ケータイにはできない未来を切り開く――“もう1つの未来”を目指すウィルコム

» 2008年05月26日 22時17分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 夏モデル発表会の冒頭、D4の発売延期について謝罪したウィルコムの喜久川政樹社長。「(お詫びのしるしに)頭を丸めたいところだが、(もう丸めているので)頭を下げるしかない」(同)。不満が出る状態で出荷するより、満足度が高く“すばらしい”といってもらえるものを作りたいいい、開発に全力を尽くすとした

 “もう1つの未来”――。これが、次世代PHSの導入を2009年に控えたウィルコムの今後のキーワードだ。

 この言葉が意味するのは、垂直統合型のビジネスモデルを展開する携帯キャリアとは一線を画した、オープンなビジネスモデルを今後も積極的に推進するというウィルコムの強い決意。ウィルコムの喜久川政樹社長は日本固有のビジネスモデルを、特殊な進化を遂げた“ガラパゴス諸島”に例え、「ウィルコムが目指すのは“ガラパゴスではない”ことをはっきりさせ、これからの事業を進める」と宣言した。

 ウィルコムが目指すのは、オープンなインフラとオープンなデバイスによる“新たな領域”の開拓。サービスを利用するユーザーが、ウィルコムのデバイスやインフラであることを意識することなく無線ネットワークを使うような、いわばネットサービスの“裏方”的な事業や、固定網の代わりとして使える「ワイヤレスブロードバンド」の領域を強化する考えだ。

 裏方的な領域の一例として挙げたのは、基地局に設置した定点カメラと車載システムを連携させ、渋滞情報などを提供するサービス。すでに30社を超える協賛を得ているといい、ウィルコムは、16万局というマイクロセルを生かしたサービス実現に向けて研究会を立ち上げる予定だ。「車に乗っていると(渋滞情報の)映像をキャッチするので、カメラで渋滞情報が分かる。次世代PHSの基地局を設置するときが(カメラ設置の)チャンス」

 そして喜久川氏は、“もう1つの未来”を実現する次世代PHSの名称を「WILLCOM CORE」(ウィルコム コア)と命名したことを発表。導入のロードマップについては、来春に東京の一部の都市でスタートし、来秋には東名阪と政令指定都市での展開を目指すとした。

Photo 従来の「モバイルブロードバンド」に加え、固定網の代替として使える「ワイヤレスブロードバンド」、オープンなビジネスモデルを生かした裏方的なワイヤレスネットワーク利用を促進する「新たな領域」を事業の柱とする(左)。CORE(次世代PHS)は、上下100Mbps以上の通信速度を目指し、新幹線なみの速さの環境下でも利用できるという(右)

夏モデルは“生活密着型端末”と、使いやすくなった“スマートフォン”

 ウィルコムの夏モデルは、WILLCOM CORE導入までの間をつなぐ、重要な位置づけの端末となる。この日、新たに登場した2つのモデルは、同社が市場を開拓した「スマートフォン」と、他キャリアに先駆けて導入した網内音声定額の利用を促進する「生活密着型」の、2つのカテゴリーの製品。いずれも、ターゲットユーザーの利用シーンを考えた、ユニークな端末だ。

 “利用者の裾野を広げる”スマートフォンとして登場したのは、一連のW-ZERO3シリーズの後継となる「WILLCOM 03」。03という名前は、“集大成として完成系に近づいた”ことと、新たに商品設計を“0から見直した”ことを意味しており、「何でもできるが使いこなせない」というイメージがあるスマートフォンの世界に、より多くのユーザーを引き寄せる工夫を盛り込んだという。

 同社のスマートフォンのは、「満足している」が18.1%、「どちらかというと満足している」が50.2%と満足度が高いが、一方で「バッテリーがすぐきれる」「操作性が悪い」「一般の携帯電話より重い」「一般の携帯電話より大きい」「ワンセグがない」などの不満点も挙がっている。WILLCOM 03は、こうした不満点を解消したと喜久川氏は胸を張る。

 操作性の面では、電話をかける際の操作性が高まったのがポイントだ。ディスプレイ下部に表示されるタッチパネル方式の十字キーとソフトキーは、発話キーを押すとテンキーの表示に切り替わる「2モードイルミキー」を採用。また、使いにくいと言われていた電話帳については新たなソフトを搭載し、一般的な携帯電話のような使い勝手を実現した。

 ウィルコムメールに加え、ISPのメールやWebメールを利用できるメール機能は、設定を簡単に行える機能を追加。フルブラウザは最新のOpera 9.5がプリインストールされ、ディスプレイ上に指をすべらせてページをスクロールしたり、ダブルタップで拡大/縮小したりできるようになるなど、操作性が大幅に向上している。



 “生活密着型端末”としてラインアップするのは、ウィルコムの音声定額を牽引する「HONEY BEE」のブルーシールアイスクリームモデルだ。同端末は2月の発売以来、販売ランキングの上位に食い込んでおり、20代前後の若者層の支持を集めているという。「機能だけでなく、ターゲットにフィットするデザインが重要であることを証明した」(喜久川氏)。

 これに“夏ならでは”のカラーバリエーションとしてブルーシールアイスクリームモデルを追加し、若年層にアピールする考えだ。

Photo HONEY BEEのブルーシールアイスクリームモデル。個装箱はアイスのテイクアウトの箱をイメージ

 喜久川氏は、さらなる“生活密着型”の取り組みとして、今年度末までにモバイルFeliCa対応モデルをリリースすることも明らかにした。「モバイルFeliCaは今や、生活密着型の端末には必要不可欠。ウィルコムとして満を持して導入する」(同)。なお、FeliCa搭載機は、当初はオープン系のOSを搭載した端末ではなく、「ほかのものの可能性が高い」(同)としている。

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