「フルMVNO」だからこそできること IIJ大内氏が技術面から徹底解説:IIJmio meeting 19(2/3 ページ)

» 2018年04月22日 08時38分 公開
[房野麻子,ITmedia]

「SIMライフサイクル管理/アタッチトリガー開通」

 SIMライフサイクル管理とは、回線の開通、一時停止、再開、解約などの状態を管理する機能だ。回線開通の際に、SIMを挿した端末がモバイルネットワークに接続したのをトリガーにして、実際の開通処理や課金開始処理を行う。これをIIJ内ではアタッチトリガー開通と呼んでいる。

フルMVNO フルMVNOになって、SIMライフサイクル管理とアタッチトリガー開通ができるようになった

 SIMライフサイクル管理とアタッチトリガー開通を実現するには、HLR/HSSが大きな役割を果たす。ユーザーが最初に端末にSIMを挿し、ネットワークに接続したという情報を検知すると、開通の処理を実施する。その信号を検知すると、BSSが必要な開通処理、課金開始処理を行う。

 これはフルMVNO版の「Japan Travel SIM(JTS)」が採用しており、アタッチトリガー開通を実施している。ただ、最初の接続要求信号を受けると、モバイルネットワーク側から接続拒否信号が返ってくるので、フルMVNO版のJTSの場合、SIMを挿してAPNを設定したら「端末を再起動してください」という指示が出る。この段階では、HSSからULA(このユーザーはまだ正しく登録されていないという信号)が端末に届き、端末は再起動やSIMの抜き差しをしないとネットワークに再度接続しなくなる。再起動したタイミングでは本番の加入者情報が登録されているので、データ接続に必要な手順が進み、最終的にデータ通信ができるようになる。

フルMVNO SIMライフサイクル管理/アタッチトリガー開通機能の手順(LTEの場合)。上の「端末起動」からスタートする

「APN自動設定機能(仮)」は使い勝手が悪い?

 フルMVNOになったことで、端末側のAPN設定なしでデータ接続が可能になった。これは、IoTやM2Mなどで、SIMさえ入ればネットワークに接続できることを想定した機能だ。HLR/HSSから接続先のAPN情報を送ることで実現している。一部まだ開発中だが、フルMVNO版のJTSでは対応している。

 ただし、「用語的にマッチしないと社内で議論があるため(仮)となっている。すごい機能だと思われるが、実はあまり使い勝手がよくない」(大内氏)という。それは、スマートフォンの対応状況がまちまちだから。IIJが調べたところ、iPhoneは対応しているが、テザリングするにはAPNを手動で設定する必要がある。Androidは完全に非対応だ。

フルMVNO APN自動設定機能(仮)の内容。大内氏によると「特別な機能を使っているわけではない」そうだ
フルMVNO APN自動設定機能(仮)の端末の対応状況
フルMVNO iPhoneの場合、APN設定なしでもLTEのマークがピクトエリアに表示されているが、このままだとインターネット共有のメニューはない。有効にするには、APNに手動で「iijmio.jp」を入力。すると、インターネット共有のメニューが出現し、テザリングが利用可能になる
フルMVNO Microsoft Surface Pro LTE Advancedの場合、設定なしの空設定プロファイル(プロファイル名にIIJと入れて、APNやユーザー名などは空欄)を作ると、なぜか接続できる状況になるという

 APN自動設定機能(仮)の仕組みは以下の通り。端末を起動すると、Attach Requestという信号が飛ぶ。通常はAPNの情報をネットワークに渡し、このAPNにつなぎたいというリクエストになるが、今回は端末がAPN設定なしのAttach Requestを投げる。

 認証が終わると、MME(ユーザーや基地局の位置情報管理やハンドオーバー制御などを行う機器)からHSSに加入者情報を要求する信号が飛び、回答として返ってくるULAの中にAPN情報が入っている。JTSの場合は「iijmio.jp」というAPN情報が返されるというわけだ。

フルMVNO

 この仕組みは、大手キャリアではVoLTEで使われているという。IIJのフルMVNOは音声サービスに対応していないので、データ通信に応用した。

 なお、APNを手動で設定する場合、JTSのマニュアルにはユーザー名とパスワードを入力するようになっているが、これらを入れなくても接続できるそうだ。一部のAndroid端末でユーザー名とパスワードを入力しないと挙動が不安定になるものがあるため、マニュアルでは入力するようになっているが、「ユーザー名とパスワードは、面倒だったら入れなくても構わない」(大内氏)

NTTドコモのネットワークをHome PLMNとして接続できる

 「NTTドコモ網をHome PLMNとして接続する機能」は、ライトMVNOとの互換性を重視して実装している機能。Home PLMNは、SIMカードを発行した事業者のこと。

 フルMVNOでの接続は、ドコモネットワークへのローミングとなる。そのため、本来、海外データローミングを有効にする際にローミングオンのスイッチを入れるように、データローミングを明示的に許可する必要があるが、そういった手続きなしにデータ通信ができる。これはSIM内に、ドコモのネットワークをHome PLMNと見なす設定をしているから。

フルMVNO ツールを使ってSIMの中身を表示した画面。SIM内のUSIMというファイルの「EF_EHPLMN」に、ネットワークのPLMN情報を設定できるところがある。そこに44010のドコモの設定を入れて、ローミングをオンにしなくても接続できるようにしている
フルMVNO iPhoneの挙動は若干特殊で、EF_EHPLMNの設定がなくてもローミング扱いにならないという

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