技術オリエンテッドなHTCが“カワイイ”に目覚めた日――国内向け「HTC J」を生んだ新戦略KDDI×HTC(1/4 ページ)

» 2012年04月20日 22時00分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo 「HTC J ISW13HT」

 HTCは4月20日、都内で新製品発表会を開催し、KDDI向けのAndroid 4.0搭載WiMAX対応スマートフォン「HTC J ISW13HT」を発表した。会場にはHTC CEOのピーター・チョウ氏やCPO(最高商品責任者)の小寺康司氏、HTC NIPPON代表取締役社長の村井良二氏らが登壇し、HTCで初めて、特定の市場向けに企画・設計されたHTC Jの概要を説明した。

 また、個人的にもチョウ氏と交友関係が深いというKDDI代表取締役社長の田中孝司氏もトークセッションに参加。auにHTC製スマートフォンがラインアップされたいきさつや、HTC Jが“国内向け”として誕生した経緯などが明かされた。


“日本専用”を決断させたKDDIのネットワーク品質

photo HTC CEOのピーター・チョウ氏

 「今や多くの人々がスマートフォンに頼って生活しており、人生の特別な瞬間をスマートフォンとともに迎え、そして共有している」と切り出したチョウ氏は、最も身近なデバイスに成長したスマートフォンにとって「これからは美しいデザインであることがもっとも重要になってきている」と続けた。

 同社はデバイスのデザイン性に注目し情熱とエネルギーを注いでいるが、それは単にハードウェアの外観だけでなく「デバイス本来の機能をユーザーが迷わず使えるようにすること」(チョウ氏)も重要であると補足。使いやすいユーザーインタフェースを提供することも「徹底的に追求しなくてはならない」と意気込みを見せる。

 チョウ氏によるとテクノロジー業界は今、ファッション業界や自動車産業だけでなく、さまざまな色や素材、文化、そして美しい物からインスピレーションを受けている。なかでもHTCは日本の市場そのものから、「ユニークな文化とスタイル感覚など、多くのインスピレーションを与えられた」といい、その日本的な感覚を捉え、最先端技術と美しいデザインを組み合わせた製品を作りたいと考えて開発したのが、今回発表されたHTC Jだという。

 またKDDI向けに開発された理由については、「最先端技術と美しいデザインを生かすには最高のネットワーク環境が必要であり、それ無しではすばらしいユーザー体験を得ることができない。それを提供してくれたのがKDDIの田中社長だ」(チョウ氏)と説明。そのKDDI田中氏とチョウ氏は、個人的な交友関係も深いという。

田中社長とチョウCEOの友情を深めた幻の小篭包

photo HTCのチョウCEO(写真=左)と、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏(写真=右)

 チョウ氏とのトークセッションに参加したKDDIの田中氏は、HTC製品を強く意識したのは数年前にさかのぼると、当時を振り返った。

 「投資家に会うために海外を回ると、投資家の多くはHTCの端末を使っていて、欧州のファイナンシャルセンターにはHTCの広告がたくさん出ている。そんなことからHTCってメジャーなんだな、と。そこで友人からHTCのスマートフォンを借りてみると、動きが非常にスムーズで気持ちよく動く。これはぜひ日本にも持ってきたいと、2年ちょっと前くらいに台北にあるピーターのオフィスに押しかけた」(田中氏)

 その際チョウ氏は、「日本の市場はちょっとユニーク過ぎる」とグローバルメーカーのトップらしい反応を見せたという。昼の会談を「オフィシャルな雰囲気で」(田中氏)終えたのち、チョウ氏は田中氏を食事に招待する。「台湾だし小籠包でも……と期待していたが、ピーター(・チョウ氏)は日本料理店に連れて行ってくれた。なぜか夜の台北で日本料理を食べ、お互い日本酒が進むうちに仲良くなって、それ以来は気心が知れた友人」(田中氏)

 一方のチョウ氏も、「田中さんは非常に熱心に日本でのビジネスについて語ってくれた。いろいろ話し込んでいるうちに時間が迫ってしまい、小籠包の店には連れて行けなかった(笑)。結局、近場の日本料理店で夕食をともにしたが、そこでも技術的なことやこれからのイノベーションについて話し合った」と振り返る。その場でも「テノクロジーの話題ばかりだった」(チョウ氏)という。

 その後HTCは、2011年2月に「HTC EVO WiMAX ISW11HT」をKDDIに供給。その年の9月には「HTC EVO 3D ISW12HT」がauのラインアップに加わる。

photophoto 「HTC EVO WiMAX ISW11HT」(写真=左)と「HTC EVO 3D ISW12HT」(写真=右)

 田中氏によるとHTC EVOは先進的なギーク層からは非常に評価され、満足度も高かったという。しかし、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信などの国内向けの定番機能がないほか、ボディカラーもブラック1色など、幅広いユーザー層に受け入れられる製品とは言えなかった。

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