目指したのは“Best of Google”なデバイス――Motorolaに聞く「RAZR M」AXGPでさらに快適(1/2 ページ)

» 2012年10月31日 14時41分 公開
[太田百合子,ITmedia]

 ソフトバンクモバイルの2012年冬モデルとして発売された「Motorola RAZR M 201M」は、同社が初めてラインアップするMotorola Mobility製のスマートフォンだ。またMotorola MobilityがGoogle傘下となってから初めて世に出すスマートフォンでもある。グローバルではすでに9月に発表が行われているが、日本向けモデルはボディカラーやおサイフケータイなどの仕様が異なっている。

photophoto 「Motorola RAZR M 201M」

 国内発表に合わせて来日したMotorola Mobility カントリー・マーケティング バイスプレジデントのジャン=ピエール・ル・カネリエ氏と、モトローラ・モビリティ・ジャパン代表取締役社長の鈴木寛氏に、新生Motorolaが日本市場にかける思いと、それがどう製品開発に生かされているのかを聞いた。

photo Motorola Mobility カントリー・マーケティング バイスプレジデントのジャン=ピエール・ル・カネリエ氏(写真=左)と、モトローラ・モビリティ・ジャパン代表取締役社長の鈴木寛氏

「Best of Google」を目指すのがMotorolaとしての使命

――(聞き手:太田百合子) 今回の「Motorola RAZR M」は、Motorola MobilityがGoogle傘下となって初めて世に出す製品です。買収による影響は開発面でどう表れていますか?

photo Motorola Mobilityジャン=ピエール・ル・カネリエ氏

ジャン=ピエール・ル・カネリエ氏(以下、カネリエ氏) Googleはこれまで、イノベーションをアイデンティティに成長してきた会社です。我々もそのDNAを受け継いで、今回はイノベーティブであるということにこだわって製品開発を行いました。具体的にはいろいろありますが、まず主眼に置いたのは、傘下に入ったことでユーザーから期待される、“Googleのサービスを最良の状態で使える端末”つまり、Best of Googleを目指すということです。Googleでできることを、我々がいち早くモバイルでもできるようにしていく。例えばRAZR Mには、最高のモバイルブラウザである「Chrome」を搭載しています。これによってユーザーは、PCの「Chrome」で保存しているブックマークをモバイルでも利用できる。このような素晴らしい体験を、いち早く提供していきたいと考えています。

―― 今回はスマートフォンをPCのように活用できる「Webtop」など、これまでの製品で話題になってきた機能が搭載されていません。これもGoogle傘下となったことの影響でしょうか?

カネリエ氏 「Webtop」は大画面でスマートフォン内のコンテンツを管理できる機能ですが、このような独自機能やサービスを優先すれば、一方で新しいOSやサービスへの対応が遅れる要因にもなります。今回は「Best of Google」のような、コアとなる基本的な機能をより速く展開することに重きを置いて開発を進めました。

 それだけ、Webtopのような独自機能のプライオリティが低くなったということです。OSについては、当初Android4.0を搭載していますが、これもできるだけ速いタイミングで最新OS(Android 4.1)にアップデートしたいと考えています。

―― 前モデル「MOTOROLA RAZR IS12M」はauから発売されましたが、今回はソフトバンクモバイルからの発売となりました。これはどのような理由からでしょうか?

カネリエ氏 我々が新製品をマーケットに投入するときには、キャリアとの緊密なコラボレーションが欠かせません。その意味で今回は、ソフトバンクモバイルという良いパートナーに恵まれたことを、とてもうれしく思っています。

 ソフトバンクモバイルは、「SoftBank 4G」(AXGP)という素晴らしい4Gネットワークを持っています。我々は1年半ほど前からアメリカでLTEの実証実験に携わってきました。実際に使ってみるとよく分かりますが、3Gと4Gでは大きな違いがある。4Gネットワークは私たちに、本当に素晴らしい体験をもたらしてくれます。日本のユーザーにも、それをいち早く体験してもらいたい。そういう意味でソフトバンクモバイルは、現時点で最良のパートナーであると考えています。

―― SoftBank 4Gは世界でもまだ例の少ない、2.5GHz帯を使ったAXGPのネットワークです。御社の製品でAXGP、またAXGPと互換性のあるTD-LTEのネットワークに対応したものはこれまでにもあったのでしょうか?

photo モトローラ・モビリティ・ジャパン鈴木寛氏

鈴木寛氏(以下、鈴木氏) いえ、RAZR M 201Mが初めてです。ソフトバンクモバイルから出すにあたって、新たにAXGP対応モデルとして開発しました。AXGP対応は、Motorolaとしても初めてのチャレンジになります。

 RAZR M 201Mは、SoftBank 4G(AXGP)の2.5GHz帯に加えて、1.5GHz帯を使う3Gの「ULTRA SPEED」(DC-HSDPA)にも対応しています。もちろん、プラチナバンドの900MHz帯とベースとなる2.1GHz帯、さらに国際ローミング用のGSMはクアッドバンド(850/900/1800/1900MHz)に対応させました。こうしたアンテナのチューニングは本当に大変でした。

 ただ、我々がそういう苦労をしてもあまりあるくらい、SoftBank 4のネットワークは素晴らしい。実際に体験していただければ分かりますが、カバレッジにしてもスピードにしても、素晴らしいネットワークです。そして我々の製品は、その素晴らしいSofBank 4Gのネットワークを、存分に活用でき、楽しめるものになっています。

―― アンテナ関連でもう1つ質問です。9月に発表された北米モデルはNFCを搭載していますが、日本向けではそれに変えてFeliCaを搭載していますね。これも御社として初めての試みではありませんか?

鈴木氏 はい、そうです。FeliCa対応もアンテナのチューニングを難しくする要因の1つでした。NFCとFeliCaではチップはほとんど同じですが、アンテナがまったく違うんです。これも苦労しましたが、FeliCaを搭載したことで日本の市場に即した端末に仕上げることができてとても良かったと思います。

カネリエ氏 “Best of Google”を軸としたグローバルな展開はもちろん重要視していますが、我々はそれぞれの市場にあわせた個々の取り組みも重要だと考えています。今回のFeliCa搭載もそうした取り組みの1つです。今後もユーザーのニーズが高く、より多くの人に使ってもらえるようなテクノロジーを、それぞれのマーケットに合わせて適時搭載していきたいと考えています。

iPhone 5よりも広い 画面率68.3%へのこだわり

―― 今回の製品は、大きさにも特徴があります。4.3インチのディスプレイを搭載しながら、とてもコンパクトに仕上がっている。このサイズへのこだわりを教えてください。

カネリエ氏 これまでの「RAZR」を使っているユーザーから、「ディスプレイのサイズはいいけど、本体が大きすぎる」という声が寄せられていました。そこで、4.3インチというディスプレイサイズはそのままに、ディスプレイ周囲の縁を最小限にして、サイズを小さくすることに挑戦したのです。

鈴木氏 端末前面におけるディスプレイの割合を、我々は“画面率”と呼んでいますが、RAZR Mは68.3%あります。これは「iPhone 5」よりも大きい数字です。映像などを見るとより実感できますが、ほとんど全面がスクリーンのように見えるほど、縁が狭い。そして手にしていただくと分かりますが、ものすごく軽くて持ちやすいです。

 これまでの製品は強度を持たせるため、アルミフレームの上にさらにプラスチックを重ねていました。今回はコンパクトさを実現するために、あえてアルミ素材をむき出しにしています。そのおかげで、4.3インチのディスプレイを搭載するモデルの中では、最も縁が狭くコンパクトで、片手でも操作しやすいスマートフォンに仕上げることができました。さらにブラックモデルの背面には、鋼鉄の約5倍の強さを誇るKEVLARファイバーをコーティングして、ボディの強度を担保しています。

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