ケータイが“一人一人”専用の銀行になる――「じぶん銀行」のビジョンと狙いモバイルネット銀行、誕生

» 2008年06月18日 00時31分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 モバイルがさまざまな業界との連携を深める中、今度は金融と連携――。これがKDDIと三菱東京UFJ銀行が共同で設立したモバイル向けネットバンクの「じぶん銀行」だ。この銀行は“ケータイの中に銀行をビルトインする”というコンセプトでサービスを展開する。携帯電話上のインターネットだけでなく、PCや電話(音声)経由でも利用できるが、それはあくまで補完的な位置付けとなり、“モバイルならではの使いやすさと利便性”を追求したサービスを目指す。

 6月17日、じぶん銀行の銀行営業免許が下りたことを受け、同行の親会社となるKDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏と三菱東京UFJ銀行 頭取の永易雅人氏、じぶん銀行の初代社長となった中井雅人氏が顔をそろえ、サービスのビジョンを説明した。

Photo 「じぶん銀行」のロゴを披露するKDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏(左)とじぶん銀行 代表取締役社長の中井雅人氏(中)、三菱東京UFJ銀行 頭取の永易雅人氏(右)

 小野寺氏は、じぶん銀行について「KDDIの中期的経営目標の“チャレンジ2010”において、新規事業を創出することで事業領域の拡張と持続的な成長を目指す中、新規事業の中核として(じぶん銀行を)位置づけている」(小野寺氏)と説明。携帯ネットワークの高速化やパケット定額制の急速な普及に伴ってサービスが多様化し、モバイルeコマース事業が急成長していることを挙げ、「購入から料金の支払いまでを、携帯電話1つですませたいというニーズが高まっている」という。それに応えるのが“じぶん銀行”だと小野寺氏は胸を張る。「じぶん銀行をケータイにビルトインすることで、お客さまのライフスタイルに密着した金融サービスが提供できるようになる」(同)

 三菱東京UFJ銀行 頭取の永易雅人氏は、同社のリテール戦略の中で“じぶん銀行をどう位置づけるか”に言及。「ケータイは今や、なくてはならない身近な存在。大いなる進化を遂げたケータイサービスをフルに活用し、顧客に対して“モバイルならではの、便利で新しい”金融サービスを提供したい」と抱負を語った。

 「三菱東京UFJ銀行の持つ全国670の店舗、全国4万2000カ所のATMネットワークを生かすことで、“ケータイから、いつでもどこでもスピーディーに使える”じぶん銀行の便利なサービスを、より便利で快適な生活に役に立てられると確信している。三菱東京UFJ銀行とじぶん銀行間の振込手数料は無料で、ケータイで簡単にお金のやりとりができる。資産の運用管理には三菱東京UFJ銀行の口座を使い、日常の振り込みやショッピングにはじぶん銀行の口座を使うなど、両行の口座を使い分けることで、顧客の利便性をより高められる」(永易氏)

 なお、KDDIが他の銀行と、三菱東京UFJ銀行が他のキャリアと組んで同種のサービスを提供する可能性については、「KDDIが他のメガバンクと組むかといえば、そういうことは考えていない。(こうしたサービスは)1つあれば十分で、検討していない」(小野寺氏)といい、じぶん銀行に関しては「他社からの希望があれば、両社で話しながら考える」と話すにとどめた。

Photo 「じぶん銀行」設立の背景

ケータイが、お客さま一人一人専用の銀行になる――中井氏

 「“ケータイに銀行をビルトインする”というのが基本的な考え方で、手元のケータイがそのまま銀行になるイメージ。店舗に行って手続きをしたり、ATMでお金をおろしたり入金したりする代わりに、いつでもどこでもケータイで簡単・安全に取引ができる」――。じぶん銀行の社長を務める中井氏は、じぶん銀行のビジョンをこう説明する。銀行の名前も、“お客さま一人一人専用の銀行になる”というイメージを表現したものだ。

 コンセプトは3つあり、1つは“圧倒的に高い操作性と利便性の実現”、もう1つは“安心・安全を確保するセキュリティ”だ。携帯電話の小さな画面では、少ないクリック数で目的を果たせる操作性のよさが備わっていないとサービスを使ってもらえず、中井氏は「ここがサービスの根幹になる」と強調。銀行サービスを行う上で最重要課題となる安心・安全については、「ともすれば、(使いやすさと安心・安全の)2つがトレードオフのような関係になるが、じぶん銀行では、この2つを同時に追求したい」と自信を見せた。

 3つ目は“ライフスタイルに沿ったメリットの還元”。利用者にさまざまな生活シーンで使ってもらうためにも、携帯料金の口座振替に利用するとポイントを増量したり、三菱東京UFJ銀行の口座保有者に対して手数料を優遇したりといった、“お得感”を提供する考えだ。

Photo キャプション

“auケータイならでは”のサービスで“囲い込み”狙う

 じぶん銀行のサービスは、auケータイだけでなく、ドコモやソフトバンクモバイル端末でも利用できるが、KDDIが親会社であることから、auユーザーには特別なサービスが用意される。その1つが、auケータイ向けの専用アプリ「自分通帳」だ。他キャリアユーザーやauのBREW 3.1以前の端末ユーザーはWeb経由での利用になるが、BREW 3.1以降に対応した端末のユーザーは、より利便性の高いアプリ版の通帳を利用できる。サービス開始時点では、利用者が自らダウンロードする必要があるが、秋の新モデル以降は主要なauの新機種に自分通帳がプリインストールされ、秋冬モデルからはメインメニューにじぶん銀行のアイコンが追加される予定だ。

 そしてau向けのサービスの目玉ともいえるのが、「ケータイ番号振り込み」。銀行でお金を振り込む際には、振込先の銀行名や支店名、口座番号などを入力する必要があるが、このサービスではメールや通話でコミュニケーションするのと同じように、アドレス帳から振込先の相手を選んで振り込める。これはau端末のサブスクライバID(端末固有の番号)とじぶん銀行の口座番号を紐づけることで実現しており、当初は相手もau携帯ユーザーでじぶん銀行に加入している相手にのみ振り込める。「サブスクライバIDと口座番号を紐づけるので、(他キャリアユーザーへの振り込みを実現するには)携帯キャリアから情報をもらう必要がある」(中井氏)

 さらにEC連携では、開業当初からauショッピングモールとauオークションでじぶん銀行の決済を簡単操作で利用できるようにするなど、“auケータイならでは”の機能を提供することで、ユーザーの囲い込みを狙う。

Photo “auケータイならでは”の便利で楽しいサービスを提供

Photo じぶん銀行には順次、新サービスを追加。「カードローンや外貨預金、証券・保険の仲介サービス、クレジットカードの非接触IC対応などのサービスを順次展開する計画だ。電子マネーのチャージは、開業時にEdyからスタートする

通信事業とメガバンク、それぞれのシナジー効果を最大限に

 KDDIと三菱東京UFJ銀行はじぶん銀行の事業を通じて、通信事業、メガバンクというそれぞれの事業のシナジーを追求していきたい考えだ。「KDDIと三菱東京UFJ銀行が、これまでそれぞれの分野で培ってきたノウハウと事業基盤を結集すると、個人の顧客のより便利で快適な生活の実現に役に立つ新たなモバイルネット金融事業を実現できる」(永易氏)

 今や携帯電話は契約数が1億を超えるなど、PCを上回る身近な情報端末となり、日々の生活の必需品となっている。中井氏は、これを金融サービスの提供チャネルとしてとらえると(1)いつでも持ち歩いている(2)通信機能がある(3)カメラやICカードが入っている など、優れた特性があると、その可能性に期待する。

 「通信から見ると“新たな金融決済コンテンツの提供”、金融から見ると“ケータイという有力なチャネルを拡充する”というように、通信と金融は双方向で親和性が高いと認識している。通信と金融の融合で、新しい金融サービスを創出したいというのが、じぶん銀行を設立した趣旨だ」(中井氏)

Photo 利用者、じぶん銀行、親会社であるKDDIと三菱東京UFJ銀行のそれぞれから見た事業モデル
Photo じぶん銀行にログインする際には、4ケタの暗証番号を入力する(左)。じぶん銀行のトップメニュー(右)

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