Windows Mobileでコンシューマーの心を揺さぶりたい──マイクロソフト 越川慎司氏神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

» 2008年09月09日 12時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]

ITmedia モバイル市場は、マイクロソフトの提唱する「ソフトウェア・プラス・サービス」のような仕組みが、今後さらに重要になると思います。メーカー各社や他のOSプラットフォームもそのような方向性に進むでしょうし、すでにAppleは「iPhone 3G」でその姿を具体化しています。特にAppleは、"コンシューマー向け"のスマートフォンやサービス連携型の提案、ユーザー体験の洗練といった点では、マイクロソフトよりもリードしています。今後、Windows Mobileでは、どのようにして優位性を確保するのでしょうか。

Photo Xbox 360やZuneなどのコンシューマー向け機器やサービスがWindows Mobileと連携・統合される可能性も「将来的には考えられる」と語る越川氏

越川氏 例えば、Appleの「Mobile Me」がマイクロソフトのサービスより先行しているかというと、そこには疑問があります。一方、エンターテインメント分野では、Appleの「iTunes Store」や「App Store」が先行している面もありますが、我々としては、日本市場に合わせたコンテンツプラットフォームの構築をしていきたいと考えています。すでにこの活動は始まっていまして、開発環境のサポートや、マーケティング的な支援といった取り組みに着手しています。我々は、サービスやコンテンツ分野において、開発からマーケティング、流通まで一貫してパートナー企業を支援して、地域性を重視してレベニューシェアモデルを構築していきます。

ITmedia AppleのiPhone 3Gのサービス連携やコンテンツ流通モデルでは、スマートフォンであるiPhone 3Gだけでなく、MacやiPodなどともプラットフォームを共有していることが強みになっています。

 一方、マイクロソフトでは、コンシューマー向けゲーム機の「Xbox 360」が日本でも存在感を高めていますし、北米市場ではデジタル音楽プレーヤーの「Zune」を販売し、Zune向けのPCソフトウェアやオンラインストアも用意しています。今後、これらマイクロソフトのコンシューマー向けプロダクトのソフトウェアやプラットフォームが、Windows Mobileに統合・共通化されるシナリオはないのでしょうか。

越川氏 今はいろいろな選択肢を考える時期だと思いますが、例えばWindows Mobileにとって、マルチメディアプレーヤーであるZuneのディストリビーションの仕組みはとても魅力的です。ですから、ZuneのようなマルチメディアサービスをWindows Mobileに載せていく方向であることは事実です。しかし、日本市場にはZuneが投入されていませんので、(Zuneの)音楽配信の仕組みをWindows Mobileに統合していくとなれば、日本でどのように対応していくかはパートナー企業とよく話し合っていかなければならないでしょう。

ITmedia 今後、Windows Mobileがコンシューマー色を打ち出す中で、マイクロソフトがすでに実施している他のコンシューマー分野の機器やソフトウェア、サービスとの連携や統合は考えられる、ということですね。

越川氏 可能性としては考えられます。これまで組織が縦割りだったものが、“コンシューマー”というくくりで連携しつつあります。マイクロソフトの強みというのは、既存のリソースをどう使うか、という部分にもあると思っていますので。

 マイクロソフトのリソースを組み合わせた時にできる世界観というのは、AppleやGoogleに負けないものだと思っていますし、それをいち早く実現することが私のミッションの1つになるでしょう。

ホスティングサービスで、セキュアにメール統合

ITmedia 今後、Windows Mobileがコンシューマー市場で競争力を高くする方向であるのはわかりました。一方で、日本でも携帯電話の法人契約が伸びていますし、ビジネスユーザー全体のスマートフォン利用にも、徐々にではありますが火が付いてきています。この分野での競争力強化にはどのような展望があるのでしょうか。

越川氏 そうですね。これまでもWindows Mobileは、メールの使い勝手のよさが優位性になっていたのですけれども、このあたりは(BlackBerryを販売する)RIMの方が人気があります。あれは結局、Exchange Serverのホスティングサービスなのですが、RIMはそれを法人市場に展開することでビジネスユーザーの支持を得ています。マイクロソフトとしても、Exchangeのホスティングサービスを提供し、それをWindows Mobileと連携していきたいと考えています。

ITmedia 「プッシュEメール + セキュリティ」のサービスですね。それは法人ユーザーだけでなく、ビジネスコンシューマー層にも訴求するのでしょうか。

越川氏 そうしたいと考えています。すでにセキュリティも含めたExchangeのホスティングサービスをグローバルで提供する予定で、日本でも来春からサービスを開始します。RIM的なアプローチが、マイクロソフトだけで提供できるのは、大きな競争力強化になるでしょう。

 これはビジネスユーザー全体に言えると思うのですけれど、今後は「複数のメールサービスを、いかに安全かつ使いやすく統合するか」が重要になります。こういった“メール統合”のサービス・機能強化は、コンシューマーユーザーでも重要になっていくと思いますので、今後さらに力を入れていきたいですね。

“もっさり”しないWindows Mobile端末を投入したい

ITmedia サービスとの連携・統合以外では、UI(ユーザーインタフェース)環境に対するニーズも増加しています。この分野では、特にコンシューマー市場を中心にWindows Mobileの画一的なUIが好まれない傾向もあります。

越川氏 以前に比べればWindows MobileのUIもかなりよくなっていると思いますが、特にコンシューマー市場において、ユーザーやOEMメーカーが「Windows Mobileの基本デザイン以外のUI」を求めているということも十分に理解しています。そこは今後、UIの自由度を高くしていく仕組みを検討しています。

ITmedia (カーナビ用の)Windows Automotiveが「メーカーにUI開発を解放する」ことで大きな成功を収めましたので、Windows Mobileでもビジネス市場向けの基本UI搭載とは別に、メーカーが自由にUIを作れるスキームを早く実装してほしいですね。

越川氏 現在はUIのシェルを被せてメーカー独自のUIを実現していただいていますが、将来的にはそういう方向性もありますね。しかし、現在の(Windows Mobileの)UIを好まれるユーザーさんも多くいらっしゃいますし、海外メーカーの中には現行バージョンの上に独自UIを構築されているところもあります。UI環境については、市場の声を聞きながらさまざまなシナリオを検討していきたいと考えています。

ITmedia もう1つ、UIに関しては反応速度の課題もあります。Windows Mobileなどのスマートフォンは、一般的な携帯電話に比べて体感的な反応速度が遅いと感じてしまうことが多いと思います。特にダブルバイト圏(2バイトで文字を表現する地域)である日本では、欧米では反応速度の速さが売り物のiPhone 3Gですら、“もっさり”してしまいます。日本語環境でいかに快適な反応速度を実現するかは、大きな課題といえるでしょう。

越川氏 反応速度に関しては、まずパフォーマンス面でバッテリーやCPUの進化が進んできているという追い風があります。日本のOEMメーカーとも協力体制を取っていまして、ダブルバイトである日本語環境の上でも、もっさりしないキビキビと動くWindows Mobile端末を直近にも市場投入できるでしょう。

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