両親の同意なしで未成年は契約できない? 筆者が衝撃を受けたある兄弟の悲しい話元ベテラン店員が教える「そこんとこ」

» 2017年06月10日 08時00分 公開
[迎悟ITmedia]

ライター:迎悟

キャリアショップも家電量販店も併売店も経験した元ケータイショップ店員。携帯電話が好き過ぎた結果、10年近く売り続けていましたが、今はライター業とWeb製作をやっています。

連載:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」


 ケータイ屋にとって、未成年者の契約の受付は確認するべきことが多く、とくにケータイ屋歴が浅いと「本当にこの書類で受け付けができるのか」という心配は多いでしょう。

 もちろん、これは契約に来るお客さまも同じで、未成年者だけで契約が可能なのか、どんな書類が必要なのかという問い合わせは一年を通してかなり多い問い合わせでしょう。

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 今回は筆者がケータイ屋になって間もない頃、未成年者の契約でショックを受けたお話をご紹介いたします。

閑散とした平日の量販店の携帯コーナー。こんな日だったからこそ、の来店だったのかもしれません

郊外の閑散とした家電量販店 訪れた2人の兄弟

 当時、筆者がケータイ屋として働いていたのは郊外のバイパス沿いにある家電量販店でした。

 土日こそにぎやかになりますが、平日は電球や電池といった消耗品の買い物に来るお客さまと、夕方以降に暇つぶしの地元の学生がゲームコーナーやオーディオコーナーに来店する程度の、とにかく暇なお店でした。

 この日も「今日の販売台数も0台かな」と考えながら売場で来ないお客さまを待っていたところ、中学生くらいの兄弟がいろいろな携帯のモック(展示機)をいじっていました。

 ここまではよくある風景で、筆者も「どうせ冷やかし、暇つぶしの子供だろう」と考えていたのですが、かなり長い時間電源の入らないモックをあれこれ手に取っては戻すことを繰り返しているので「自分も暇だし、声をかけてみよう」と、声をかけてみました。

 すると、兄弟は「今日は携帯を買おうと思ってきたんです」と返してくれましたので「学生証や保険証、お父さんやお母さんに書いてもらった同意書は持ってきていますか?」と確認し、持ってきていることが確認できましたので「0台回避!」とスイッチをオンにして、彼らの要望を聞きながら一緒に機種選びを始めました。

購入の意思あり 同意書もあり これはいける! しかし……

 どれだけの時間を話していたかはもう覚えていませんが、最終的には当時の高性能な機種を購入することが決まり、在庫もありましたので契約カウンターへご案内しました。

 当時は今ほど未成年者の契約について、レギュレーションが厳しくありませんでした。補助書類として親権者の本人確認書類(免許証等)の用意も必須ではなかったため、この時点で契約は獲得したも同然です。

 兄弟には申込書を書いてもらいながら、彼らから預かった確認書類のコピーを取ったりしている際に気づいたのです。

両親の名前を書く欄には「法定代理人」とも書かれているが…(NTTドコモの同意書)

 用意してもらった親権者同意書に記入されているのは兄弟の両親ではなく、おばあちゃんの名前や連絡先でした。続柄にも「祖母」と書かれていました。

 当時の緩いレギュレーションでも、さすがに両親以外の同意では契約できないと知っていましたので、内心ではかなりがっかりしつつ、申込書の記入を進める兄弟に「同意書は、お父さんかお母さんに書いてきてもらってもいいですか」とお話しし、新しい同意書を持たせ一度お帰り頂きました。

 それから1時間もした頃でしょうか。

 兄弟はお店に戻ってきました。が、一緒にいるのはお父さんでもお母さんでもなく、先ほどの同意書を記入したおばあちゃんだったのです。

おばあちゃんが来た理由

 経験上、一度何かしらの不備があって契約の受付ができなかったお客さまで、どうやっても受付ができない(今回であればおばあちゃんの親権者同意書)にもかかわらずご来店されるのはクレームの類いです。

 覚悟を決め、「同意書は、ご両親のご記入でないと受付が出来ないのですが」とお話ししたところ、おばあちゃんが静かに口を開き、話し始めました。

「この子たちの両親は、先日交通事故で亡くなりました」

「この書類にも書いてある通り、うそではなく本当のことです」

 差し出されたのは兄弟の戸籍謄本。

 彼らの両親と、一番下の弟が少し前に交通事故で亡くなったことがハッキリと書かれていました。

 その上で、未成年の兄弟の後見人がおばあちゃんになっていることも確認できました。

「両親の同意」でなくても未成年が契約できる場合

 未成年者の契約の際に必要となる「同意書」ですが、普段お父さんやお母さんが記入する欄には「法定代理人」や「親権者」と書かれています。

 この兄弟のように両親を亡くしてしまい、祖父母や叔父、叔母といった親戚が後見人になる場合や、未成年が児童養護施設に入所した場合は、こういった同意書の記入が両親でなくても契約を受け付けることが可能になります。

 なぜ、未成年の兄弟の契約におばあちゃんが同意書を記入しているのかという理由が分かり、結果として当日の販売にもつなげることができました。しかし、それからしばらくの間は未成年者の契約を受け付ける際に身構えてしまうようになってしまいました。

 こういうケースに該当する人は少なくあってほしいと思うと同時に、「うちの事情では契約できない」と考えている方もいるのではないでしょうか。

 相談しづらいと考え、ケータイショップや取扱店へ足を運ぶことをためらっている人がいるならば、今回のケースが参考になれば幸いです。

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