KDDIと京セラは3月28日、2006年6月に発売した携帯電話端末「W42K」のバッテリー不具合が原因となって破裂・損傷する事故が13件発生したと発表した。KDDIは対象機種約21万4000台のバッテリーを緊急回収する。原因究明から発表までの2週間に2件の事故が新たに発生し、対応の遅れぶりが目立った。
一連の事故は、W42Kに採用されているNECトーキン製のバッテリー部品(京セラが組み立て)の不具合が原因。バッテリーに損傷を与えた状態で充電・放電の繰り返すと、バッテリー内のセパレータ(絶縁シート)の機能が低下してショートし、バッテリー本体が発熱や膨張、発煙、破裂する可能性がある。
対象となるバッテリーの製造番号は、KY-YEA、KY-YFA、KY-YGA、KY-YHA、KY-YIA、KY-YJA、KY-YKA、KY-XDA、KY-XEA、KY-XFA、KY-XGA、KY-XIA、KY-XLA、KY-WAAの14種類。3月26日現在で稼働しているW42Kは21万4349台で、このうち約18万台が対象のバッテリーを搭載しているとみられる。
KDDIは、すべてのW42Kユーザーへ3月29日から書面で通知するとともに、交換用のバッテリーを送付する。なお、旧バッテリーを返信用封筒でKDDIに返却するよう求めることにしている。
バッテリーが原因とみられる事故は、2007年10月〜2008年3月までに13件発生した。このうち、2007年11月には北海道で男性が軽症を負ったほか、今年1月には青森県の女性が左肩に全治1週間のやけどを負い、3月にも宮城県の男性が右脚太ももに軽度のやけどを負った。
KDDIの井上正廣常務によれば、2007年10月〜12月で各1件ずつの事故報告があり、バッテリーの損傷具合などからユーザーの不注意が原因だと判断していた。だが、今年1月に3件の事故が発生し、事態を重くみたKDDIでは京セラに本格的な原因究明を依頼した。
京セラとNECトーキンが再調査をした結果、バッテリーの過熱を防ぐ「防爆弁」と呼ばれる部分が十分に機能しないことが判明した。対象バッテリーでは充電時に内部が摂氏500度にもなるが、この防爆弁が正しく働かないことで破損が起きるという。
この原因は3月14日に判明したが、3月17日には充電中の電話が破裂する事故が発生し、18日には宮城県の男性が負傷する事故が起きた。京セラの山本康行執行役員によれば、対象バッテリーの稼働状況の把握やKDDIとのユーザー対応などの準備に時間がかかり、「迅速な対応がとれなかった」として謝罪した。
W42Kでは2種類のバッテリー部品が採用されたといい、KDDIは発売直後の端末ではこの問題が発生しないとしている。当初のバッテリー部品は、量産の遅れを理由にW42Kの仕様よりも充電容量が少ないものが採用された。7月ごろから販売された端末には対象のバッテリー部品が採用されているという。
山本氏は、「出荷前の調査や資料に問題がないことを確認しており、対象部品についてもNECトーキンの資料に問題がないことを確認していた」と話した。また、井上氏は「品質検査は原則としてメーカーに委ねており、各社を信頼している」と述べた。
京セラはNECトーキン製部品の採用を当面控えるとともに、同社に対して損害賠償を請求する考え。「原因はNECトーキンの部品であることがほぼ判明しており、細部を協議している」(山本氏)。また、KDDIは回収に伴う経費や分担は今後協議するとしている。
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