卒業旅行でホワイトハウスを訪れた大学生・咲の前に、一糸まとわぬ姿で現れた1人の少年。記憶を失っていた彼の手には、拳銃と82億円もの電子マネーがチャージされた携帯電話が握られていた――。
フジテレビの深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」で放送されている「東のエデン」で、「携帯電話」が作品の重要なキーアイテムとして活躍しているのをご存じだろうか。少年が持っていた謎の携帯「ノブレス携帯」は、近未来的かつガジェット感あふれる造形が登場人物に負けない存在感を放っている。
作品を手掛けたのは、世界的にその名を知られるアニメーション制作会社、プロダクション・アイジー(Production I.G)。士郎正宗氏のマンガをアニメ化した「攻殻機動隊」シリーズをはじめ、同社が紡ぎ出すリアルな“未来の世界”に魅了されるファンは多く、今回のノブレス携帯もそうした世界観を生み出すツールとしてアニメーターがデザイン……したかと思いきや、そうではないようだ。ノブレス携帯は、実は“NEC製”なのである。
ノブレス携帯は、“2010年から2012年のモバイル端末”としてNECが制作したコンセプトモデルの1つで、もともとはバイクユーザーのための携帯としてデザインされた。本体背面にはバイクに取り付けるためのマウントを備え、走行中の振動や衝撃に耐える構造になっているという。
ボディを一見すると、まず裏面に配された大型ディスプレイに“普通のケータイとの違い”を感じる。バイクの計器をイメージした円形のディスプレイは、本体をバイクに取り付けた際に、ナビ画面などを表示するデバイスの1つとして機能する。
“1つ”とわざわざ断ったのは、ノブレス携帯が「正面と裏面のディスプレイを同時に利用できる」からだ。このユニークな機能を実現するために、NECは新機構のヒンジを採用した。このヒンジは通常の折りたたみの動作に加え、ヒンジ自体が横方向に伸縮することで、ボディを一部のスマートフォンのように“横スライド”することができる。
「NECは折りたたみ端末を日本で先駆けて発表し、その技術に関しては自信を持っています。そして、折りたたみ端末の“次の形”を考え、またバイクユーザーの視点に基づいたデザインをした結果、ノブレス携帯が生まれました」(NEC モバイルターミナル事業部クリエイティブスタジオの塩坂純代主任)
そのほか、グローブを付けていても操作しやすいタッチパネルのインタフェースや、ヘルメットの音声デバイスと連動した走行中の通話、ライダー間のBluetooth通信、さらにはETCといった、バイクユーザーにとって生ツバモノの機能が想定されているノブレス携帯――。デザインを担当した、NECデザイン&プロモーションの辻圭介氏(デザイン事業本部ソリューションデザイングループ)自身がバイク乗りだからこそ生まれた、ライダーの“かゆいところに手が届く”携帯といえる。
ところで「ノブレス携帯」という名前はアニメとのコラボレーションによって付けられたもので、もともとは別の名前が付いていたそうだ。アニメに登場するなどとは露とも思われていなかった“ライダー向けケータイ”は、どのように「ノブレス携帯」になったのだろうか。
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