「電話」以外の提案力で携帯キャリアに差をつける――ウィルコム 土橋匡氏ワイヤレスジャパン2008 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2008年07月02日 07時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo ウィルコム取締役 執行役員副社長 営業統括担当の土橋匡氏

 2008年の携帯電話・PHSビジネスで、重要なキーワードになっているのが「法人市場」だ。1999年のiモード登場以降、携帯電話市場は“コンシューマーの力”が牽引してきたが、個人ユーザーの契約数拡大はすでに頭打ち感が現れている。一方で、データ通信分野の“伸び”も、パケット料金定額制の普及やコンテンツサービス分野の成熟が進んだことで、その成長が鈍化している。こうした中で、携帯電話・PHSの法人向け市場は「新たな成長領域」として各キャリアがしのぎを削っているのだ。

 この法人向けビジネスにおいて、本格的な市場開拓を最初に行ったのがウィルコムだ。同社は「音声定額サービス」の導入で携帯電話キャリアの先手を打ち、コンシューマー市場はもちろん、法人市場においても“音声定額”を訴求。それまでの一部の大企業のみならず、中小企業まで含めた法人市場全体の活性化を行った。誤解を恐れずにいえば、今の“法人市場ブーム”のきっかけを作ったのがウィルコムだ。

 そして2008年。法人向けの音声定額サービスはウィルコム以外にも広がり、法人市場全体に“火が付いた”。この中で、この分野の先駆けであるウィルコムはどのような「次の一手」を打つのか。ウィルコム取締役 執行役員副社長 営業統括担当の土橋匡氏に話を聞いていく。

規模の戦いでは、携帯キャリアの法人戦略に勝てない

ITmedia ウィルコムは他社に先駆けて「音声定額」を導入して以降、法人市場の開拓に積極的に取り組んできました。その立場から見て、ウィルコムの法人ビジネスの現況をどのようにとらえていますか。

土橋匡氏(以下敬称略) 我々は「データ通信定額」や「音声定額」を最初に市場に投入し、法人市場の開拓を行いました。その点で見ますと、2007年前半くらいまでは、携帯電話キャリアが類似サービスを投入するといった動きはありましたけれども、(ウィルコムの)サービス品質での優位性で十分に競争できた。我々が特に新たな取り組みをしなくても売れるという状況でした。

ITmedia 確かに一時期の法人市場においては、音声定額の先行者優位から「ウィルコムであれば売れる」という状況がありました。しかし、携帯電話キャリアの攻勢で、昨年後半からは状況が変わってきました。

土橋 ええ。お客さまからみて(ウィルコム以外の)選択肢が増えたことと、やはり営業体制の「規模」においては携帯電話キャリアにはかないません。そういった部分での不利は確かにあります。

ITmedia ここにきて携帯電話キャリアは法人営業体制の強化に乗り出しています。人海戦術といった様相もあります。

土橋 ドコモはもともと規模が大きいですし、KDDIやソフトバンクモバイルは固定電話部門と連携して法人営業をかけていますからね。これに対してウィルコムは営業担当者の絶対数に違いがありますので、どうしても営業担当1人あたりの負担が重くなり、(営業体制が)“広く薄く”ならざるをえません。

 さらに料金競争においても、携帯電話キャリアはコンシューマー市場が飽和したものだから「これからは法人だ」といって、(法人向けは)相対契約でやたらと価格攻勢を仕掛けてきます。このような変化があり、法人市場の厳しさは増してきています。

ITmedia 2006年くらいまでは、法人市場は「音声定額」によるウィルコムの“オンリーワン戦略”を構成する重要な市場でした。それが携帯電話キャリアの参入により、ウィルコムがオンリーワンではなくなってしまったわけですね。

土橋 それ(競争激化と選択肢の増加)は法人のお客さまにとってはよいことだと思っています。しかし、我々にとっては営業方針の転換期であることは確かです。

プロダクトアウトではなく、「実際のユーザー」を重視

ITmedia その「営業方針の転換」とはどういった内容でしょうか。

土橋 契約数を求めることは大切ですが、それだけでは携帯電話キャリアの規模に勝てません。そこでウィルコムとしては、営業担当者がお客さまのビジネスを理解し、それにあった提案ができる体制作りを目指しています。料金だけではない部分で競争していく必要があります。

ITmedia 法人向けのソリューションビジネスですね。

土橋 そうです。実は法人向けソリューションについては、我々は以前から力を入れており、こういったお客さまとは単純な料金以外の部分でしっかりとした関係を構築できています。もちろん、料金競争でも携帯電話キャリアに負けない体制を作っていますが、ウィルコムとしてはその先の展望として「お客さまのビジネスに貢献する」領域で競争をしていきたいのです。

ITmedia 法人ユーザーから見た“ウィルコムの価値”は、単純なプライスリーダーではない、と。

土橋 ただ安いだけではなく、お客さまに納得していただける価格と価値のバランスだと思っています。それを踏まえて、ウィルコムの価値は何かと申しますと、携帯電話キャリアのように「プロダクトアウト型」ではないということです。

 例えば、「WILLCOM 03」や「WILLCOM D4」などは、セキュリティ上の規定でノートPCが持ち出せない企業や、(サイズの観点から)ノートPCを持ち歩きたくないビジネスユーザーが、それでも「モバイルで仕事をすませて早く家に帰りたい」というニーズを受けて開発されました。企業の経営層だけでなく、働く人にとってもメリットのある端末やサービスは何か。そういったことを考えながら、我々はさまざまな提案をしていきます。

Photo 同社スマートフォンの集大成ともいえる「WILLCOM 03」(左)と、ウィルコム初のウルトラモバイルPC「WILLCOM D4」

ITmedia ウィルコムは以前から企業内の個人ユーザーに強いといわれていましたが、法人市場が活性化した今でも、「実際にウィルコムを使う、働く人」のことをしっかり考えているわけですね。

土橋 (実際に利用する)ビジネスユーザーを重視するというのは基本スタンスですね。我々は大手企業との相対取引でドコモやKDDIといった大手携帯電話よりも(企業規模やブランド的に)不利な立場にありますが、実際に法人契約の端末・サービスを使うユーザーに支持されるものを作っていけば、いつかウィルコムのよさを理解している人が出世した時に、その企業でウィルコムを選んでくれると信じています。ですから、ドコモやKDDIと(法人契約の獲得で)競り負けても、またいつか必ずウィルコムを選んでいただけると考えています。

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