第6回 KDDI 高橋誠氏──携帯の使い方を変えるGoogleとの連携石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」(2/2 ページ)

» 2007年08月10日 21時20分 公開
[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]
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Rev.Aはインフラとして活躍する

神尾 音楽に加えて、ぜひお聞きしておきたいことにCDMA2000 1x EV-DO Rev.A(以下Rev.A)の展開があります。今までKDDIは、いろいろなところからさまざまな技術を取り入れて、その技術を商品やサービスに結びつけて市場に投入するのがうまいなと感じていたんですが、Rev.Aの市場への結びつけが、まだ成功していないように見えます。これについてはいかがでしょう。

高橋 そうですね。Rev.A単体でサービスに直接結びつくものは、あまり出てこないかもしれないですね。Rev.Aは上りのスピードが速いので、そこは活用できます。今、トラフィックで一番苦しんでいるのは、CGM系のトラフィックです。auでいうと「EZ GREE」、このほか「mixi」や「モバゲータウン」。ああいうSNS系のトラフィックがすごく伸びてきていて、需要はすごくあるわけです。そのときに上り回線を使うトラフィックは当然必要なので、そこに強いインフラとして生きてくると思います

神尾 技術やインフラありきでサービスを出すというよりは、今生じ始めている問題というか、足りない部分を補うような形でRev.Aを導入していくというスタンスですか。

高橋 そうです。Rev.A自体はビット単価がすごく安くなるという事業者側の事情もありますので、当然、積極的に入れていきますよ。端末側も(米QUALCOMM製の)MSM7500チップセットを搭載したものをこの秋には何機種か発売して対応していきます、という感じですかね。

神尾 やはりRev.Aを最初に導入したときに打ち出したテレビ電話は爆発的な人気にはならなかったですね。

高橋 テレビ電話はダメですね。

石川 そもそもヒットは狙っていないですよね。

高橋 私は狙っていませんでしたね。

Googleは携帯の使い方とモバイル広告を変えた

Photo 神尾寿氏

神尾 あと、先ほどからちょこちょこと話が出てますが、私個人的には、2006年の出来事で一番興味をひかれたのはGoogleとの連携だったんです。あのあたりの現在の状況はいかがですか?

高橋 Googleの効果は抜群です。広告需要はおかげで右肩上がりに上がってきています。Googleはものすごい効果がありましたし、ユーザーの使い方も変わったと思いますね

神尾 あれは、確実に携帯の使い方を変えたな、と思っています。

高橋 変えたと思いますよ。あれこそ“通信と放送の連携”の一番簡単なモデルだと思っています。ただ、ナショナルクライアント(全国的に製品を展開している、名の知れた大手の広告主)がああいう検索エンジンに対応した携帯電話向けサイトを持っていないんですね。8割くらいの企業は持っていないんじゃないでしょうか。PC向けのWebサイトは持っていますけど、大企業でしっかりした携帯サイトを持っているところは2割くらいしかないと言われています。そのあたりは対応を待つ必要があります。

 でも企業は気づいてきているので、今後は(ナショナルクライアントの携帯サイトも)増えていくんじゃないでしょうか。一方で、携帯向けのサイトを立ち上げるのではなく、PCサイトビューアーでPC向けのページを見てもらえばいいんじゃないかという議論もありますが。

神尾 個人的には、PCサイトビューアーはまだちゃんと使うには辛いと思います。だから、Googleで検索して、その結果を“見るためだけ”にPCサイトビューアーが使える、という流れに感心しました。

高橋 確かにPCサイトビューアー単独で使うのは辛いでしょう。だからやっぱり携帯でのインターネットを作るべきなんです。しっかり作る必要があると考えるようになってくると思いますよ。今、ほとんどのユーザーは、テレビを見ながら携帯で検索エンジンにアクセスしていますからね。

神尾 テレビのCMで検索キーワード入れるように促すものがいっぱい出ていますね。

高橋 そうです。企業も広告代理店も、視聴者はあれをPCでやると思っていたんですよ。でも、そろそろ携帯電話だということに気づいて切り替えに入っていますので、ここ1年くらいで変わるんじゃないかと思いますよ

石川 企業が検索エンジンに引っかかるサイトを作るうえで、欠かせないポイントというのは何かありますか?

高橋 携帯向けのサイトでも、やっぱりSEO(検索エンジン対策)はやらなくてはいけません。KDDIでは、関連会社のメディーバやユビキタス・コアにSEOコンサルティングチームがあります。今後はいろいろなコンテンツプロバイダとそういうこともやっていこうと思っています。携帯のSEOってこれからですよね。

神尾 そういう意味では、メディーバはまだまだ伸びる余地は大きいですか?

高橋 ありますね。メディーバはWeb 1.0で成功しちゃったので、ちょっと脱皮させないといけないと思っています。今回、社長も塚田俊文に変わりました。

神尾 モバイル広告が最近また注目されていますが、たぶん、今までの注目のされ方とは違うと思うんです。この市場も、2.0化というと陳腐な表現ですけれど、まだまだ変わる余地はありますか?

高橋 これから変わるというよりも、去年Googleの検索エンジンを導入してガラっと変わったと思いますよ。たぶん、どの世界よりも一番早くWeb 2.0を迎えたんじゃないでしょうか。PCは、広告に関しては1.0の世界でみんな逡巡しているじゃないですか。テレビの世界はもっと変わるのを嫌がりますよね。でも携帯の世界は、そのあたりが劇的に変わりました。KDDIでいうと、バナー広告の売り上げが100だったとしたら、その上にGoogleの広告売り上げが100積まれた感じですね。

神尾 Googleとの連携は、この1年で検索の部分で効果が出てきていますし、携帯の使い方を変えてくれたと思うんですが、やっぱりそろそろ機能アップに期待したいと思います。Gmailはもう携帯で見られますが、GoogleカレンダーなどPC向けのサービスがすごく増えて、SaaS型のモデルになってきていて、しかもローカルでもキャッシュされたりと、モバイルでも使いやすい要素がそろってきています。端末をシンクライアント的に使えるという点では、本家Googleが携帯サービス向きになってきていると思いますが、これをもっとauが取り込んでいくというシナリオは考えられませんか?

(編集部注:インタビューは7月30日の「au one」発表前に行われた)

高橋 Googleがやっている内容と、例えば「au My Page」のような、KDDIがもともと作っている内容がバッティングしているところがあって、そのあたりの調整だと思いますね。でも、Google関連の次の取り組みというのは、そろそろ出していかなくてはいけないと思います。

神尾 携帯メールもWebベースでやって、ローカルはキャッシュでいいじゃないかという気がすごくするんですが。

高橋 うーん、なんとも言えません(笑)。私もそう思います、今は。

神尾 昔のEZwebは、完全なWebベースでしたよね。

高橋 おっしゃるとおりです。

神尾 でも、あのときはインフラがまだ追いついていませんでした。

石川 早すぎましたね。

高橋 早すぎたと思います。今はWebメールの方が絶対にセキュリティ面でも有利ですし、便利だと思いますね。そのあたりの取り組みも……しゃべれないんですよ、今は(笑)。一生懸命考えて出さなくてはならないものをいっぱい持っていますので。これからまたバサバサと出していきますよ。

石川 今度はいつ頃、お話を伺いに来たらいいですか?

高橋 そうですね……秋でしょうか。2007年秋冬モデルではさらにがんばりますから。でも今回の夏モデルも、商品群としてはいっぱいそろえたと思いますよ。

石川 出しすぎですよ。

高橋 一生懸命がんばって、いっぱいためておいたんです。

(第7回へ続く)

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