9月に続いて開催されたAppleのスペシャルイベントでは、既報の通り、「MacBook Air」「Mac mini」に加えて、11型と12.9型の「iPad Pro」が発表された。新しいiPad Proはどのような位置付けの製品なのか。イベントを振り返りながら、その役割を見ていきたい。
2010年に発表されたiPadは、「まるで魔法のようなガラスで、ユーザーの好きなものに一瞬で変わる」(ティム・クックCEO)製品だ。タブレット市場は低迷しているともいわれるが、ことiPadに関しては、3月に第5世代のモデルを投入したこともあって、売り上げを伸ばしている。販売台数は、8年目の現時点までで「4億台以上」(同)と大きな市場に成長した。
一方で、iPadはその役割を徐々に広げ、ラインアップを拡大してきた。2015年には、Apple Pencilに対応したiPad Proを発表し、クリエイティブな用途での利用シーンを開拓。現時点では「安価で汎用(はんよう)性の高いiPad mini 4とiPad、限界を広げてクリエイティブで最先端な経験ができるiPad Pro」(クック氏)と、大きく2つの方向性に製品が分かれている。
今回のスペシャルイベントで発表されたのは、後者のiPad Proだ。スマートキーボードに対応したり、マルチタスクを強化したりと、よりPCライクな方向に進化してきたiPadだが、Appleは、このiPad Proをコンピュータの本命と見ているのだろう。イベントでも“競合”として他のノートPCとの販売台数を比較しながら、「他の全てのノートPCを上回る、もっとも人気のあるコンピュータ」(クック)と語られている。
後述するように、新しいiPad Proには、ニューラルエンジンを搭載した「A12X Bionic」が内蔵されており、機械学習やARを活用したアプリをスムーズに動かすことが可能だが、その示すためにゲストとして登壇したのは、Adobeだった。
同社のデザイン担当バイスプレジデントを務めるジェイミー・マイロルド氏は、10月に開催されたAdobe Maxで発表されたiPad版の「Photoshop CC」を披露。同アプリはタッチやApple Pencilでの操作に最適化されているが、新しいiPad Proのパフォーマンスを生かすと、120以上のレイヤーで作られた3GBを超える画像でも、簡単に編集、加工ができるという。
デモで最初に披露されたのは以下に掲載した写真だが、実はこの映像は全体の中のごく一部。ここから一気にズームアウトして、全体像が表示されただけでなく、Apple Pencilをダブルタップしてピクセル1つ1つを見ることもできた。こうした動作が可能なのは、Appleのクック氏が語っていたように、iPad Proがパフォーマンスの高いパワフルなデバイスだからだ。
OSやそれに伴うファイル管理、マルチタスクの仕組みなどに違いはあるものの、クック氏が競合としてノートPCを挙げたのは、それほど大げさなことではないことがよく分かる。むしろ、写真や動画などの映像編集において、コストパフォーマンスでiPad Proに匹敵するデバイスは存在しないかもしれない。もともとプロユースのニーズにこたえて誕生したiPad Proだが、新モデルではその位置付けをさらに明確化した格好だ。
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