シャープは4月17日、モバイル機器向けに開発した新しいモバイルASV液晶を発表した。ワンセグ携帯など、映像を扱う機器に最適としており、2007年秋にはワンセグ携帯用にサンプル出荷を予定している。
新しいモバイルASV液晶は、画素の小型化により高精細な表示が可能なシステム液晶の技術と、液晶テレビAQUOSで培った高画質表示技術を融合させ、小型ながらも高画質を実現した。展示された試作機はQVGA表示に対応した2.2インチのパネル。2インチクラスのモバイル機器向け液晶としては業界最高の2000対1という高コントラストを実現したほか、視野角も上下左右全方向で176度と広く、写真に迫る美しさを実現する高精細な表示品質を持つ。
ちなみに従来のモバイルASV液晶のコントラスト比は500対1で、新型の約4分の1。コントラストの高さは従来製品と新製品を並べると一目瞭然で、新モバイルASV液晶の方が明らかに鮮やかで黒の締まりも良い。新モバイルASV液晶では、屋内外のどちらでもくっきり画面が見えるレベルの高コントラストを実現したという。
動画再生時の滑らかさに影響する応答速度は「白→黒」で8ミリ秒。こちらは従来のモバイルASV液晶では約25ミリ秒以下だったので、約3倍高速化した。これにより残像感のない動画再生が可能となっている。また視野角も160度から176度に広がり、縦横斜めのどの方向からでもさらによく見えるようになった。ちなみに画面は「真横からでもほぼ問題なく見えるが、測定機器の限界が176度だったので、スペックは176度とした」(モバイル液晶事業本部 要素技術開発センター 副所長 和田正一氏)
なおラインアップは順次拡大し、今後はワンセグ携帯だけでなく、デジタルカメラなどにも展開していきたい考えだ。サイズは10.4インチ以下を“中小型”と位置づけており、解像度はQVGA以外にもワイドQVGAやVGA、ワイドVGAなどへの展開も予定している。コストは従来のモバイルASV液晶の1.3倍程度に抑えたい考えで、半透過型、透過型を問わずこの技術を採用したパネルを製造する。「有機ELだと、おそらく2倍から3倍のコストがかかるが、新しいモバイルASV液晶では同等の画質を1.3倍程度のコストで実現したい」(モバイル液晶事業本部本部長、方志教和氏)
シャープがこのような液晶ディスプレイを開発したのは「これからの中小型液晶には、動画を美しく表示できる性能が求められているため」だと方志氏は話す。
「2005年にワンセグ対応端末が登場して以来、携帯電話は映像をデータを扱う機器として発展してきた。すでにDVB-HやMediaFLO、地上波DMBなど、携帯電話向けのデジタル放送が開始されている海外でも同様に、携帯電話にテレビ機能を取り込む動きが期待される。デジカメやデジタルビデオにも高画素化やハイビジョン化の流れがあり、ディスプレイの高画質化はますます加速する」(方志氏)
ディスプレイサーチによれば、2007年の中小型液晶の市場規模は、ワールドワイドで約12.6億台と予想されており、2005年から2010年までの年平均伸長率は20.9%という強い伸びが予測されている。中でも携帯電話向けは大きな割合を占める。
方志氏は新開発のモバイルASV液晶について「携帯、デジカメ、ビデオカメラ、モバイルテレビなど、さまざまなモバイルアプリケーションで活用可能で、これらの製品の進化に一層寄与できると思う。中小型液晶の技術革新により、モバイル機器の進化に貢献していきたい」と話した。
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