連載
» 2007年11月20日 19時59分 公開

小牟田啓博のD-room:第14回 続・ケータイデザイン潮流 2007秋冬モデル(ソフトバンク、ドコモ編)

数々の端末を世に送り出してきたデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が、日常で感じたこと、経験したことを書き綴る「小牟田啓博のD-room」。前回のau(KDDI)に引き続き、ソフトバンクモバイル、NTTドコモが発表した冬モデル、新サービスを探る。

[小牟田啓博,ITmedia]

 皆さんこんにちは。前回は「ケータイデザイン潮流」と題して、auの新端末をテーマにしました。

 その後、ソフトバンクモバイルNTTドコモから続々と新端末、新サービスが発表されたので、今回はソフトバンクとドコモの新モデルの中から、デザイン的に気になるいくつかのモデルに触れてみたいと思います。

デザインにしっかり取り組んでいると感じた注目の3機種

 各社から発表された冬モデルは、かつてないほどの機種が登場したことは、皆さんもご周知のとおりです。

 結論から言ってしまえば、良くいうと何を選んだらよいか迷ってしまう。悪くいえばどれも似たり寄ったりで欲しいものを決められない、そんな印象でした。

 両社とも、今回は発表された端末が特別に多いと思いませんか?

 各端末メーカーからは、自社のブランド名を付けた端末の投入がマックスになってきた感を受けますし、キャラクターケータイも多数出てくるなど市場が何でもアリな感じで、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってしまっていますよね。

 それならば! というわけで、数多くの端末をマジメにコメントしても面白くないので、今回は素の小牟田で行かせていただこうかと思います。早速本題に入りましょう。

 今回発表された冬モデルで、際立って目立つわけではないけども、案外、ダークホース的にしっかりしたデザインと作り込みをしているな、と注目したモデルが3機種ありました。

 1つ目がドコモの「D705iμ」です。そして2つ目がソフトバンクの“THE PREMIUM”こと「820SH」と「821SH」の2機種です。

 どちらの端末も実機をじっくり手にとって確認したわけではありませんが、その極めて真面目に真正面から勝負してきているという部分が、ありとあらゆる企画の端末があふれている中において、僕には非常に新鮮に見えました。

Photo 三菱電機製のFOMA端末「D705iμ」

 まずはD705iμです。auの「INFOBAR」や「talby」「MEDIA SKIN」、ドコモの「premini」など、ストレートタイプの市場では、各社から登場してきた端末は特別な意図を持った企画モデルが多かったのに対して、このD705iμでは、ただでさえ主流の市場とは言いづらいストレートタイプの中で、真っ向からレギュラーモデルとして登場したという点が評価できるでしょう。

 さらに、シンプルスリムでフラットなデザインを実現するために、技術陣のこだわりと苦労は並々ならぬものがあるのだろうと、手に取るように見えてきます。

 薄型で一番苦労するのが、キーの操作感とデザインの完成度とのバランスです。このあたりは、ぜひ実機で確認してみたいところですね。

 クチックチッという“しっかりしたキーのメイク感”があれば、この端末の完成度は“凄い!”となるし、反対にメイク感が乏しければ“ふ〜ん”になってしまうのかなぁと思います。

 純粋にプロダクトデザインのオリジナリティやクオリティといった意味では、どうしても前回取り上げた「INFOBAR2」に軍配が上がってしまうんですけどね。

 製品としては海外でも使える国際ローミングサービス(3G/GSM)「WORLD WING」対応なので、アクティブな人には非常にいいかもしれませんね。

 海外に薄くてデザインのいいケータイを持ち出すのって、注目度も高いから結構快感なんですよ。「ヘイ! キミのモバイルフォンのデザインは素晴らしいけど、どこに行けば売ってるんだい?」みたいなことに遭遇できるからです。

 僕は今までに、何度もそうやって声を掛けられた経験があります。

薄さをうたう折りたたみタイプの究極形――「820SH」「821SH」

Photo 左が「THE PREMIUM 820SH」右が「THE PREMIUM 821SH」

 続いて820SH、821SHです。こちらは折りたたみタイプという、競合する端末がひしめき合う市場の中で、折りたたみにおける1つの模範解答を突き詰めることに、真正面から取り組んだことが見て取れます。

 この薄さのなかに、ワンセグをちゃんと積んでいるのだからエライですよね。ワンセグを手軽にコンパクトに楽しみたいという人には非常にいい端末だと思います。

 この端末で特筆しておきたいのは、“薄さ”をうたうモデルはたいていどこかにスタイリングの破綻が出てくるものなのに、この端末にはそれがほとんどないことです。

 たとえば、本体をギリギリまで薄くするなかで、カメラ部分だけが突起してしまうとか、アンテナ部分がボッコリ飛び出してしまうとか、コネクタ部分がスリムなフォルムの中に納まりきらなくて、どうしても突起ができてしまうとか。

 あるいは薄さを重視するあまり、四角張った握り手が違和感のある形状になってしまったり、などなど。

 そんな薄さを代償にしたウィークポイントも、今まではユーザー側が本体サイズそのものが薄いという部分で目をつぶってきたと思うんですよ。

 このモデルがエライのは、突起もなくスッキリとしたデザインにまとめ上げていて、それぞれのパーティングライン(部品分割線)がシンプルに整理されているところなのです。

 世界最薄! 的な寸法数値のみを開発目標に掲げた端末って、案外こういった不格好な部分を割り切ってしまうケースが多く見られます。でも、このモデルは隅々まできれいにまとまっていて満足度がとても高そうなデザインがいい。

 極論すれば、折りたたみタイプの究極形とも言えるかもしれません。もちろん、日本のエンジニアリングはほぼ永遠に進歩し続けるので“究極”という言葉を安易に使いたくはありませんが、このモデルのミニマルなたたずまいは、“これでいいんだ!”と強く思わせてくれる納得感があると思います。

 ただね、僕としてはこのデザインで国際ローミング対応であってほしかったというのが、数少ない改善要望点なのです。

そのほか“小牟田的”に気になった端末

 そのほか、デザイン家電ブランドの「amadana」とコラボしたドコモの端末「N705i」も、「あぁ、amadanaだな」という納得の感じに仕上がっているみたいですし、ISHIURA、ICHIFURU、KOMIYAMA、3人のアートディレクターからなるデザインユニット 「TGB design.」とコラボした「P705iμ」のインタフェースデザインは、「さすがTGBだな!」と思わせてくれるし……。

 しっかり見れば、他メーカーの端末もとてもよく仕上がっていることは間違いないと思います。

 初めにお話ししたように、今回は1つ1つの端末を取り上げるのをあえてやめました。皆さん自身が、実際に店頭に足を運んで手にとって確めてみてください。

Photo “シャア専用ケータイ”「913SH G TYPE-CHAR」

 ただ、ガンダムのシャア専用ケータイ「913SH G TYPE-CHAR」について面白いことがあったので触れておきたいと思います。

 先日テレビを見ていたら、新宿歌舞伎町でホストクラブの社長をやっている頼朝さんが出ていました。

 この頼朝社長は昔からガンダムファンらしく、彼は眼を武器にホストで張ってきた人ということですけど、913SH G TYPE-CHARは充電台がシャア専用ザクヘッドになっていて、端末本体を充電台にセットするとザクの眼が光るようにデザインされている。これを頼朝社長が自身の個性的な目線をカメラに送りながらお勧めていた……というのが、僕にはめちゃめちゃ面白かったのでちょっとご紹介しました。

ケータイのGUIを着せ替えるというサービスに注目

 最後になりますが、ケータイ本体ではなく今回発表された新サービスで、期待したいと思ったものがあったのでご紹介したいと思います。ドコモの「きせかえツール」というのがそれです。

 このきせかえツールは、ケータイのGUI(グラフィックユーザーインタフェース)を着せ替える、というもの。メニューや待受画面などをカスタマイズできる「きせかえツール」は、着せ替え可能な範囲を拡大して、全メニューの第2階層までカスタマイズ可能になりました。

 端末メーカーがそれぞれ提供しているものと違って、ドコモがキャリアとして展開しているという部分がいい意味でちょっと気になっています。

 それはブランドという観点からすると、通信キャリアが自社ブランドの顔や取り組みを表現できる手段となり得るわけで、取り組みにポリシーがあって、提供するデザインのクオリティに自信がなければなかなかできないと思うのです。

 これに関しては、単にキャラクターがケータイに入ってくるだけでなく、あらゆる方向性の質の高いデザインが用意されていてほしいわけです。ケータイ本体を長く使ってもらう施策を打ち出している中では、ユーザー側に端末本体と付き合うことを飽きさせない方法として、インタフェースデザインにもっともっと取り組んでいくことが、サービスの充実の一環として今後は非常に重要になってくるだろうと思います。

 デザインが発揮する領域って、実はこういうところであってほしいなぁと、常々思っていたので、ちょっと期待していきたいところです。

 いかがだったでしょうか? 今回はわりと素の小牟田でお送りしてきました。

 ケータイを取り巻く環境は一進一退を繰り返しながら日々変化しています。今後も引き続き、ケータイのプロダクトやサービスなどに注目していきたいと思っています。

PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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