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» 2007年06月11日 08時40分 公開

MediaFLOの“今”と日本市場への展望──QUALCOMMオマール・ジャベード氏に聞く神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

「MediaFLO Conference 2007」開催に合わせて来日した米QUALCOMMのオマール・ジャベード氏に、MediaFLOの優位性やクリップキャストの可能性、端末への影響、今後の展望などを聞いた。

[神尾寿,ITmedia]

 6月8日、クアルコムジャパンが「MediaFLO Conference 2007」を開催した。携帯電話向け放送規格「MediaFLO」を用いたサービスは、米Verizon Wirelessの「V Cast Mobile TV」が今年3月にスタート。米QUALCOMMではMediaFLOサービスのグローバル展開に期待しており、その中でも日本は重要視されている市場の1つだ。

 今回は特別編として、MediaFLO Conference 2007に合わせて来日したQUALCOMM MediaFLOテクノロジ部門 ビジネスディベロプメント バイスプレジデントのオマール・ジャベード氏に単独インタビュー。MediaFLOの現在と、今後の展望について聞いた。

Photo 米QUALCOMM MediaFLOテクノロジ部門 ビジネスディベロプメント バイスプレジデントのオマール・ジャベード氏

商用化で見えた技術・ビジネス的な優位性

──2007年3月、Verizon Wirelessが初めてMediaFLOの商用サービスを開始しました。この方式を推進してきたQUALCOMMにとっても、この「商用サービス開始」の持つ意義は大きいのでしょうか。

ジャベード氏(以下敬称略)  MediaFLOはクアルコムが4年ほど前から、積極的に研究開発を行ってきました。Verizon Wirelessによる商用サービス開始は、1つの大きなマイルストーンであるという認識です。さらに、Verizon Wirelessに加えてAT&Tが年内に(北米で)MediaFLOサービスを開始することが決定しています。アメリカの第1位と第2位のキャリアがMediaFLOサービス提供することにより、短期的な潜在ユーザー数として1億2千万人ほどをカバーできるということになります。

 MediaFLOは、(短期間で)米国におけるモバイルマルチメディアの牽引役としての地位を確立できたのではないかと自負しています。

──MediaFLOは研究開発段階から、ほかのモバイル向け放送方式に対する技術的優位性が強く打ち出されていました。今回Verizon Wirelessで世界初の商用化がなされたわけですが、実際の「商用化」において改めて確認された技術的優位性やビジネス的な経済合理性のポイントはどういった点になるのでしょうか。

ジャベード 技術的優位性に関しては、我々が研究開発段階から想定していたとおりの結果が(商用化においても)表れています。これは米国での商用化、さらに欧州での実証実験でも改めて確認されたポイントですが、MediaFLOのリンクバジェットの大きさ、すなわち送信局あたりのエリアカバレッジ効率がよいという優位性が実感できました。

 これ(リンクバジェットの大きさ)はビジネス面での優位性にもなります。エリアカバレッジの効率が優れているということは、放送エリアの展開において投資効率がよいことを意味します。我々の試算では、その他のモバイル向け放送方式に比べても50%以下の送信局の数でサービスエリアの構築ができるとの結果が出ています。MediaFLOは、投資コストの面でも経済合理性が高いわけです。

──なるほど。リンクバジェットが優れているというお話ですが、例えば全米の主要居住地域をカバーする上で、送信局はおおよそ何局程度が必要になるのでしょうか。

ジャベード 北米の場合は送信局の出力がかなり強い50Kワットまで認められていますので、日本を含む他地域での展開と一概に同じとは言えないかもしれません。しかし、その上で、MediaFLOの基本的なサービス品質が提供できる、ということを大前提にお話ししますと、全米の1都市はおよそ送信局3局でカバーできると考えています。これにより屋外はもちろん、建物内や時速200〜250キロ程度の高速移動体での受信も可能になります。

 1つの例で述べますと、ラスベガスのエリア構築では、50Kワット局が1つと、小出力の小型局1つという2局体制で、建物内も含めたラスベガス全域をカバーしています。(屋内の)カジノでだって使えますよ(笑)

クリップキャストが持つ可能性

──MediaFLOの特徴的な機能として、蓄積型放送のクリップキャストがありますが、Verizon Wirelessではクリップキャスト放送がまだ行われていません。これは技術的な要因によって実現しなかったのでしょうか。それともビジネス的な要因で実現しなかったのでしょうか。

ジャベード (クリップキャストが商用化されなかったのは)ビジネス的な要因によるものです。MediaFLOの技術はすでに完成しており、それをMediaFLO USAを通じてVerizon Wirelessに提供していますが、彼ら(Verizon Wireless)はビジネス上の判断で、MediaFLOのサービスを当初リアルタイムストリーミングにフォーカスして展開すると決めました。しかし、VerizonではMediaFLOをFTTHのIPテレビサービスと統合するという議論をしていますので、将来的にどうなるかは現時点ではわかりません。あくまで(Verizon Wirelessの)ビジネス上の判断ということになります。

──クリップキャストの商用化において、著作権や著作隣接権の処理が(ストリーミングよりも)難しいというようなハードルはないのでしょうか。

ジャベード あまり権利処理上の問題はないでしょう。もちろん、国や地域によって(デジタルコンテンツの)権利処理に違いがあることは理解しています。しかし、著作権処理の部分がクリップキャストの商用化で大きなハードルになるとは考えていません。

 クリップキャスト(の商用化・普及)に課題があるとすれば、権利処理の部分よりも、端末のメモリ容量の部分の方が大きいですね。北米市場の携帯電話の平均的なスペックは、日本より2年遅れくらいですから、相対的に搭載されているメモリ容量が少ない。クリップキャストでコンテンツが次々とダウンロードされていくことを考えると、メモリ容量の少なさは商用化の課題になります。もし、日本でMediaFLOが商用化されれば、(日本市場は)端末のメモリ容量が多いですから、クリップキャスト機能の利用は難しくないでしょう。

──クリップキャストを一般ユーザーが楽しむ上で、端末側に必要なメモリ容量というのは、おおよそどの程度になるのでしょう。

ジャベード 基本的に必要な容量は、動画1分あたり1〜1.5Mbytes程度です。クリップキャストをどういったコンテンツサービスで使うかにもよるのですが、一般的な使い方ならば、端末側に60M〜80Mバイトの容量があれば十分でしょう。

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