連載
» 2007年10月19日 14時37分 公開

小牟田啓博のD-room:第13回 ケータイデザイン潮流 2007秋冬モデル(au編)

数々の端末を世に送り出してきたデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が、日常で感じたこと、経験したことを書き綴る「小牟田啓博のD-room」。au design project端末の第7弾「INFOBAR 2」や、auの秋冬モデルについてデザインの完成度を探った。

[小牟田啓博,ITmedia]

 皆さんこんにちは。小牟田です。

 涼しさが日増しに強く実感できる今日このごろ。例年、この季節になると、ケータイ各社から続々と新端末や新サービスが発表されます。

 先日、KDDI(au)から「INFOBAR」の後継機として、「INFOBAR 2」がお目見えしましたね。auからは続いて、秋冬モデルの新端末と新サービスが発表されました。

 そこで今回は「ケータイデザイン潮流 2007秋冬モデル(au編)」と題して、au端末をデザインの観点から探ってみることにしましょう。

あれから4年の歳月を経て誕生した「INFOBAR 2」に触れる

 早速、INFOBAR 2の魅力について触れてみたいと思いますが、その前に、ちょっと初代INFOBARについてお話しておく必要がありますね。

 この初代INFOBARは03年秋、ちょうど今から4年ほど前に鮮烈なデビューを飾りました。瞬く間に人気を博して、国内のケータイ業界のみならず国内のデザインやプロダクトデザインの業界に大きなインパクトを与た端末です。

 さらに海外にまで飛び火して、各国のデザイン賞も受賞。最終的にはニューヨーク近代美術館のコレクションにも選定されるなど、ケータイデザイン史上最大級のインパクトをもたらしたモデルでした。

 今回、INFOBARの後を受け継ぐ形で登場したのが、INFOBAR 2です。デザインにこだわりのある人にとって、またケータイ好きの人たちにとっては、まさに待望のトピックではなかったでしょうか。

 このINFOBAR 2は、1年ほど前にauからコンセプトデザインが発表されており、初代と同じ深澤直人さんが手がけています。このコンセプトモデルをそのまま完成させたかたちで、INFOBAR 2の製品発表となりました。

 実機の発売まではもう少し時間がかかりますが、10月2日から千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2007」の会場で実機を触る機会があり、その完成度を確認してきました。

 まず先代が3色のカラーバリエーション展開だったのに対し、今回は「SILVER」「MIDORI」「NISHIKIDGOI」「WARM GRAY」といった4色のカラバリ展開です。先代ではNISHIKIGOIの赤いカラーが目を引いていたのに対して、今回はMIDORIが非常に目を引きます。

 このINFOBAR 2だけでなく、いまやソフトバンクの「PANTONEケータイ 812SH」に象徴されるように、豊富なカラーバリエーションの中から自分好みのカラーをチョイスするという味わいには、鮮度を感じなくなってきました。と、昨今の自分を反省したりして。

 単純な高級感やインパクトを求める傾向の強い今のケータイデザイン環境においては、今回のINFOBAR 2のMIDORIが、ちょっとざらっとしたマットな質感が形状と良く合っていて、握ったときの感触を大切にしているという感じが伝わってきます。

パーツ1つ1つが四角いからボディーも四角くなる!?

 一方、形状について触れてみると、INFOBAR 2を“溶けかけた飴をイメージした”とデザイナーの深澤さん自身が表現するように、このフォルムは四角いハードな形状をベースとして、ヒトがモノを使い込んでいくうちにその年月が刻む自然なスタイルを表現しています。ですから、手で握ってみると実に馴染みがよくフィットします。

 少し話が逸れますが、最近のケータイデザインの傾向として、過剰な薄型化、コンパクト化の波が押し寄せていて、一見シンプルだけどもオリジナリティが薄く、一見派手で高級感があるようだが似たようなデザインに見えてしまう、そんな気分で冷静に見ているユーザーがとても多いと思います。

 今この連載を読んでいるあなたも、同じような感覚を抱いていらっしゃるかもしれません。基本的に電子機器の中身はバッテリーにしても液晶ディスプレイにしてもその構成要素が四角ので、それをぎりぎりの実装設計を重ねていくと四角いモノができ上がるわけです。

 話を戻しましょう。そんな中において、INFOBAR 2は今のデザインの傾向に警鐘を鳴らすかのように、角の取れた丸さを帯びたデザインになっています。ここには、デザインを構成する大きな要素であるフォルム表現の中に、そのメッセージが込められているのではないかと感じます。

 実際にこのフォルムを完成させるにあたっては、開発技術陣の並々ならぬ努力と苦労が想像できます。それは、先ほどお話ししたように、内容物であるパーツ1つ1つが基本的に四角いものだからです。

 にもかかわらず外観フォルムを丸くするわけですから、中身の構成は徹底的にコンパクトに設計する必要があります。このあたりに関しては、初代INFOBARの開発に携わった僕としては、製造元の鳥取三洋電機のエンジニアの方々が変わらず素晴らしいモノ作りをすることに関心させられました。

 このINFOBAR 2が発売され、ユーザーの方々にどのように受け入れられるのか、僕自身も楽しみに様子をうかがっていきたいと思っています。

薄型化、小型化が優先されていたように感じた秋冬モデル

 このほかau秋冬モデルのラインアップはどうでしょう。

 以前にもこの連載で触れてきましたが、各メーカーが独自に持つ家電ブランドの冠を付けた端末が今回も登場しています。

 ワイドQVGA(240×400ピクセル)表示対応の2.8インチ有機ELディスプレイを採用した日立製の「Woooケータイ W53H」がそれに当ります。アンテナ内蔵のワンセグ端末は、「ユーロパープル」と呼ぶマジョーラカラーを採用したボディカラーが新しさを感じさせてくれます。

 家庭用大画面テレビではこういったカラーリングはためらわれるものなのですが、そこはケータイならではの色合いではないかと思います。

 また「W55T」は、最薄部が10ミリを切る極薄ケータイを実現しています。機能をギリギリまで削ってシンプルに作り上げている東芝の開発チームの努力の結晶です。実機の発売が楽しみな端末の1つです。

 秋冬モデルを全般的に見てみると、薄型化、小型化が優先されたモデルが多く、四角くコンパクトなフォルムが目立ちます。単純な四角に押し込むことのできなかった部分だけが突起しているデザインは、それぞれに頑張って欲しい次への課題なのかなといった印象を強く受けました。

 しかし一歩引いてみると、似通ったデザインに見えてしまい、オリジナリティのあるデザインの端末がもっともっと出てきていいという気持ちになります。

 それはデザインや形状といった面からだけではありません。薄くせんがために採用が目立つシートキーも、その操作性が多少ならずとも犠牲になっているという点では、多くのユーザーにとって今後改善を強く望みたいポイントの1つだろうと思うのです。


 技術とデザインが、日々試行錯誤の上で一進一退を繰り返して進化してきたケータイの市場で、今はデザインといった意味では少なからず停滞の時期なのかもしれません。ですが、常に技術とデザインが面白いモノを提供し文化を創ってきているわけで、そういった意味でも今後のモデルに期待したいと思います。

 今回はINFOBAR 2を中心に、ちょっとだけ辛口の内容なってしまいましたが、NTTドコモやソフトバンクモバイルからも秋冬モデルの発表があると思います。

 次回はそのあたりについて、デザインの傾向をコメントしてみたいと考えています。

PROFILE 小牟田啓博(こむたよしひろ)

1991年カシオ計算機デザインセンター入社。2001年KDDIに移籍し、「au design project」を立ち上げ、デザインディレクションを通じて同社の携帯電話事業に貢献。2006年幅広い領域に対するデザイン・ブランドコンサルティングの実現を目指してKom&Co.を設立。日々の出来事をつづったブログ小牟田啓博の「日々是好日」も公開中。国立京都工芸繊維大学特任准教授。


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