PCやプロジェクターの画面を撮影するだけで、そこに表示されている資料の元データをスマートフォンやタブレット(スマートデバイス)に取り込める――。こんな直感的な操作のファイル転送を可能にする技術を富士通が開発した。
スマートデバイスの高機能化に伴い、これまでPCで行ってきた作業をスマートデバイスで行う機会が増えているが、そのためには、スマートデバイスとPCとの間でデータをやりとりする必要がある。データを共有するには、端末間をケーブル接続したり、Wi-Fiを利用したり、クラウドサービスを利用したりといった方法があるが、今回の技術開発を手がけた富士通 メディア処理システム研究所 イメージシステム研究部 主任研究員の田中隆太氏は、いずれの方法にも課題があると話す。
「ケーブル接続でのやりとりは設定が煩雑で、Wi-Fi経由の場合は設定時に多数のアクセスポイントがリストアップされて利用者が困惑する。クラウドサービスを利用したデータの共有は、セキュリティ面に不安が残る」(田中氏)。こうした背景から生まれたのが、今回発表されたファイル転送技術だ。
使い方はとても簡単。会議中にプロジェクターに映ったプレゼン資料をスマートデバイスに保存したければ、その画面をスマートデバイスのカメラで撮影するだけで取得できる。PCの画面に表示された営業資料が必要なら、その画面をカメラで撮影すればいい。同じネットワーク上にある、専用アプリをインストールしたデバイス間なら、こんな簡単操作で必要なデータを取得できるのだ。
この仕組みの秘密は、PCとスマートデバイスにインストールしたアプリに仕込まれている。PC側のアプリには、端末内に仮想サーバを構築する機能と、そのPCのIPアドレスやSSIDを人間の目では認識できない信号に変換して画面に映す機能、PCの画面上でどのファイルがアクティブになっているかを監視する機能が用意されている。
一方、スマートデバイス(Android)のアプリには、撮影したPCの画面に表示された信号からIPアドレスやSSIDを検出する機能、ネットワークを経由して検出したIPアドレスを持つPCにアクセスし、ファイルを要求する機能が搭載されている。
この仕組みを利用すると、どうなるのか。まず、PCの仮想サーバ内にあるデータを開いて画面に表示すると、そのデータと一緒にPCのIPアドレスとSSIDが目に見えない信号という形でデスクトップに表示される。
このPCの画面をスマートデバイス内のアプリを通じて撮影すると、撮影した映像からIPアドレスとSSIDを検出し、ネットワーク上のどのPCなのかを割り出して、そのPCにファイルをリクエストする。スマートデバイスからリクエストを受けたPCは、画面上でアクティブになっているファイルをスマートデバイス側に送信する――。こんな流れでファイルの共有を実現しているのが、今回の技術だ。
なお、同じ仕組みを利用して、ネットワーク上の任意のPCに、スマートデバイス内の画像ファイルなどを転送することも可能だ。
富士通はこの技術を、2月25日から29日にかけてスペインのバルセロナで開催されるMobile World Congress 2013で披露する計画。今後は、映像から携帯端末に配信する際の通信速度を改善し、2014年度中の実用化を目指す。
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