NTTドコモが、下り通信速度において国内最速(2018年11月30日現在)となる“ギガ超え”のモバイルWi-Fiルーターを2019年春に発売します。その「最速」っぷりはどんなものなのでしょうか。前々回の連載でドコモの大容量プランに1本化した筆者の「近況」と合わせて見ていきましょう。
(記事中の最高通信速度は全て理論値)
NTTドコモは10月17日に開催した新製品発表会において、モバイルWi-Fiルーターの新製品としては「Wi-Fi STATION HW-01L」を発表しました。HW-01Lの通信速度は下り最大1288Mbps、上り最大131.3Mbpsと、11月30日現在において発表されている国内向けのモバイル通信端末としては最速です。
HW-01Lは、ドコモのモバイルWi-Fiルーターとしては約2年ぶりの新製品。2017年3月に発売された「Wi-Fi STATION N-01J」と比較すると、下り通信速度は約60%、上り通信速度は実に約260%も高速化されています(あくまで“理論値”ですが)。
ただし、ドコモの最高通信速度のご多分に漏れず、HW-01Lにおける下り最大速度は東名阪エリア(関東甲信越・東海・関西地区)での最高速度で、以下の5波をキャリアアグリゲーション(CA)で束ねることで実現しています。
東名阪エリア以外では、同エリア限定の1.7GHz帯の代わりに全国バンドの1.5GHz帯(15MHz幅)を用いることで下り最大1038Mbpsの通信を実現。全国エリアで“ギガ超え”を達成したのです。
今後、下り最大1Gbps超の対応エリアをドコモがどのくらい広げるのかに左右されますが、HW-01Lは端末としてどこでも“ギガ超え”なポテンシャルを有しています。
HW-01Lは上り通信も高速化していることが特徴です。従来の上り通信は最大75Mbpsでしたが、上り通信にもCAを適用し、変調方式を密度のより高い「64QAM」に変えることで東名阪エリアで最大131.3Mbps、その他のエリアで最大112.5Mbps(その他エリア)と高速化を果たしています。
上り通信速度の向上は、大容量のファイルをアップロードする時だけではなく、データを常に双方向でやりとりするサービスにおいて体感速度を改善する効果があります。
ただ、下り通信の高速化はHW-01Lのみ、上り通信の高速化も「Xperia XZ3 SO-01L」と合わせて2機種のみとまだまだ限られています。特に上りの高速通信に対応した機種の拡大は期待したいところです。
HW-01Lは全国下り最大1Gbps超の通信に対応できる機種ではありますが、ドコモが公開している速度別のエリアマップを見てみると、意外な事実が分かります。
2019年3月までに「受信時最大1288〜988Mbps」に対応するエリアは東京や大阪よりも札幌・仙台・名古屋の方が面として広がっているのです。
下り最大988Mbps超の通信に対応するスマホやルーターが“真価”を発揮できるのは、東京・大阪よりもその他の都市の方が早そうな雰囲気です。
ちなみに、HW-01Lに限っていえばWi-Fi(無線LAN)の速度がモバイル通信の速度に追いついていないという問題があります。
国内向けに発売されているWi-FiルーターやスマホにおけるWi-Fi通信の最高通信速度はほとんどが866Mbps(IEEE 802.11ac接続時)。これはHW-01Lも例外ではなく、Wi-Fiがモバイル通信の速度を生かしきれないのです。もしも生かしたいなら、USB 3.0 Type-Cに対応したケーブルを用意した上で、USB 3.0以上に対応したPCと有線接続する必要があります。
Wi-Fiルーターはその名の通り、Wi-Fiを介してスマホやタブレットと接続できるのが特長ですが、現時点でHW-01Lのポテンシャルを発揮するのは有線接続、ということを覚えておきましょう。
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