HTCは10月7日、台北市内で新製品のローンチ・パーティーを開催した。アジア市場への投入が発表された2製品のうち、日本市場ではソフトバンクモバイルが「HTC Desire HD」を11月上旬に発売するとアナウンスしている。同時に発表されたスライド式キーボードが付いた「HTC Desire Z」は、現在のところ、日本ではどのキャリアからの発売も予定がない。また2製品に合わせて発表したユーザーの設定情報や端末の追跡サービスを行うクラウドサービスの「HTC Sense.com」については現在ローカライズの作業中で、日本市場でも近々に利用可能となる模様だ。
HTC Desire HDはAndroid2.2、Snapdragon 1GHzを搭載するハイエンドのスマートフォン。すでに出荷されているHTC Desireが3.7インチのディスプレイを搭載していたのに対して、4.3インチとより大画面となっているのが特徴。800万画素の静止画、720pのHD動画の撮影が可能だ。解像度自体は両者とも480×800ドットと変わらないが、Webブラウザや動画を見た印象はかなり異なる。HTC独自のホーム画面やユーザーのインタラクション層「HTC Sense」はバージョン2.0となり、さまざまな改良が施されている。
HTCは端末の使い勝手を向上するクラウドサービス、「HTC Sense.com」についても概要を説明した。Sense.comはコンタクト情報やSMS、地図上に付けたマークなどをクラウドに保存するサービス。例えば、HTCの端末を乗り換えたときにも、それまで使っていたものと同じコンタクト情報やSMSのメッセージが見られるという(日本のソフトバンクのMMSには非対応)。
PCのWebブラウザ上で地図上にマークを付けておけばそれがスマートフォンでも同じように見える、Googleマップに似た機能を備える。また、端末の追跡サービスも提供し、周囲に見当たらないという場合に呼び出し音をPCから鳴らしたり、地図上で端末の位置を表示するといったことができる。それでも端末が見つからない場合には、端末上のデータのリモート消去も行える。
Sense.comは、Googleマップ、Gmailのコンタクト管理などと重なる部分もあるが、容量消費が大きいメールサービスなどストレージ系のクラウド市場に乗り出すというよりは、テキスト系の情報、メタ情報を端末間で共有あるいは転送するためのサービスと言えそうだ。
今回台北で行われたローンチ・パーティーは過去最大規模という。本国の台湾をはじめ、香港、マレーシア、フランスなどでHTCの端末を提供するキャリアらが集まり、新製品のローンチを祝うと同時に、これまでのHTCとの協業に謝意を表した。ソフトバンクモバイルの孫正義氏は都合により欠席となっていた。
日本の家電メーカーも含め旧来の携帯電話ベンダが苦戦する中、HTCは端末出荷台数を順調に伸ばしている新興勢力の1社。いまやスマートフォン市場全体で見ても9.4%のシェアを持つという。DigiTimes.comが台湾の部品メーカーの情報を元にまとめた出荷台数の推移・予測でも、2010年第3四半期のワールドワイドでのHTCの出荷台数は700〜800万台、第4四半期で900〜1000万台と予想されていて右肩上がり。アップルの第4四半期の出荷台数は1100〜1200万台と予想されていて、iPhoneに肉薄する勢いだ。
欧州、北米のスマートフォン市場でブランドを確立した現在、HTCはアジアでの足場を固めつつある。ピーター・チョウCEOによれば、アジア圏でのHTCのビジネス指標は前年比200%という。破竹の勢いとも言える同社の快進撃に対して、同郷のキャリアからは「ピーター・チョウCEOは台湾の誇り」と讃えられ、マレーシアのキャリアであるMaxisのCEO、サンディプ・ダス氏は「そうではなくアジア全体の誇りだ。なぜなら、これは西洋からではなく、東洋から始まったことだから」とまで賞賛していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.