スマホ衝突防止ケースで知る日米スマホしぐさの違い:お国が違えば考え変わる

» 2014年01月21日 17時17分 公開
[長浜和也,ITmedia]

歩きスマホは万国共通の問題

歩きスマホ衝突防止ケース「Flicc」を開発しているNortron Technologies CEOのコナー・ハリー氏

 正面からスマートフォンの画面を見ながらズンズンズンズン向かってくる人に出くわさない日はない。そんな感じで「歩きスマホ」なユーザーが増えてきた日本では、歩きスマホによる事故やトラブルを防ぐための啓蒙活動が盛んだ。歩きスマホの増加はなにも日本だけのことではなく、世界中で共通しているという。

 日本はとても神経質なほどに携帯電話利用についてユーザーに制限を求めてきた経緯があり、優先席での利用禁止はもとより、車内で音声通話をしているユーザーを見かけることがほとんどない。一方、海外ではスマートフォン利用の規範意識は非常に“ゆるく”、電車の中での音声通話も普通に見かけるし、音声通話をしているユーザーを注視してとがめることもない。

 そういうわけで、日本の歩きスマホユーザーは「悪いと分かっちゃいるけれどいま止められない止まらない」という感じでこっそりと使っているが、海外の歩きスマホユーザーは「いま私は歩きながら使いたいんですけどなにか」と正々堂々としているだけに、スマートフォンの画面を見ながらでも歩く速度は速い。ガタイが大変よろしい欧米人だけに、スマートフォンの画面を見ながらズンズンズンズン向かってくると、ぶつかったときの破壊力はそれはそれはすごそうで、ちょっとした恐怖を覚えたりする(経験談)。

マナーに訴える日本。ぶつからないようにする米国

 実際、米国でもスマートフォンの画面を見ながら歩いていた人が別な人にぶつかって怪我をするようなトラブルが少なからず起きていて、米国でも“歩きスマホ”を問題とする動きが出てきている。日本では、この問題を「マナー」の観点から、「歩きスマホをやめましょう」とユーザーを啓蒙する方向で解決しようとしているが、米国の大学生は、「歩きスマホでもぶつからない工夫をしましょう」という方向で解決を目指している。

 コロンビア大学の所属しつつ「Nortron Technologies」というベンチャー企業を立ち上げたCEOのコナー・ハリー氏と主任技術者の荒牧嗣夫氏は、iPhone 5/iPhone 5sで「歩きスマホ」の衝突を防止するカバーとソフトウェア「Flicc」を開発して、2014年の前半にリリースする予定だ。

メインカメラで得た映像をディスプレイに表示して半透明のレイヤーでアプリを利用するアプリは日本でも登場しているが、Fliccは鏡を組み込んだケースで通常の体勢でも前方の映像を表示できる

 Fliccの仕掛けはシンプルで、角度を調節できる鏡をiPhone 5sのカメラレンズ位置に合わせてカバーに取り付けて、その鏡から得た映像を“反転”して表示し、その上に半透明のレイヤーを重ねてアプリを動かすソフトウェアを用意した。歩きながらスマートフォンを使っている状態でユーザーの前方の状況を鏡で捉えてスマートフォンのディスプレイに表示し、その映像の上に半透明のレイヤーを重ねてその上でアプリを使うことで、歩きスマホでも衝突や転落などのトラブルを防ぐという考えだ。

 半透明のレイヤーで動作するアプリはソフトウェアに組み込んだ専用のものになる。現時点で動作していたのはメールアプリとリアルタイムメッセージソフト、Webブラウザに限られている。ハリー氏は、今後の開発で利用できるアプリの種類を増やすとともに、前方の映像を通常のアプリ画面の片隅にピクチャーインピクチャーの形で表示するデザインも検討している。

現在、Fliccで仕えるアプリはWebブラウザやメッセンジャーなど種類が限られている。今後、使えるアプリの種類を増やし、前方映像の表示方法も複数選べるようにする計画だ

とりあえずいますぐ解決するか時間をかけて根本的に解決するか

 ハリー氏は、Fliccを日本でも出荷すべく、日本の関係者にも提案しているが、多くの場合、「歩きスマホの存在を肯定して利用を増長することになる」という否定的な意見が返ってくるという。ハリー氏も、歩きスマホの問題を解決するにはユーザーの意識を変えていく必要があると認識している。しかし、その一方で、現実に歩きながらスマートフォンを利用するユーザーがいる以上、その状態における危険を取り除くことが先決(そして、平行してユーザーの意識を変えていく)というのが、ハリー氏の意見だ。

 マナーに訴えてユーザーの考えを変えていくことで歩きスマホの危険性を社会全体で下げていく日本のアプローチとは異なる、まずそこにある危険を解決して、その上でユーザーの意識を変えていこうとする米国のアプローチという興味深い違いを、ハリー氏のFliccは分かりやすく示しているといえるだろう。

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