音声サービス開始が大きなターニングポイント──イー・モバイル 阿部基成氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2007年06月28日 22時35分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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HSDPAの訴求力はいつまで続くか

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ITmedia 現在、イー・モバイルはHSDPAによる高速・完全定額のデータ通信サービスを他社に対する優位性にしています。しかし、その一方で、ドコモやソフトバンクモバイルもHSDPAのインフラや端末の整備を進めており、今年の年末商戦では「HSDPA対応」を訴求ポイントにしてくると予想されます。そのような競争環境下で、イー・モバイルの競争優位性は薄れてしまわないでしょうか。

阿部 確かに市場競争を考えると、(他キャリアのHSDPAシフトの影響は)難しい問題です。実際に使ってもらえば、我々のサービスは実効速度においてドコモやソフトバンクモバイルのHSDPAサービスに負けない。コストパフォーマンスでも負けないようにしていきます。

ITmedia 実効速度で負けないという話ですが、確かに契約者の母数からいえば今のイー・モバイルは有利です。しかし、今後、イー・モバイルの利用者が10万、20万、30万人と増えてきても、現在の実効速度が維持できるのでしょうか。

阿部 それ(実効速度)は落ちないようにやっていきますよ。基地局は、当初から単純な面エリア拡大だけでなく、ユーザーの増加を想定した密度で設置しています。例えば、サービス開始直後は確かに契約数の少なさが実効速度の速さに結びつきましたが、今では都内を見ればそれなりのユーザーがいますけれど、それでも実効速度はほとんど落ちていない。

 我々はADSLでブロードバンドの世界を経験していますから、基地局単位でトラフィックを管理して、実効速度を落とさないようにしようという意識は、他のキャリアよりあると思います。

ITmedia ユーザー数が増えたから実効速度が落ちるのはしかたない。そういう考えはイー・モバイルにはない、ということですね?

阿部 まったくありません。

音声サービスを新たな訴求力に

ITmedia 実効速度とコストパフォーマンス以外で、今後のイー・モバイルの魅力となる部分は何でしょうか。

阿部 やはり大きなポイントになるのは、来年3月の「音声サービス」ですね。ここにむけてエリア拡大をしていますし、ユーザー層を広げるターニングポイントにもなります。

ITmedia しかし「音声サービス」は訴求力になるのでしょうか。すでにソフトバンクモバイルやウィルコムが音声定額を行っています。特にソフトバンクモバイルは、自社内の音声定額だけでなく、「Wホワイト」を利用すれば他社向け通話料も安くなります。イー・モバイルが音声サービスで、定額や通話料の安さを打ち出しても、あまりインパクトがありません。

阿部 音声サービスについては、まだ詳細を話せる段階ではないのですが(苦笑) ただ、音声定額は市場環境がそれを求めてくるでしょうから、(ソフトバンクモバイルに)追随することになるでしょうね。

 まあ一歩引いてお話ししますと、今のイー・モバイルには音声サービスがないですから、「“ない”というマイナス」から脱却する意味はあります。さらにマイナスをプラスにする音声アプリケーションを、我々は考えています。まだお話しすることはできませんが。

ITmedia 音声サービスがイー・モバイルの競争力になる。そういう展開を考えている、と。

阿部 はい。単なる「音声サービス対応」以上のものを考えています。

イー・モバイルを多くの人に知ってもらいたい

ITmedia 最後に、今年イー・モバイルは新規参入を果たしたわけですが、今後の目標や展望についてお聞かせください。

阿部 我々はサービスを始めたばかりで、一般の携帯電話ユーザーの認知度はまだ低いと考えています。それをこの1年をかけて実績として延ばしていきたいですね。ここでは市場のイノベーターであるユーザーの皆さんと一緒にやっていきたい。

 普通の人が、イー・モバイルの名前を聞いたら「聞いたことがある、興味がある」というレベルまで(認知度を)アップさせたいと考えています。

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