「ちなみに、デザインチームでこれほどのこだわりがあったためか(笑)、このミラーパネルの調色にも大変な苦労がありました」(山本氏)
一般的に、素材に対して反射する光が多ければ多いほど、かつその透過した裏が黒いほど鏡調になりやすい(例えば、マジックミラーを想像していただくと分かりやすい)。P904iは黒基調から白基調まで、4色のカラーを用意する。黒基調のアスファルトは比較的容易だが、それ以外の明るい色を樹脂パネルとともに美しくミラー調に仕上げるのが困難だったという。
それでも正面から見るだけならまだいい。ミラー調のパネルは、斜めから見ると偏光して見た目の色が大きく変わる。場合によって汚く見えてしまうこともある。「あらゆる角度でもキレイに意図した色で見えないと……」ノンジャケスタイルでも完成したデザインに仕上げたいデザインチームは、斜めからの見た目にもこだわった。
「正面はもちろん、傾けたときでもその色差がほぼ出ないような調色を何日も試しました。何かパターンや公式のようなものがあるわけでもなく、ちょっとした配合や裏面のボディの色によって、まったく違うものになってしまうんですよね」(山本氏)
「このパネルの裏に貼る調色したフィルムも、ただ合わせて貼るだけではだめなのです。ごく薄い空気層が発色に影響してしまうので、完全に密着させないと微妙に色味が違ってしまいます。どう“密着”させるかは企業秘密ですが、色にも“ナノレベル”のこだわりを盛り込んだとご理解下さい(笑)。それくらい携帯の色味にこだわっているのはウチくらいなのではないのでしょうか」(古宮氏)
いやはや、携帯の色に“ナノレベル”とは恐れ入った。
一方、ミラーパネルの反対側には不在着信や未読メール、ICカード通信、Bluetoothの通信を通知する「ヒカリアイコン」が備わっている。ボディに通知アイコンが浮かび上がるような仕掛けは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「W51S」などにも採用されたが、大きく色のトーンが異なるボディそれぞれに、点灯時はくっきり視認可能で、かつ消灯時はボディにとけ込むように仕上げるのが困難な作業だったようだ。
「白系の素材だと裏にあるLEDの光が拡散しまい、アイコンがぼやけてしまうのです。そのため、プラチナとシャンパン、アスファルトとローズでそれぞれ少し異なる設計になっています」(山本氏)
背面パネルの裏に4つのLEDがあり、その上を薄く円形に加工して透過するアイコンの図柄印刷が施される。一見何もないように見えるところからぼわーんと光り、アイコンが浮かび上がってくる仕組みになっている。
明るめの色のパネルと明るく点灯するLED。プラチナとシャンパンは裏からLEDの照らした光が拡散してしまい、アイコンの図柄が思うように浮かび上がらなかった。そのため、濃い色のアスファルトとローズに採用する通常工程とは異なる、アイコンの印刷をパネル表面に施す工程を採用して解決した。
「透過して図柄を浮かび上がらせるくらいであればP903iのカスジャケなどでもやっていましたが、“アイコンとして出す、しかもこのサイズで”というのが困難でしたね」(山本氏)
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