光のスピードで、Mac OS Xも進化――“Mountain Lion”は、未来へと駆け上がる(1/3 ページ)

» 2012年02月16日 22時31分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 スマートフォン/タブレット市場がそうであるように、今やPC市場もAppleがけん引役になっている。PCの世界における技術革新や新たなユーザー体験の多くをAppleが生み出し続けており、「MacBook Air」や「iMac」など同社のラインアップは、PC市場を成長させる原動力になっている。

 PC市場におけるAppleの存在感と貢献の大きさは、数字にも表れている。Appleは直近の四半期に520万台のMacを販売しており、Mac OS搭載機の市場規模は約6300万台に達した。さらに注目すべきは成長率だろう。Macはこの四半期に対前年比26%の成長をしているが、他のPC市場の成長率は0%である。このような傾向はここ数年ずっと続いており、過去23四半期を通じて、MacはPC市場の平均よりも高い成長率を維持している。利益率の面で見ても、AppleのMacは、Windowsを搭載する他のPCよりも上だ。

 AppleのMacが、iPhoneやiPadと同じように好調を維持し続けているのは、他社よりも優れたユーザー体験を追求し、進化し続けているからだ。とりわけ昨年登場したMac OS X Lionでは、iPhone/iPadで培った「モバイル」と「クラウド」の技術革新とノウハウを存分に生かし、パーソナルコンピューターの理想に近づく大きな進化を遂げた。Mac OS X Lionはわずか半年で1900万のMacに導入され、総稼働数の30%を占めるに至った。これはAppleにとっても最速のスピードでの普及になっている。

Photo Mac OS X Mountain Lion

 そのような中で、Appleは再び“Macの進化”に拍車をかける。Mac OS X Mountain Lionの発表である。同OSはLionに100以上の新たな機能を加えて登場する。2月16日に開発者向けバージョンを公開し、一般ユーザー向けには、2012年の夏にリリースする。

 筆者はこのMountain Lionを、いち早くプレビューする機会を得た。そこで今回は同OSの進化のポイントを見ながら、その魅力と可能性についてリポートしたい。

Mac OS Xも、iCloudと密結合

 先代LionはUIデザインを大きく変えて、Mac OSが“モバイルとクラウドの時代に最適化されたOS”に舵を切った象徴的なメジャーバージョンアップだった。新たなMac OSの礎は、Lionにおいて構築されたと見ていい。そのため今回プレビューされたMountain Lionでは、Lionで示された世界観をさらに強化する着実な進化が行われている。

 Mountain Lionにおける進化のポイントは、iPhone/iPadなどiOS端末が先行していた機能やUIデザインの取り込みだ。

 その筆頭にくるのが、Appleのクラウドサービス「iCloud」との連携強化だ。iCloudは現在(2012年2月16日時点)約1億のアカウントが存在しており、Apple製品同士を連携させる紐帯(ちゅうたい)として重要な役割を担っている。

Photo Mountain Lionは、iCloudとOSレベルで統合された。それによりDocuments in the Cloudをはじめ、様々なiCloudの機能・サービスがOS側から利用できる

 Mountain LionはiCloudと深く連携する仕組みになっており、iPhoneやiPadと同様に、OSをインストールしてすぐにiCloudのアカウントを設定するようになっている。これによりiCloudに接続した複数のApple製品で、パーソナルな情報や各種設定、コンテンツの共有が簡単にできるようになる。またiOSで先行していたiCloudの「Documents in the Cloud」にも対応。Mountain LionとiOSのどちらからでも、iCloud上の文書をリアルタイムに共有・編集できるようになる。Documents in the Cloudへの対応は、今のところPagesやKeynoteなどApple製アプリが主であるが、今後Appleでは同機能のAPIを公開して、他社製のアプリでも対応を促していく方針だ。

iPhone/iPadに近づいたUIデザインと機能

 機能面やUIデザインでも、Mountain LionはiPhone/iPadにかなり近づいた。

 まず、新たな機能・サービスとして、Mountain Lionは「Message」や「リマインダー」「メモ」に対応。iOSとの機能面での差を埋めるとともに、iPhoneやiPadとの連携性を高めた。

Photo Messageでは、iOSの「iMessage」と同様にテキストメッセージやマルチメディアデータの交換ができる。相手への配信確認や、相手が入力中かどうかの確認も可能。FaceTimeとの連携機能もある

 この中で特に便利になりそうなのが、Messageの搭載だろう。これはiPhone/iPadの「iMessage」と同じ機能で、Apple製品のユーザー同士でテキストや写真・映像などの交換を簡単に行えるもの。Mountain Lionでは従来のiChatを廃してMessageを新たに搭載することで、Macユーザー同士はもちろん、爆発的に増加しているiPhone/iPadユーザーと手軽にコミュニケーションが取れるようになる。また、同一のiCloudアカウントで登録しておけば、Mac上のMessageと(iPhone/iPadの)iMessageの両方にメッセージが届くため、時と場面に応じて最適な端末が使える。

 さらにMessageと、Appleのビデオ電話サービス「FaceTime」はシームレスに連動しており、Message上でのチャットからFaceTimeでのビデオ電話にすぐに切り替えることができる。これまでMac OSとiOSでバラバラに搭載していた“Appleの次世代コミュニケーションサービス”が今回1つにまとまることで、その使い勝手はすこぶるよくなるだろう。これはSkypeなど他のコミュニケーションサービスに対する優位性になりそうだ。

 「リマインダー」と「メモ」は、従来はiCalやMailなど別のアプリ内に実装されていた機能を、iOSの仕様に合わせて単独アプリとして切り出したものだ。UIデザインもiOSのアプリに近いものに作り直され、iPhone/iPadユーザーにとって使いやすいものに仕上がっている。むろん、どちらもMac上から作成・編集したものをiCloudを通じてiPhone/iPadで共有できる。

PhotoPhoto 「リマインダー」と「メモ」は、Mountain Lionで単独のアプリになった。これらもiCloud経由でiPhone/iPadとシームレスに連携する
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