ユーザーが多いほど効率アップ “生中継”に効く動画配信技術「LTE-Broadcast」とは(2/3 ページ)

» 2016年10月28日 22時00分 公開
[平賀洋一ITmedia]

技術面の優位性は確かだが、魅力的なサービス像が課題

 技術的な実験とはいえ、一般ユーザーが参加する以上、使用感を体験できる最低限のサービスが必要になる。今回は球団の独自カメラによるマルチアングル映像5種類(投手と打者の左右と、バッターボックスの真上から)と、TVバンクが制作するテレビ中継向けの映像1種類(これはスポナビライブと同じでもある)を試作アプリに配信して、その使い勝手などを調査した。

LTE-BroadcastLTE-Broadcast 実験用にカスタマイズされ、専用アプリを搭載したスマホ(写真=左)。目の前の試合をマルチアングルで楽しめた(写真=右)
LTE-Broadcast バッターボックスを真上から見ることも
LTE-Broadcast テレビ中継向けの映像も配信

 解像度はHD(1280×720)で、マルチアングル映像は2画面表示も可能だ。加えて、データスタジアムが配信するボールカウントやスコア、ランナー、球種などの試合情報も用意。映像を含む配信用データは、コアネットワーク上に設置されたQuickPlay製のコンテンツ配信サーバに集約され、再びコアネットワークを通ってヤフオクドームにUターン。球場に増設された実験用のTDD方式基地局から、限定エリア内のスマホに向けて届けられた。

LTE-BroadcastLTE-Broadcast データスタジアムが配信するスコアやボールカウントも配信

 現地で実際に使ってみたが、目の前の試合と配信される映像の遅延は、体感上で10秒程度。目の前の試合をすぐにリプレイで見るという感覚だ。アプリで映像を切り替える際のレスポンスも早く、野球観戦のテンポが崩れるということはなかった。既存のLTE方式で配信するスポナビライブが30秒近く遅延するので、それと比べるとかなりタイムラグは少ない。遅延は今後のチューニングでより少なくなるというが、遅延が1秒程度のデジタルテレビ放送には追い付けないようだ。

ヤフオクドームでLTE-Broadcastの実証実験 ライブ映像のタイムラグ
ヤフオクドームでLTE-Broadcastの実証実験 試作アプリの使い勝手

 もっとも、遅延の少なさだけがLTE-Broadcastの利点ではない。どの程度モバイル回線を効率的に使えたのかは「分析中」とのことだが、同報配信のため、受信するユーザーが増えれば増えるほど、その効果は高まるという。

 LTE-Broadcastの可能性を垣間見た実証実験だったが、サービスの内容がこのままで良いのかはまた別の話で、これはソフトバンクも認めている。アプリの使い勝手や映像の品質が洗練されるのはもちろんだが、そもそも3時間近いプロ野球の生観戦でスマホを持ち続けるのは難しい。

LTE-Broadcast 3時間近いプロ野球の試合時間。スマホをずっと持っているのは現実的ではない

 プロ野球観戦に限れば、観客は応援グッズや飲み物や食べ物を手にするため、シートにはカップホルダーならぬスマホホルダーが必要になるだろう。そうなると専用の電源も欲しくなる。さらに昨今のプロ野球は試合中のファンサービスも豊富で、観客も参加する選手ごとの応援やイニング間のミニイベントなど、長丁場を飽きさせない工夫が盛りだくさんだ。

 注目プレイや選手情報は外野の大型ビジョンでも表示され、スマホを見る間がないときもある。スマホでじっくり見たい映像となると、ベンチ裏やブルペンの様子など、ややマニアックな領域になってしまう。インフラ面の課題が解決しても、どんな付加価値を用意できるかはまた別の課題で、「スタジアム限定で付加価値のある映像を配信する」以外の提案も必要だろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年06月05日 更新
  1. 引越し後にNHKが「勝手に住民票を取得」…これって違法? ネット上に広がる違和感と不信感 (2026年06月01日)
  2. ファミマに「セブン銀行ATM」が導入された理由 進む“ATMガチャ”解消と金融インフラの地殻変動 (2026年06月04日)
  3. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【6月3日最新版】 1万〜3万ポイントの高額還元あり (2026年06月03日)
  4. 光回線業者を装い「ご自宅のコンセント見せて」──“偽装チラシ”の恐怖ネットに、自衛策は? (2026年06月04日)
  5. 「安心して外食もできない」──はま寿司での“洗剤動画”に怒りの声 広報は「到底容認できない」 (2026年06月05日)
  6. KDDIが「au Flex Style」で“とがったスマホ”を扱う理由 単に「SIMフリーを持ってきた」とは違う安心感とは (2026年06月03日)
  7. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  8. 楽天モバイルの「Rakuten Turbo」がホームルーターの満足度1位に、コスパを評価 オリコン調べ (2026年06月03日)
  9. au PAYとPontaのキャンペーンまとめ【6月2日最新版】 最大39%還元や5000ポイント還元あり (2026年06月02日)
  10. Google、「Fitbit Air」の2D CAD図面公開 「カスタムバンドをデザインしよう」 (2026年06月04日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー