楽天の三木谷氏がStarlinkに言及――「正直に言って……」 AST SpaceMobileは過疎地域や海上で効果発揮か

» 2026年08月10日 18時36分 公開
[金子麟太郎,ITmedia]

 楽天グループは8月10日に2026年度第2四半期決算説明会を開催。三木谷浩史会長兼社長は、衛星通信に言及した。総務省の宇宙プロジェクト「J-LEO」(自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業)の補助対象にグループ関連会社のRASTが選ばれたことを受けコメントした。

 総務省は6月30日、日本国内における衛星ダイレクト通信サービスの自律性確保を目指す1500億円規模の国家プロジェクト「J-LEO」の補助対象として、米AST SpaceMobile(AST SpaceMobile)と組むRAST(申請代表)および共同提案の楽天モバイルを間接補助事業者として正式に採択。本整備事業への採択と、最大約1500億円に及ぶ補助金交付の方針は、楽天が推進する「宇宙通信プラットフォーム」の実現を国が強力に支援する形となる。

楽天グループ 楽天グループのイメージ

Starlinkと異なる「ブロードバンド衛星通信」への確固たる自信

 説明会の席上、三木谷氏は先行する競合の「Starlink」を念頭に置きながら、楽天がAST SpaceMobileと共同開発を進めるシステムの決定的な違いを語った。

 三木谷氏は、「正直に言って、Starlinkさんのショートメッセージは空が見えればつながるというレベルかもしれないが、ブロードバンド(高速・大容量通信)については技術的になかなか難しいのではないかと個人的には感じている」と指摘。これに対して「AST SpaceMobileは今後、本当に過疎地域や海上における唯一の(ブロードバンド)サービスになる可能性もある」とし、生活や経済活動を支える高速ネット通信としてのポテンシャルを強調した。

 さらに、この技術が国の安全保障や防災においても極めて重要であるとの認識を示した。「お国のためにさまざまな形で使っていただけるようなサービスになるとともに、日本国籍の低軌道衛星が初めて実現するという極めて重要な重責を担っていると考えている」と述べ、日本独自の低軌道衛星網を構築することへの強い使命感をにじませた。

楽天グループ 8月10日、決算説明会で三木谷氏は、競合Starlinkに対しAST SpaceMobileと進めるシステムは過疎地や海上でも高速通信が可能だと強調した。防災や安全保障に資する日本国籍の低軌道衛星網構築に向け、唯一無二のインフラを目指す強い使命感をにじませた(2026年8月の決算説明会のスクリーンショット)
楽天グループ AST SpaceMobileについて熱弁する楽天グループの三木谷氏(2025年4月の記者会見時に撮影)

熊本地震の教訓と、衛星の「機動的エリア調整」がもたらす新しい災害対策

 2026年7月に発生した「令和8年熊本地震」において、楽天モバイルは被災地の通信確保に奔走した。三木谷氏は「現時点でわれわれにできることは最大限やらせていただいた」と振り返る一方で、この災害を教訓にさらなる強靭(きょうじん)化に向けた検討を進めている。

 具体的な災害対策として「停電時でもサービスを継続できる仕組みづくりや、何と言いましてもやはりAST SpaceMobileがブロードバンドを提供できることが極めて重要だ」と述べ、宇宙からの通信バックアップが災害対策の大きな鍵になると位置付けた。

 とりわけ、地上の基地局が被災した際に効果を発揮するのが、低軌道衛星による柔軟なエリア調整だ。三木谷氏は、「このような大きな災害が起こった場合には、機動的にターゲット地域を動かすことができる。その当該災害地域に対して、より手厚い周波数帯域をわれわれが割り当ててサービスを継続していくということを実現したい」と構想を語った。被災地の状況に応じて、上空から臨機応変に電波の焦点を動かし、手厚い通信リソースを集中的に届ける防災アプローチだ。

 三木谷氏が「繰り返しになるが、AST SpaceMobileの日本のJ-LEO計画は、今後は非常に大切になってくる」と力を込めたように、国家プロジェクトへの採択は有事の通信安全網の確立を加速させる。

日本初の「国籍を持つ宇宙インフラ」の確立へ

 三木谷氏の発言から浮き彫りになったのは、楽天が描く宇宙戦略が「スマートフォンで直接通信できる本格的なブロードバンド」を日本全土、そして洋上へと届ける唯一無二の試みであるという点だ。

 J-LEO計画によって実現する日本独自の低軌道衛星は、有事でも外部環境に左右されず国内の通信インフラを自律的に維持する要となる。地上では約32万局の自社基地局構築によって自立性を高める中、上空からは国家プロジェクトの強力な後押しを受けて“日本国籍の低軌道衛星”を打ち上げる。地・空の両面から強固なレジリエンスを追求する楽天の宇宙戦略は、日本の安心・安全を守る新たな通信基盤として、稼働の時を確実に迎えている。

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