのようにチップセットなどのコアの部材をしっかり押さえ、国際標準になることで利益を得られるモデルを目指すことの、どちらが日本の産業にとっていいのかを真剣に考えるべき」(小野寺氏)と話す。

 「どちらも勝てるならそれに越したことはない。ただ、ビジネスモデルが変わっていく中では、端末のビジネスモデルも変わると考えている。こうした時の国際競争力は、何を考えるべきなのか。真剣に考えていかないと、日本の産業全体がおかしくなる可能性がある」(小野寺氏)

 この“携帯開発のPC化”は、“プラットフォームの共通化”という各キャリアの取り組みによって進み始めているという見方もできる。小野寺氏は、それがひいては国際競争力強化につながると見る。

 各キャリアは、ソフトウェアの高度化・複雑化が進む携帯電話の開発効率を上げ、競争力の強化につなげることを目的に、統合プラットフォームの開発を進めている(記事1記事2記事3参照)。この統合プラットフォームの導入により、端末メーカーは端末の差別化要素となるデザインやユーザーインタフェース、実装デバイスに注力でき、それが結果的に国際競争力の強化につながるというわけだ。

 「“部材を集めてくれば誰でも携帯電話を作れる”ようになれば、その上に載せるソフトや、顧客の要求に応じた端末をどう作るかという商品企画力、デザイン力がメーカー間の競争要因になってくる。こうなると、ハードウェア部分をきっちり押さえた日本のメーカーが、デバイスの分野でとても強くなる可能性がある」(小野寺氏)

もう1つのポイントは、標準化に向けたキャリアの協力

 小野寺氏が国際競争力を強化する上で、もう1つの重要なポイントとするのは、仕様の標準化に向けた国内キャリア同士の協力だ。同氏は、あるメーカーから聞いた話として次のようなエピソードを紹介した。「GSMにしろUMTSにしろ、欧州系の仕様の標準化の時にキャリアが言うのは、要求の仕様についてであり、自分たちの技術を使えとは一切言わない。例えば、“こういうことができる仕組みを作ってほしい”とだけ言う」

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