インタビュー
» 2018年12月11日 15時30分 公開

ライバルはWi-Fiルーター ドコモに聞く、海外データローミングの取り組み (2/2)

[石野純也,ITmedia]
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各キャリアとの交渉は苦労した

―― 料金は一律で24時間980円ですが、ドコモが海外キャリアに払う金額や条件は、キャリアごとに異なっていると思います。この対応キャリア数を考えると、一律料金はかなり苦労されたのではないでしょうか。

高木氏 気付いてもらえるとうれしいですね。実は一番苦労したのが、そこです。国や地域ごとにまとめて交渉できるわけではないので、1社1社、各オペレーターとやりとりして値段を決めています。今は205の国や地域で使えますが、これをギュッと絞って、いい条件をもらえたところだけにすれば、もう少し安くできたかもしれません。ただ、それだと、いちいちどの国で使えて、どの国ではダメというのを、お客さまが気にしないといけなくなってしまいます。そうはいっても、料金が高くなってしまってはいけないので、かなり交渉を重ねました。その交渉だけを専門にやっているラインがあります。

―― それは、かなり時間がかかりそうですね……。

佐々木氏 年に2回、オペレーターが集まる会議もあるので、そういった場も活用しました。

久保田氏 GSMA(世界各国が加盟する携帯電話事業者の業界団体)には、WAS(Wholesale Agreements and Solutions)というサブグループがいて、そことも交渉をしています。

ドコモ 同部 国際技術担当 担当部長の久保田敦紀氏

高木氏 日本に来る量と、日本から出ていく量のバランスもあり、そこから交渉が始まります。値段が下がると、結果利用が伸びることもあるので、彼ら(海外のオペレーター)もそのプラスとマイナスを考えて計算します。そのためには、今回のdポイントのように、海外での利用が増えるようなことも考えながら、このぐらいまでならいけるということを考えていく必要があります。

―― なるほど。dポイントの海外展開には、そういった背景もあったんですね。ちなみに、現在キャンペーン中ですが、この利用動向はいかがですか。

佐々木氏 1時間プランをまず使ってみて、1日、3日にするという方もいた一方で、3日や5日使ってから、最後の空港で1時間だけ使うという方もいました。

久保田氏 1時間プランは、どちらかというと新規に使うお客さまが多くなります。現地で無料Wi-Fiを使っていても、外でタクシーに乗ったりすると、そこでGoogleマップが使えなくなります。こういったときに1時間プランを使って、便利さを体感していただけると、もう少し長いプランを使うとなるようです。

佐々木氏 1時間を使われる方は、それだけで終わることがなく、他のプランも使う傾向があります。また、キャンペーンは意外と若い方に好評でした。バリエーションを作ったことで、若い方にも受け入れられたと見ています。

―― グアムのドコモパシフィックのように、100%子会社を活用して、ソフトバンクの「アメリカ放題」に近いプランは出せないのでしょうか。

高木氏 できないことはなく、それがお客さまにプラスになることもありますが、なぜ他の国ではできないのかと思われてしまうケースもあります。ドコモパシフィックは100%子会社なので、日本の島に行くのと同じ感覚で、ドコモの通信エリアに入ったように使えるという考え方はあるかもしれませんが、1つだけだと、利便性を与えられる方の数もそこまで多くありません。もう少し、塊でお見せできるといいなと思います。

―― 出資先やコネクサスアライアンスを活用するという手もありますか。

高木氏 KT(韓国)、FET(台湾)、3(香港)、Smart(フィリピン)は出資先なので、彼らとなら、そういうことはやれるかもしれません。コネクサスアライアンスのメンバーでもできなくはないと思いますが、日本から行く人と、日本に来る人のバランスが取れないと、どちらかにはプラスでも、もう一方にはマイナスという状況ができてしまうので、いかんせん難しいところはあります。

佐々木氏 ローミングを使ってくれない人は、「分かりづらい」「高い」というイメージを持っています。ですから、今回はなるべくシンプルにしたかったということもあり、今のような形になっています。

ドコモ 100%子会社のドコモパシフィックに加え、アジア圏を中心にドコモが出資するキャリアもある

次にdポイントが使えるようになる国は?

―― 先ほどdポイントのお話もありましたが、まだハワイ以外だと、グアムやニューヨークだけで、数もそれほど多くありません。拡大していくとすると、どこがターゲットになるのでしょうか。

高木氏 軸としてずれていないのは、日本人の方がよく行くところを考えたいということです。われわれもニューヨークやシンガポール、ロンドン、上海、北京などに海外拠点があり、これらの拠点には駐在員だけでなく、現地のローカルスタッフもいます。彼らも日本人の渡航者を見ていますから、そういったところで可能性がないのかは検討しています。

 それと今回のハワイのように、渡航者の多い地域の上位に入れるというのはあると思っています。ハワイは拠点がない状態で、初めてそれができました。他の拠点がない国でも、今回のようにできないかと考えています。

―― ハワイも現状23店舗ですが、もっと増やす計画はあるのでしょうか。

高木氏 当然、これも増やしていきたいと考えています。ただ、僕たちがいいと思って増やすというより、いろいろな方の「こういうお店で使いたい」という口コミを見ていきたいと考えています。キャンペーンとして「tabihapi」というサイトを紹介しましたが、そういうところで声を集めたり、OTT(Over The Top=上位レイヤーのサービス事業者)の方々とうまくコラボレーションしたりしながら、どこに拡大すべきかを考えていきたいですね。

ドコモ 7日(現地時間)から、ハワイにdポイントが導入された

―― 導入で大変だったことはありましたか。

佐々木氏 アメリカは、あまりポイント文化がありません。そのため、お店の方にメリットを理解していただくのに苦労しました。ただ、今回はオーナーが日本人のところも多く、ドコモという会社のことを説明する必要がありませんでした。一部日本の方ではないお店もあったので、そこはドコモとはどういう会社かというところから理解していただくところから始めています。

―― 日本のVerizonという説明が通じやすそうですね(笑)。

佐々木氏 まさにそういった説明をしています(笑)。

久保田氏 もう一つ苦労したのが、オペレーションです。もともと、あまりオペレーションが得意でないところに、さらにポイントを付けるための煩雑な作業が加わってしまうと、店舗側が対応できません。そのため、導入するアプリのUIは、なるべく簡単に、分かりやすいものにしました。

取材を終えて:海外データ通信の競争力が増した

 インタビューでも語られていた通り、もともとの海外パケ・ホーダイや海外1Dayパケは、iモード用のデータローミングサービスとして誕生したものだ。スマートフォンだと高くなりすぎたり、使えるデータ容量が少なかったりと、欠点も多かった。結果として、ローミング利用者が減り、レンタルWi-Fiにユーザーが流れてしまったようだ。

 満を持して投入したパケットパック海外オプションだが、どの国でも24時間980円という料金設定には、競争力があると感じる。国や地域にもよるが、現地のキャリアからプリペイドSIMを買うより、トータルでは安くなるケースもあり、実際、筆者も出張の際には多用するようになった。キャンペーンも一時的なものというより、ユーザーの利用動向を取り、次の料金に生かすために展開しているため、今後の展開にも期待ができそうだ。

 dポイントに関しては、まだまだ利用できる国が少ないように感じる。ハワイでの対応は、その第一歩といった印象だ。渡航者が多いアジア圏などに拡大できるかにも、注目しておきたい。

(取材協力:NTTドコモ

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