モバイルビジネスの今後のあり方について討議する「モバイルビジネス研究会」に、東日本旅客鉄道(JR東日本)の小縣方樹常務取締役がオブザーバとして登場。3月18日に始まったばかりのPASMOとSuicaの相互連携の概況や(2月20日の記事参照)、MVNOに対する考え方を説明した。
3月18日にPASMOとSuicaの相互乗り入れが開始したばかりとあって(3月18日の記事参照)、まずは「SuicaとPASMOは合わせて(カードが)60万枚売れた」と好調さをアピール。2月末時点で1911万枚(うちモバイルSuicaの利用者は約35万人)だったSuicaの発行枚数も1940万枚となり(2006年12月の記事参照)、モバイルSuicaの利用者も40万人に達したという。JR東日本では今後、Suica/PASMOの相互利用の開始を契機に3000万枚超のカードの発行を見込む。
Suica電子マネーを利用できる店舗は2月末時点で1万300店を数え(コンビニ約2200店、飲食約600店、ショッピングセンター約700店、駅ビル約4200店、その他約2600店)、PASMOとの相互運用開始で1300店が増加。1日当たりの取扱件数は41万件に達しているという。
現状ではカードユーザーの利用が圧倒的に多いSuicaだが、小縣氏はディスプレイで情報を確認でき、通信で各種情報やアプリをダウンロードできるモバイルSuicaに対する期待は大きいと話す。今後はモバイルを含めた乗車券のネット販売比率を高めたいとし、「ゆくゆくは駅で売る切符はゼロにしたい」と意気込んだ。そして、サービスの技術革新を推進する立場からも、モバイルサービスのさらなる活性化と、既存の枠にとらわれないモバイル端末の登場に強く期待すると述べた。
モバイルビジネス研究会の議題として挙がっているMVNOのあり方について小縣氏は、通信業界を運輸業界になぞらえる形で説明。通信キャリアを交通機関に、MVNOを旅行会社に例え、運輸業も電気通信事業も公共性が高いインフラ事業であり、顧客のニーズをとらえて観光事業を企画/アレンジして“旅”をクリエイトする旅行会社は、運輸業のMVNOと見なせるのではないかと指摘した。
運輸業にとって旅行会社は、旅に付加価値を加え、需要を喚起するための重要なパートナーであるとし、モバイルビジネスにおいてもMVNOの育成を加えることで、顧客のニーズをきめ細かく吸い上げ、全体のトラフィックを増やせる可能性があると説明。オープン化が産業全体の活性化とパイの拡大に寄与するという見方を示した。
小縣氏は、モバイルSuicaの次の発展の一例として「モバイルSuicaを使った新幹線予約・乗車サービス」への取り組みについて説明した。
携帯がチケットの予約端末として機能し、また切符にもなるというもので、モバイルSuicaで新幹線の指定席を予約すると、みどりの窓口に行く必要なくモバイルSuicaでそのまま改札の通過が可能になる。新幹線の車内でも、車掌が持つ携帯情報端末で座席と乗客が一致するかどうかを確認できるため、切符を見せる必要がない。「乗ったらすぐ、車内でお休みいただける」(小縣氏)など、シームレスな移動と快適な旅を提供できるとした。
小縣氏によると、このシステムは「来年の今頃には実現している」という。
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