第5回 国際自動車通信技術展(ATTT)の開催に合わせて、モバイルとIT、モビリティの融合による技術革新によって開発された商品やサービス、ソリューションを表彰する「ATTTアワード」が発表された。最優秀賞は本田技研工業の「SAFETY MAP」が受賞した。以下に各部門の受賞製品・サービスを紹介する。
応募および推薦があったすべての製品・サービスの中から、特に優れているものを表彰するATTTアワード 最優秀賞は、本田技研工業の「SAFETY MAP(みんなで作る安全マップ)」に贈られた。
SAFETY MAPは、テレマティクスカーナビから収集した急ブレーキ多発ポイントや、警察からの交通事故情報などを地図上に表示するサービス。地域住民もこの地図作りに参加でき、「見通しが悪い」「スピードが出ているクルマが多い」といった善意の書き込みが可能。さらに「そう思う」という同意をボタンで追加でき、見るだけで参考になる“楽しい”危険マップが出来上がった点が評価された。
情報通信技術を用い、安全・環境分野において革新的取り組みとなった製品/サービスを表彰する先進安全・環境技術部門の優秀賞には、ボルボ・カー・ジャパンの「ボルボV40 歩行者エアバッグ」が選出された。
万一の事故の際に、歩行者へのダメージを防ぐための技術、歩行者用エアバッグを世界ではじめて開発し、採用した点を評価。特に高級車ではなく、多くのユーザーの手に届くV40に搭載し、事故の被害者を減らそうという意気込みが感じられたことが理由だ。
法人市場において、ITを活用した革新的サービスやソリューションを提供する企業や部門を表彰するビジネスソリューション部門では、トヨタ自動車の「次世代e-CRB」(evolutionally-Customer Relationship Building)が優秀賞を受賞した。
このシステムは、一般のユーザーの目に触れるものではないが、革新的な発想を具現化したシステムとして評価された。自動車購買とアフターサービスに関する顧客情報、店舗から工場までのパーツや車両に関する情報などを一元管理し、ビジネス効率を高めつつ、無駄や顧客の不快感を排除して、顧客満足度も向上させる仕組みだったことがポイントだ。
スマートイノベーション分野において、情報通信技術を用いたUIまたはUIデザインなどを提供する企業を表彰するUI&UIデザイン部門では、応募作品はあったものの、該当なしという結果になった。
クルマの利用環境、生活、ビジネスシーンにおいて「ワクワク」「快適さ」「便利さ」などの向上に寄与したナビゲーションサービスやクラウドサービスを対象とするナビゲーション&クラウドサービス部門の優秀賞は、スマートバリューの「CiEMS Navi」が受賞。
PCとスマートフォン向けナビアプリをクラウドで連携させることで、ナビゲーションサービスとテレマティクスサービスを融合し、業務の効率化とドライバー支援の機能を提供する本サービスは、コンパクトな専用車載器以外はほぼ汎用の製品が使えるソリューション。多機能ながらも価格は安いため導入のハードルも低く、クルマを業務に活用する多くの企業に役立つ点が評価された。
アプリ市場において先進的かつ画期的なスマートフォン・タブレット向けアプリやコンテンツを対象とするコンテンツアプリ部門の優秀賞は、ゼンリンデータコムとクロスフェーダーが開発した「漫画ドライブ」が優秀賞を獲得した。
漫画ドライブはAR、カメラ、GPS・加速度センサーなどの機能を活用し、助手席の同乗者が漫画のような世界で車窓を楽しめるユニークなアプリ。先進的である一方、日本の「漫画」文化を前面に押し出したデザインが楽しめる点が評価された。運転レベルの判定や走行距離の反映など、同乗者もドライバー気分を味わえる機能があり、子供から大人まで心奪われるアプリとして選考メンバー全員が高く評価した。
モバイル・モビリティの進化を支えるデバイスや通信モジュールを内蔵した革新的なプロダクトを選出するプロダクト&ハードウェア部門の優秀賞はビー・エム・ダブリューの「BMW コネクテッド・ドライブ」。
授賞理由は、最新のテレマティクスとスマートフォン連携を日本市場でいち早く導入したため。スマートフォンを車のリモコンがわりにする「BMW リモートサービス」など、利便性を高める機能を提供しつつ、車載器とスマートフォン向けアプリの両面で優れたデザインを実現、日本企業が中心だった高級車向けテレマティクスの世界に一石を投じた点が評価された。
防災や減災に対し、ITを活用したサービスや技術を提供する企業や団体に授与される防災ソリューション部門の優秀賞は、本田技研工業の「ホワイトアウト予測情報」が受賞した。
ホワイトアウト予測情報は、吹雪などにより視界が極端に悪くなり、方向や地形などが識別できなくなる現象(ホワイトアウト)を予測し、注意喚起をするサービス。ホワイトアウトは、発生すると吹き溜まりが短時間ででき、クルマの通行が不能になる場合があり、とても危険な現象だ。それを事前に警告することで、減災につなげる取り組みが評価された。
選考委員にはジャーナリストの神尾寿氏、林信行氏、西田宗千佳氏、モーターじゃナリスとの岩貞るみこ氏、アプリソムリエの石井寛子氏、角川アスキー総合研究所 主席研究員の遠藤諭氏、イードの自動車メディア、レスポンス編集長の三浦和也氏、アイティメディアのITガジェット統括部長、園部修が名を連ねる。
ATTTアワードの選考委員長、慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏は、講評で「今年は特に具体的な成果がでるサービスや製品がたくさん出てきた」と評価。今回受賞した製品やサービスは、「いずれもゲーム業界でいうところの『ネットが溶けている』製品だった。つまり、製品やサービスの中にネットの力が溶けこんでいた。ネットの良さを生かし、製品やサービスに組み込んでいることが顕著に見られた」(夏野氏)という。
一方で、UI&UIデザイン部門が該当なしとなった点は「ちょっともったいない気がする」と夏野氏。
「デザインに関しては、日本では質実剛健、中身さえあれば、付加価値がなくても売れるという考え方がまだあるのかなと思う。単にかっこいいだけでなく、どれだけ使いやすいかも大事。今後はさらにUIの大切さが重要視されると思っているので、その方面でも期待している」(夏野氏)
第5回 国際自動車通信技術展は、3月14日まで、東京ビッグサイトで開催されている。
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