「SMS」(ショートメッセージサービス)は、携帯電話に標準搭載されているシンプルなメッセージングサービスだ。GSM携帯電話の時代から存在する、息の長いサービスだが、LINEなどのメッセージングアプリの普及により、個人間での利用は下火となっている。
ところが、企業がユーザーにアプローチする手段として、SMSを利用するケースが増えているという。
6月14日、AOSモバイルとエイジアが開催したセミナー「SMSのリッチ化でマーケティングはこう変わる ―海外SMS事情から読み解く国内でのSMS活用術とは?―」から、SMS配信サービスの動向を紹介する。
Webサービスのアカウントを作るときや、オンラインバンキングを利用する際に、SMSで送られてきた「ワンタイムパスワード」を入力した経験はないだろうか。
こうした機能の実現に不可欠なのが、企業から多数の個人に対してSMSを送信・管理する「SMS配信サービス」の存在。AOSモバイルが提供する「AOSSMS」もそうしたサービスの1つだ。
ミック経済研究所が2017年に発表した調査によると、国内のSMS配信サービスの市場規模は右肩上がりで拡大している。2016年度には2億2460万通のSMSが配信されている。この配信数は2021年度には26億8800万通と、10倍以上の規模に膨れ上がると予想されている。
SMS配信サービスで国内大手の一角を占めるAOSモバイルも業界全体の動向と同じように配信数を拡大しており、「対昨年(2017年)比で150%程度の伸び」(AOSモバイル シニアコンサルタント 山本雄士氏)という。
SMS配信サービス市場は2011年以降、急激に拡大している。その背景には、大手キャリアとのシステム連携(直収接続)への対応により、ほぼ確実にユーザーの端末に配信できる環境が整ったことがある。
SMS配信の強みは、多くの携帯電話が標準で対応していること。フィーチャーフォンも含めた幅広い端末にアプローチでき、スマートフォンでもアプリのインストールが不要で利用できる。日本の携帯電話番号であれば契約時に本人確認が実施されているので、電話番号の所有者を確認することで、間接的に本人を確認することができる。
また、メールと同様に、受信許諾に応じたユーザーに対し、大量の一斉配信が可能。一方で、メールボックスに埋もれることは少ないので開封されやすく、開封率は100%に近いという。配信コストはメールより高く、電話よりは安い水準だ。
ただし、送信できるコンテンツは、全角で最大70文字の短いテキストのみと制約が厳しい。このため、プロモーション用途での利用よりも、ユーザーへの通知が必要な場面で確実に通知を届ける用途での利用が適している。具体的には、すぐに確認が必要な振込期日や、宅配便の配達予測などの例がある。
例えば、2017年11月にDMM.comに買収され話題となった買い取りアプリ「CASH」では、振込先の案内を含めた通知の全般にSMSを活用し、シンプルで確実な伝達を図っている。
また、電話よりもコストがかからないため、コールセンターの「働き方改革」にも適している。折り返し先の案内や宅配便の再配達の案内をSMSで行うことで、コールセンターの業務効率化が図れるといった例が紹介された。
SMSの誕生から25年以上がたつが、海外ではいまだにテキストメッセージの主流の座を占めている。こうしたSMSをより高機能にした規格として、携帯電話事業者の業界団体GSMAは「RCS(Rich Communication Services)」という規格を策定し、世界中のキャリアで導入が進んでいる。
RCSでは、画像や動画も含めたよりリッチなコンテンツを扱えるようになったのに加え、企業がユーザーとやりとりするために必要な要素が「RCS Business Messaging」として仕様に取り込まれている。
日本では3キャリアが2018年5月にスタートした「+メッセージ」がRCSの一部仕様に準拠したているが、3キャリアのスマートフォンのみで利用できるサービスであり、RCS Business Messagingにも対応していない。+メッセージが同仕様に対応し、キャリアフリー化した場合、プロモーション用途での活用が進む可能性がある。
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