スマホ向け無料通話・メッセージアプリの現状を探る(後編):世界的な競争はこれから(1/3 ページ)

» 2013年04月24日 04時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 前回は、近年注目されている無料通話・メッセージアプリについて、日本で人気を博しているものを中心に、どのような機能やサービスを備えており、どのような点が人気を博すポイントとなっているのかについて説明した。

 後編となる今回は、無料通話・メッセージアプリがモバイルコミュニケーションにどんな影響を与えてきたのかを検証するとともに、今後どのような展開を迎えようとしているのかについても考察してみよう。

大きなインパクトを与えた“無料通話” だがその実態は?

 無料通話・メッセージ系のアプリがスマートフォン市場に与えた影響はいくつかあるが、“携帯電話の通話が無料でできる”という、実に分かりやすい価値が大きなインパクトを与えたことは間違いない。同種のアプリが爆発的に普及した原動力でもある。

 「LINE」が日本で急速に知名度を高めた要因の1つとして、2011年に“無料通話ができる”ことをテレビCMで展開したことが挙げられる。また後発の「comm」が急速に会員数を集めたのにも、“高品質の無料通話”を前面に押し出したCM展開を実施したことが大きな影響を与えたとされている。

photophoto 後発のcommが注目されたのも、“無料通話が高品質”という点を訴求した影響が大きい(2012年11月)

 もしLINEに無料通話機能が搭載されていなかったら、ここまで急速な普及にはつながらなかっただろう。“タダで電話がかけられる”という分かりやすい価値が、多くの人の注目を集め、普及に大きく貢献したのは確かだ。

 有料だったものが無料になることのインパクトは大きい。IPを使った無料通話サービスに対し、(有料の)携帯電話サービスを提供するキャリア側の警戒感が非常に強かったのも事実だ。KDDIは2010年、当時のSkype Technologyと提携して「Skype au」を提供した際、代表取締役社長の田中孝司氏はSkypeを「禁断のアプリ」と呼んでいたことがそれを現わしている。また一部キャリアの定額モバイルデータ通信サービスにおいては、かつて無料通話を実現するVoIPの利用をできないよう、制限をかけていたこともあった。

photophoto 2010年にKDDIが当時のSkype社と提携した際、田中氏はSkypeのことを“禁断のアプリ”と呼んでいた(2010年10月)

 “無料通話”がユーザーだけでなく業界全体に与えたインパクトは非常に大きい。だが実際のところ、この手のアプリにおいて無料通話機能の利用率はそれほど高いわけではない。スマートフォンのコミュニケーションに大きく変化を与えた要素は、むしろ通話以外の部分にある。

リアルタイム性が大きな影響を与えたトーク機能

 現在、無料通話・メッセージアプリで最も利用されている機能は何かというと、テキストでチャットのように会話をする、いわゆる“トーク”機能だ。「050 plus」など通話専用に作られたアプリは別として、LINEやカカオトークなど比較的早い段階から提供されてきたメッセージアプリは、元々IP電話の機能を搭載していなかったものが多い。

 なぜトーク機能が人気を博したのかというと、メールより素早くメッセージが届き、よりリアルタイム性の高い会話ができるためだ。メールでは送信して相手に届くまでタイムラグがあるが、無料通話・メッセージアプリのトーク機能は、PCのインスタントメッセンジャーやチャットと同様に、文章を送信するとほぼリアルタイムで、相手にメッセージが届く。

 このリアルタイム性を支持したのが若年層である。フィーチャーフォンの時代から若年層は、プッシュ型のキャリアメールで短い文章を日に数十通という単位で送受信するなど、PCのメールとは大きく異なる使い方をしてきた。2000年代後半、若年層が一定時間以内に携帯電話のメールを返信しないと友達とみなさない“15分ルール”を作ってしまうことが社会問題となったように、若年層のコミュニケーションにおいて、友達とのつながりが保てるリアルタイム性は、非常に重要な要素を占めている。

 そしてもう1つ、若年層から支持を集めた要因とみられるのが、複数人で同時にトークができる“グループトーク”の機能だ。これも、“プロフ”など、かつて若年層を中心に人気を集めたフィーチャーフォン向けコミュニケーションサービスの利用傾向を振り返れば分かりやすい。こうしたサービスが人気を集めたのは、不特定多数で話をするのではなく、親しい友人同士で繋がりを持つために使われたためと言われている。それだけに、友人同士による閉じた空間を作りやすいグループトーク機能の特性は、若年層に強く響いた。

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