ライバルはWi-Fiルーター ドコモに聞く、海外データローミングの取り組み(1/2 ページ)

» 2018年12月11日 15時30分 公開
[石野純也ITmedia]

 ドコモは12月7日(現地時間)、米ハワイの23店舗にdポイントを導入した。発表会の記事でも触れたように、dポイントを導入した主な理由は、日本人の渡航先として大きなハワイをカバーするというものだが、背景には、データローミングの利用を促進する狙いもある。

 ドコモは3月に、24時間980円(非課税、以下同)で契約しているデータ容量を使ってそのまま海外でデータローミングが可能になる「パケットパック海外オプション」を導入。7月からは、複数日まとめて利用すると料金が安くなるキャンペーンも展開中。このキャンペーンは9月末までだったが、いったん延長され、2019年1月末までに期間が延びている。

 冒頭で挙げたdポイントの海外導入や、データローミングを取り仕切っているのが、同社の国際事業部だ。そこで、ハワイでの会見に合わせ、パケットパック海外オプション導入の狙いを聞いた。インタビューに応じたのは、ドコモの執行役員 国際事業部長の高木克之氏と、国際ローミングの料金設計を担当する国際サービス戦略担当部長の佐々木純一氏、関連する技術を手掛ける国際技術担当部長の久保田敦紀氏の3人。

従来のローミング料金を超えたかった

―― 3月にパケットパック海外オプションを導入しました。この理由を教えてください。

高木氏 われわれの中には、お客さまが海外に行ったとき、スマートフォンの電源を切ってしまったり、機内モードのままにしていたりという状況を何とか変えたいという思いがありました。「Beyond宣言」という中期経営戦略を出し、その中でお客さまがより便利に、より安心できることも掲げています。これに基づき、従来のローミング料金をビヨンド(超える)ものを考えていくことになりました。

 久保田が技術側、佐々木が料金の仕組みやマーケティングを考えていますが、お客さまの声を聞きながら、今回のプランにしました。

ドコモ NTTドコモ 執行役員 国際事業部長の高木克之氏

佐々木氏 データローミングでは「海外パケ・ホーダイ」がありましたが、これは無制限にデータを使える反面、料金が高い。一方で、980円からの「海外1Dayパケ」というサービスもありましたが、こちらは高速通信を使える容量が30MBしかありませんでした。バランスのいいものがなかったのです。そこで、パケットパック海外オプションは、「Roam like home」(国内にいるのと同じ感覚でローミングするという意味合いの言葉)のような形で、分かりやすく、安心できるものにしています。

久保田氏 もともと、海外ローミングは渡航者の6割ぐらいの方に使われていました。フィーチャーフォンのころは、海外パケ・ホーダイでも2980円まで達しないで使うことができたからです。海外1Dayパケも、それと同じようなところをターゲットにしていました。ただ、スマートフォンが普及し始めてからは、海外パケ・ホーダイだと2980円に張り付くようになってしまいました。「ローミングが高い」というイメージがついたのも、そのためです。

 また、海外パケ・ホーダイはローミングの設定をオンにすると、すぐにデータが飛び、料金が発生してしまいます。対地(国や地域)によっては従量のところもあるので、金額が青天井に上がってしまいます。そこに安心感を持たせるという意味合いもあり、今の形(ユーザーがアプリなどから申し込むまで、通信が開始されない)になっています。

ドコモ 3月にスタートした「パケットパック海外オプション」。現在はキャンペーン中で、3日や5日などのプランも選べる

―― 結果として、利用率は上がりましたか。

高木氏 そうですね。とはいえ、実際にはまだまだ認知度が低い現状があります。いきなりすごく上がったと胸を張れる状態ではありませんが、利用率が下がってきたところに何とか歯止めがかかり、徐々に向上し始めたというのが正しい表現になると思います。

佐々木氏 6割だったころから下がってきて、ようやく底を打ったというところですね。

ドコモ 同部 国際サービス戦略担当 担当部長の佐々木純一氏

ライバルはWi-Fiルーター

―― あの値段なら、もっと一気に伸びるかと思っていましたが、やはりサービス自体に気づいてもらうには時間がかかりそうですね。

高木氏 海外に行かれる方に対して、直前に説明すると利用の向上につながるのですが、そのタイミングでなかなか広告を打つことができていません。ただ、利用登録は無料なので、そもそも機種変更されるときに申し込んでいただくなどの取り組みは進めています。いくつか、これをすると利用率が上がるといったデータはつかんでいるので、施策に反映させています。

久保田氏 スマートフォンが海外で使えるという認識自体が、あまりありません。海外に行ったときに通信するには、Wi-Fiルーターをレンタルするというのが一般常識になってしまっている節もあります。

佐々木氏 若い人だと、海外に行くときに「Wi-Fi レンタル」などのキーワードで検索してしまうので、そもそも海外ローミングにたどりつかない現状があります。それもあって、来週(12月10日週)からは海外ローミングのテレビCMも流すことにしています。

ドコモ ハワイのドコモカウンターに掲示したあったポスターからも分かるが、ライバルはレンタルWi-Fiだ

―― 確かに、Wi-Fiルーターの市場はどんどん拡大しています。一方で、この料金なら十分対抗できる印象もありますが、ここは競合として意識したのでしょうか。

高木氏 ニーズを把握する際に、比較の対象にはしています。

―― 正直、この価格だったらデフォルトにしてしまい、海外パケ・ホーダイの方を申し込み制にした方がいいのではと思いました。こちらについてはいかがでしょうか。

久保田氏 海外パケ・ホーダイはフィーチャーフォンを使っているお客さまだと、お得になることもあります。逆にこちらだと、1回ボタンを押すだけで980円かかってしまいます。

佐々木氏 ビジネスのお客さまの中には、都度申し込むのが面倒という方もいます。

久保田氏 確かに、全部こちらにしてしまおうという議論もありましたが、全てのお客さまが同じように考えているわけではないので、使いたい方が申し込むようにしています。

ドコモ パケットパック海外オプションはデフォルトでは使えず、My docomoやドコモショップでの申し込みが必要になる
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