「新製品」から「事件」まで――モバイルWi-Fiルーターで2017年を振り返る5分で知る最近のモバイルデータ通信事情(1/2 ページ)

» 2018年01月26日 15時50分 公開
[島田純ITmedia]

 2018年が始まって、まもなく1カ月がたちます。総務省による公正競争促進に関する検討会など、いろいろと波乱含みの1年になりそうです。

 翻って去年(2017年)は、大手キャリアがスマートフォンやタブレットで使える「大容量プラン」を相次いで投入したことから、モバイルWi-Fiルーターにとってある意味「受難」の年でもありました。

 少し遅くなりましたが、そんな2017年をモバイルルーター視点で振り返ってみようと思います。

(記事中の通信速度は、特記のない限り理論値)

下り最大通信速度は「440Mbps」から「788Mbps」に

 2016年12月末時点で下り最大通信速度が一番高速だったのは、UQコミュニケーションズ「Speed Wi-Fi NEXT WX03」の440Mbpsでした。

 1年後の2017年12月末現在、その最速の座はNTTドコモの「Wi-Fi STATION N-01J」にあります。下り最大788Mbpsと、理論値ベースでは約1.8倍高速になりました。

2016年最速の「WX03」と、2017年最速の「N-01J」 2016年最速の「WX03」(上)と、2017年最速の「N-01J」(下)

N-01Jの「下り最大788Mbps」を発揮できるのは、東名阪(関東甲信越、東海、関西)エリアのごくごく一部のみ。「全国どこでも下り最大788Mbps」というわけではありません。

 しかし、ドコモを含めた大手キャリアはLTEネットワークのエリア拡大・拡充を続けており、通信におけるストレスはほぼなくなったと筆者は思っています。「通勤時間帯の都心部の地下鉄」「『Pokemon GO』のような通信を行うゲームの大規模イベント」といったシーンを除けば……。

国内初の「セカイルーター」と想定外のトラブル

 「クラウドSIM」と呼ばれるソフトウェアベースの仮想SIMカードを使って、ローミングより低廉なデータ通信を行えるモバイルルーター。

 ある意味で「セカイルーター」ともいえるこの種の製品は、2年前あたりから海外利用を主体とした製品がちらほら出ていましたが、2017年は国内利用を意識した製品も出てきました。BroadLineの「GWiFi G3000」が、それです。

 G3000は、世界約90カ国でのデータ通信料金が「24時間あたり580円から」と割安な上に、日本国内向けのデータ通信料金も「30日間・100GBで3980円」と格安であることが大きな特徴です。

 普段は日本国内で使う格安・大容量回線として使いつつ、海外渡航時にはローミングよりも安価に使えるデータ回線とする――そんな使い方ができる、ある意味「夢」のようなセカイルーターでした。

参考:G3000の国内データプラン料金(30日間あたりの税込価格)

  • 3GBプラン:1480円(1GB当たり493円)
  • 5GBプラン:2280円(1GB当たり456円)
  • 10GBプラン:3480円(1GB当たり348円)
  • 100GBプラン:3980円(1GB当たり39.8円)

GWiFi G3000 BroadLineのセカイルーター「GWiFi G3000」

 筆者も実際にG3000を発売日に購入して使ってみました。BroadLineが説明する通り、国内向けサービスはMVNOではなく大手キャリアとの接続でサービスを提供しているようで、MVNOサービスでは遅くなりがちなランチタイムや夕方の帰宅ラッシュ時間帯でも速度低下は見られず、ストレスを感じずに使えました。

 しかし、G3000は当初の説明とは異なる点がいくつか見受けられました。例えば、当初は「(クラウドSIMとは別に)他社のSIMカードを挿して通信もできる」と紹介されていたのに(参考記事)、実際はSIMカードスロットが「あっても機能しない」仕様となっていました。また、「MNO(ドコモ、ソフトバンク)の回線をそのまま利用できる」と説明していたのに、実際は「ドコモのネットワークに切り替えられない(≒ソフトバンクのネットワークしか使えない)」状況が長らく続きました。クラウドSIMを使っていることの宿命かもしれませんが、高速な交通手段(特急列車など)で移動すると長時間データ通信ができなくなることもありました。

 使い勝手やトラブルの顛末は過去の連載でもお伝えしているのですが、「繋がれば高速だが接続は不安定」という使用感は、筆者が望むものとは異なり、最終的にG3000は「返品」することになりました。

 初めての国内利用主体の「セカイルーター」であるG3000。(発売延期があり、やや心配しながらも)期待値は高かっただけに、とても残念です。

「ARIA 2」騒動から1年――プラスワン・マーケティングが民事再生へ

 2017年は、「FREETEL」ブランドで携帯電話端末事業とMVNO事業を手がけていたプラスワン・マーケティングが、MVNO事業の大部分を楽天に売却し、その後端末事業に専念するはずが民事再生手続きを開始したことも話題となりました。

 FREETELについては、2016年12月のモバイルルーター「ARIA 2」が、「UQコミュニケーションズの『WiMAX 2+』でも使える」と説明していたものの、実際は「WiMAX 2+サービスを契約するSIMカードではIMEI(国際移動体装置識別番号)の制限で通信できない」という非常にお粗末な事件がありました。

ARIA 2 FREETELの「ARIA 2」は当初、WiMAX 2+(WiMAX 2)で使えることをアピールしていた

 この件については、過去の連載で詳細を説明していますが、筆者が何よりも問題視しているのは、発表時点で報道関係者から“ツッコミ”があったにも関わらず、発売までの約6カ月間に同社が適切なチェックと修正を行えなかったという点です。

 消費者庁から措置命令を受けたこと、MVNO事業譲渡、そして民事再生手続きの開始――2017年に同社に降りかかったことを今振り返ると、ARIA 2にまつわる“事件”がつまづきの「始まり」だったのかもしれません。

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