専用アプリで“プッシュ+リアル連携”――「ケータイ旅人サービス」をチェックする

» 2009年01月09日 21時02分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 GPSとFeliCaにアクティブタグ。これらのリアル連携用機能を使い、ユーザーの居場所や行動に合わせて最適な観光コンテンツを提供する――。

 NTTドコモが8日、沖縄県にて発表したユビキタス特区事業「携帯電話による観光動線誘導サービスの実証(ケータイ旅人(たびんちゅ)サービス)」は、ケータイの“リアル連携”のトレンドを、観光振興向けのサービスとして応用したものだ。

 ケータイ旅人サービスとはどういったものなのか。詳しく見ていこう。

1つのアプリが複数メディアでリアル連携

 旅人サービスの特長は、GPSFeliCaBluetooth、アクティブタグ(RFID)など複数の通信メディアを1つのアプリから利用していることだ。これまでもGPSやFeliCaを利用するアプリは存在したが、「これら複数の位置測位や近接通信技術を組み合わせて、シームレスなサービスとしたのは全国でも初めて」(NTTドコモ モバイルデザイン推進室 室長の加藤祐一氏)である。なお、今回の実証実験用アプリは同時に複数の端末機能を協調制御するため、iアプリベースであるが、「P906i」専用の拡張仕様になったという。

 GPSやFeliCa、Bluetooth、アクティブタグなどは、ユーザーの行動履歴を収集し、より適切なタイミングで最適なコンテンツを提供するために利用されている。そのため旅人サービスのアプリは、待受iアプリとして常にシステムに常駐する。

 まず、GPS機能は屋外での位置測位とユーザーの行動履歴を把握するために用いられる。GPSによる位置測位は1分間に1回の頻度で行われ、そのデータは1〜2分間隔でサーバに送信される。ユーザーは現在地はもちろん、進行方向や過去に移動した経路まで、サーバ側で把握できるという。

 これまでのGPSとコンテンツ配信の連携では、“現在地”に対して周辺情報の提供をするだけだったが、GPSの移動ログを取得することで「例えば、高速道路や県道をどの方面に進んでいるかの予測が立てられる。このデータを用いて、(道路の)進行方向にある施設情報だけを提供するという実験を行う」(加藤氏)という。

 なお、GPSによって現在地のみならず、経路履歴まで取得することはモニター参加者の心理的抵抗も考えられるため、申し込み段階でGPSログ取得について許諾をとり、ユーザーの個人情報とは結びつけないように配慮するという。こうしたGPSログ・行動履歴の取り扱いをどのように運用するかも、今回の実証実験の狙いの1つだ。

 アクティブタグは特定省電力通信(429MHz)帯を使った小型通信機である。内部には特定省電力通信のチップのほかにBluetoothチップも内蔵されており、観光施設や店舗に設置されたアクティブタグマーカーからの電波を受信すると、その情報をBluetooth通信に変換して携帯電話側に送信する。これをBluetooth通信の受信待機をしている旅人サービスアプリが受信することで、間接的に“アクティブマーカーの設置圏内に入った”ことを携帯電話側が認識するのだ。

Photo 今回の実証実験で使用されるアクティブマーカー。特定省電力通信とBluetooth通信を内蔵し、バッテリーで駆動する。これはドコモが参加した総務省「ユビキタス端末技術の研究開発」(アクティブリーダー/ライター)の成果を用いたものだという。充電端子はFOMA共通アダプター仕様だ

 「本来は携帯電話にアクティブマーカーの受信ユニットを内蔵すればいいのですが、今回は実証実験なのでそこまで踏み込んだ(携帯電話の)開発はできません。そこでBluetooth通信に変換することで、市販の携帯電話でもアクティブマーカーの活用ができるようにしたのです。

 アクティブマーカーの電波は見通しのよいところならば、100メートルほどの伝達距離を持っています。しかし実際の運用は、(観光スポットの)『敷地内』や『施設内』を判別するために、到達距離が数十メートル程度になるように出力を絞って運用します」(NTTドコモ モバイルデザイン推進室 第一推進担当部長の佐藤一夫氏)

 GPSが「広域」の位置把握に用いられるのに対して、アクティブマーカーは「中域」の位置把握をカバーする。そして、最後の「狭域」での位置を把握するのが、おサイフケータイでおなじみのモバイルFeliCaだ。今回の実証実験ではモバイルFeliCaの通信機能のみを利用し、使用した電子クーポンの判別やスタンプラリーでの応用などが考えられている。「広域や中域のエリア情報に基づいて電子クーポンを配信し、それが実際に店舗で使用されたかを判別することで、送客・誘導効果を検証する」(佐藤氏)といった使い方だ。

Photo アクティブマーカーは手のひらサイズ。実験ではストラップに取り付けて貸し出す
Photo アクティブマーカーの送信機。内部には送信ユニットと乾電池が入っている。単1形電池3本で、約1カ月の運用が可能。設置の運用性を向上するために内蔵電源にしたという

デザイン性の高い専用アプリ。課題は消費電力

 旅人サービスのアプリは、今回の実証実験用に開発されたものだが、デザインとUIともに優れている。アプリ側に配信された観光情報やクーポンはジャンル別や周辺施設別に分類され、新しいコンテンツを受信すると「新着BOX」としてポップアップ表示される。

 また、美ら海水族館の混雑状況などのリアルタイム情報は、アプリの下にテロップ表示される仕組みだ。UIのイメージとしては、「iチャネル」に近い。ドコモはこの数年、こうした“誰でも使いやすい”UIの開発に腐心してきたが、旅人サービスのアプリでは「そのノウハウが生かされている」(加藤氏)という。

Photo 旅人サービスのアプリは、実証実験用ながらデザイン・UIのクオリティは高い。操作感はiチャネルに近い。待ち受けiアプリとして動作し、GPSとBluetoothは常に起動中となる

Photo リアルタイム混雑情報は画面下にテロップ表示される。これもiチャネル風だ。新着情報として配信されたコンテンツは、分かりやすくポップアップ表示される

 しかし、その一方で、現在の旅人サービスには大きな課題も残されている。アプリの消費電力だ。

 「今回の旅人サービスアプリは、1分間隔でGPS位置情報を取得し、1〜2分ごとにサーバと通信をします。さらに(アクティブマーカーと連携する)Bluetoohも常時待機中になる。待受状態で運用するアプリの消費電力は大きく、これが運用上の課題になっています」(加藤氏)

 今回の実証実験ではレンタカーの利用が前提になるため、モニター利用者には実験用端末と一緒に、車載充電器も合わせて貸し出す。これにより「車中では常に(端末を)充電してください、とお願いする」(加藤氏)という。

 「GPSを積極的に活用したリアル連携サービスでは、端末消費電力が(実現と運用の)ハードルになります。今回は実証実験ですので、これをよい機会として消費電力低減の運用ノウハウや技術を蓄積していきたい」(加藤氏)

 今後のドコモのサービス戦略において、「行動履歴の活用」と「情報のプッシュ配信」「リアル連携」などは重要な要素となる。旅人サービスは、これらを実現するためのノウハウを蓄積する実証実験として、重要な取り組みになりそうだ。

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