私がPASMOを“買えない”理由(前編)

» 2007年04月10日 00時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 これまでの磁気交通乗車券「パスネット」に加え、バス共通乗車券の機能も兼ね備え、しかもJR東日本とのSuicaとも相互利用ができる……3月にPASMOがスタートするまで、記者はPASMO発売日に磁気定期券をPASMOに変更する気まんまんだった。

 しかし発売日が近づき、運用の詳細が分かるにつれて「定期券をPASMOに!」という意気込みはどんどんしぼんでいってしまった。改札に軽くタッチするだけで通れ、Suicaと相互利用できるPASMOは確かに便利なのだが、実は磁気定期券から変更すると、できなくなってしまうこともあるのだ。

 PASMOが発売されて数週間経ったが、“不便になること”を考えて、記者はいまだに定期券をPASMOに変えられずにいる。ここでは“PASMOに変えると不便になる”“PASMOになっても便利にならない”要素について、代表的な例を挙げていこう。

回数券が精算できない!

 Business Media 誠編集部は、東京メトロ有楽町・日比谷駅の真上にある。記者も東京メトロの定期券を使っており、発表会などで定期券の範囲外に行く場合には、回数券を利用している。

東京メトロの時差回数券

 東京メトロの回数券は乗る駅が定められておらず、1600円の回数券なら160円の運賃区間に、1900円の回数券なら190円の運賃区間に、2100円の回数券なら210円運賃区間に乗れる。自宅から取材先へ直行するような時には、途中(日比谷)までを定期券で払い、定期券の範囲外を回数券で精算して(=定期券ときっぷを2枚重ねて)出場する。逆に出先から自宅に直帰するような場合は、回数券で入場して日比谷・有楽町を通過し、自宅の最寄り駅は定期券+回数券で出るということも多い。

 PASMOとSuicaは「使うときは1枚で」が原則だ。PASMOとSuicaの2枚を同時に使ったり、PASMO/Suicaと磁気きっぷ(回数券やパスネットを含む)を同時に使ったりすることはできない※。つまり、上のような“2枚重ねて精算しながら出場”という使い方ができるのは磁気定期券ならでは。定期券をPASMOに変えると、これができなくなってしまう。

※4月11日追記:本文で挙げているのは、1事業者内でのケースです。もともと「Suica+磁気きっぷ/定期券」で通過できる乗り継ぎ駅の連絡改札の場合は、今まで通り「Suica/PASMO+磁気きっぷ/定期券」でも通過が可能です。詳しくは別記事を参照してください。

 東京メトロの回数券は割引率が高く、区間運賃×10倍の金額(160円区間なら1600円)で、通常の回数券なら11枚、時差回数券(平日10時〜16時と土日に利用可能)なら12枚、土・休日割引回数券なら14枚となっている。電車に乗る時間に合わせれば、かなりおトクに電車に乗れるだけに、“回数券+定期券”ができなくなるのは非常に不便だ。

 関西の私鉄で利用できるPiTaPaでは、1カ月の間に同じ区間に何度も乗ると、乗車回数に応じて割引が適用されるようになっている。後払いであることを生かした割引サービスだが、これに比べると、SuicaとPASMOは正規運賃のみで、複数回同じ区間を乗車した場合に回数券に相当する割引サービスがない(バスを除く)。プリペイド(前払い)だからPiTaPaと同じ方法での割引は難しいのかもしれないが、既存の回数券相当の割引が無理なら、せめて回数券との併用くらいはできてもいいのではないだろうか。

連絡定期券が買えないパターン

 何かと制限が多いのが、複数の交通事業者をまたがる連絡定期券の場合。一部の例外を除いて、原則として3線にまたがる定期券は1枚のPASMOにまとめることはできない。例えば、下北沢駅から京王井の頭線に乗って渋谷駅でJRに乗り換え、山手線で大崎駅まで行ってりんかい線に乗り換える、といったパターンでは、連絡定期券1枚にはできない。

 中には2線でも、1枚のPASMO/Suica定期券にまとめられないパターンがある。悪名高いのは、町田駅で乗り換えるケースだ。町田駅は小田急線とJR横浜線が通っており、神奈川県から町田乗り換えで新宿方面へ通勤・通学している人が大勢いる。このような場合、従来はJRの定期券と小田急線の定期券の2枚を使って通勤・通学していた。普通に考えれば、PASMOとSuicaの相互利用が始まり、定期券が1枚にできそうなものだが、町田駅乗り換えの場合はこれができないのだ。

 理由は、JR横浜線の町田駅がもともと横浜鉄道の「原町田駅」で、小田急電鉄の町田駅はもともと「新原町田駅」だったため。現在は両方とも改称して「町田駅」と呼ばれているが“もともとは別の駅だから連絡定期券を発売する理由がない”というのがその根拠になっている。JR東日本と小田急電鉄は連絡乗車の取り決めをしていないため、いまだに町田駅乗り換えのJR・小田急連絡定期券は発売されていないのだ。

 連絡きっぷや連絡定期券は、鉄道事業者同士が個別に連絡運輸協定を結んで特定の割引を行う。せっかくPASMOが導入されたのだから、これまで連絡運輸協定を結んでいなかったところも、これを機に連絡定期券を発売すればいいのに……と思わずにいられない。

 後編では、きっぷの話題を中心に“PASMOで不便になる”例を挙げていこう。

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