KDDIからの独り立ちを目指す楽天モバイル、ローミング交渉の現在地――両社の考えを整理

» 2026年08月10日 17時25分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 楽天グループが8月10日に開催した2026年度第2四半期決算説明会において、代表取締役上級副社長執行役員でありモバイルセグメントリーダーを務める百野研太郎氏は、楽天モバイルがKDDIより提供を受けているau回線のローミング契約について、今後の移行見通しと交渉状況を明らかにした。

楽天グループ 楽天グループのイメージ

 ローミングを巡っては、KDDIの松田浩路社長がこれに先立つ8月7日の決算説明会において「9月末での原則終了」を明言しており、楽天グループ側の出方に大きな注目が集まっていた。自社ネットワークによる独り立ちを急ぐ楽天グループと、ネットワークリソースの自社優先を掲げるKDDI。双方の認識が出そろった形だ。

現行のローミング協定の期限は2026年9月末に迫る 

 KDDIは、楽天モバイルの人口カバー率補填(ほてん)を目的として、7年間にわたり一部エリアでau回線によるローミングサービスを提供してきた。しかし、現行のローミング協定の期限は2026年9月30日に迫っている。

 8月7日の決算説明会において、松田氏は楽天モバイルとの交渉状況について次のように強く明言した。

 「楽天モバイルには、人口カバー率を補填するという目的のもと、7年間にわたってローミングを提供してきた。先方の自社エリアもこの7年間で拡大したことを受け、当社としては一定の役割を果たせたと考えている。そのため、現状の契約は予定通り9月をもって終える方向で交渉を進めている」

 さらに松田氏は、楽天モバイルがローミング回線に依存し続けていることに対するインフラ側の課題を指摘した。

 「以前から先方には、想定外のエリアから想定以上のトラフィック(通信量)がKDDIのネットワークに来ているという懸念を伝えてきた。今回の契約終了をもって、このパケ詰まりや設備負荷の問題は解決できる。今後は、今まで以上にau、UQ mobile、povoといったわれわれ自身のお客さまのために、われわれのネットワークリソースを優先的に割り当てる方向に舵を切るという経営判断だ」

 松田氏は「周波数を割り当てられたMNO(移動体通信事業者)は基地局整備を自ら行うのが大前提だ」と厳しい姿勢を示し、自社で汗をかいて基地局を構築するよう楽天グループ側に求めた。ただし、楽天モバイル側のエリア構築がいまだ不十分なルーラルエリア(地方部・山間部)に限定しては、「区域と期間を区切ったローミング契約を改めて締結する可能性もある」と言及し、激しい市街地での競争とは異なる強調(インフラ共同維持)の余地も残した。

KDDI 松田浩路 KDDIの決算会見で松田浩路社長は自社ユーザーへのネットワークリソース優先配分を強調しローミングの原則終了を語った

百野氏が示した「段階的移行」と継続協議の姿勢

 KDDI側から実質的な市街地ローミングの打ち切り宣告を受けた形となったが、8月10日の決算会見の場に登壇した百野氏は、冷静かつ前向きな姿勢を示した。

 百野氏は、楽天モバイルの自社基地局(4G・5G合算)が2026年6月末時点で累計32万1900局(LTE:26万1100局、5G:6万800局)に達するなど、インフラ基盤が飛躍的に強固になっている実績を強調。市街地エリアでのローミング終了は自立に向けた計画通りの進捗だとした上で、今後のKDDIとの関係性について次のように語った。

 「自社基地局の急速な構築とエリア拡大によって、都市部や主要な生活導線においては、すでにローミングに頼らず自社回線のみで他社とフェアに競争できるネットワーク品質を確立できている。一方で、10月1日以降のローミングサービスについては、事前に決算資料にも示している通り、両社で協議の上決定するという方針に変わりはない」

 百野氏は、地方部やカバレッジが脆弱な一部地域において、ユーザーの体感品質を損なわないための交渉を行っていることを明かした。

 「地方や山間部など、まだ自社インフラの整備を急がねばならない地域については、エリアと期間を適切に区切った形での連携を視野に入れている。KDDIとは現在も前向きな協議を重ねており、お互いにとって、そして何よりユーザーにとって最も不利益のない着地点を模索している段階」

楽天グループ 百野研太郎 楽天グループの決算会見で百野氏は自社基地局の整備状況と今後の協議姿勢を示した

財務的なメリット(ネットワーク費用の削減)と、ネットワーク体感品質の維持というリスク

 楽天モバイルの当第2四半期(4〜6月期)決算は、契約回線数が1075万回線まで急増し、売上収益も1013億円(前年同期比11.9%増)を記録するなど好調が際立っている。Non-GAAP営業損失も323億円(前年同期比67億円の改善)まで縮小し、本業のキャッシュ創出力を示すEBITDAは59億円の黒字を確保した。

 このモバイル黒字化に向けた財務的な観点からも、今回のローミング契約の終了は楽天グループにとって二面性を持つ。

 楽天モバイルの営業費用のうち、KDDIへ支払うローミング費用(接続料)は、これまで大きな負担となってきた。市街地エリアでのローミングが9月末で予定通り終了すれば、KDDIへの支払費用が大幅に削減されることになり、モバイル事業の営業赤字の縮小、ひいては悲願の連結最終黒字化をさらに加速させる強力な追い風となる。

 一方で、ローミングが終了した地域で万が一圏外やパケ詰まりが多発すれば、せっかく改善したMNO単純解約率(1.38%)が再び悪化するリスクをはらむ。特にプラチナバンド(700MHz帯)の運用や最新技術の活用、さらにはルーラルエリアにおけるKDDIとの部分的な新ローミング契約が完全に機能するまでは、地方部での接続性をいかに維持できるかが、10月以降のユーザー体感品質を左右する。

重要な局面を迎える楽天モバイル 真の独り立ちはこれから

 松田氏が「市街地ではフェアに競争し、ルーラルでは限定的に強調する」と明確に線を引いたのに対し、百野氏も「独り立ちのカバレッジに自信を示しつつ、新契約の締結に向けて粘り強く協議する」という姿勢を示し、両社の主張は合理的な一致点を見せつつある。

 2026年10月、楽天モバイルはau回線という後ろ盾から大半の地域で真の独り立ちを果たそうとしている。この移行期において、地方でのつながりやすさを担保しつつ、ローミング費用削減による財務改善を両立させられるか。楽天モバイルが「第4のキャリア」としての真のレジリエンスを証明するための、重要な局面を迎えようとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月25日 更新
  1. 富裕層向けカードの潮流が変化 アメックス、三井住友、ダイナース、ラグジュアリーカードが狙う“特別な体験価値”とは? (2026年09月22日)
  2. 「iPhone 18 Pro」は何が進化した? 「iPhone 17/17 Pro」とスペックを比較 全て20万円超えの価格が悩ましい (2026年09月10日)
  3. 似て非なる?「iPhone 18 Pro」と「iPhone 17 Pro」の外観上の違いを比較する (2026年09月23日)
  4. 「マイナポータルアプリ」が「マイナアプリ」へ刷新されて何が変わった? メリットや利用方法を解説 (2026年09月20日)
  5. どちらを選ぶ? 「iPhone 18 Pro」と「iPhone Duo」のスペックを比較、14.5万円の価格差をどう捉えるか (2026年09月24日)
  6. イオンでアプリ使ってる? お得に買い物をする方法を調べてみた【2026年9月版】 (2026年09月24日)
  7. キャリアショップや家電量販店よりも厳しい現実――街中の「併売店」の“今”を探る (2026年09月21日)
  8. 「iPhone 18 Pro」で“Face ID認証できない”問題、Appleが対処法を案内 やはり「画面フィルム」に言及 (2026年09月21日)
  9. 出そろった「iPhone 18 Pro」の価格を4キャリアで比較 ソフトバンクが衝撃の安さ、楽天モバイルが異例の施策 (2026年09月13日)
  10. 月40GBになった「ahamo」はどれだけお得? 他社中容量プランと比較、「大盛り」に意外な落とし穴も (2026年09月21日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー