コラム
» 2019年03月06日 07時00分 公開

「気持ちが乗らず書けない」とはもうオサラバ?:iPhoneを使った音声入力、試して分かったメリット (2/3)

[山口真弘,ITmedia]

 この事態をリカバリーするために、専用の辞書を用意しておく。つまり「ナス」「茄子」という単語はアルファベットの「NAS」に変換するように、置換先を記した辞書を用意しておく。それを強力な置換機能を備えたテキストエディタ、具体的にはWZソフトウェア「WZ EDITOR 9」の用語統一機能を使って一括変換する。これがPCを使う最大の理由だ。

音声入力 Windows用テキストエディタ「WZ EDITOR 9」の「ツール」→「用語統一」機能を使うことで、用意した辞書に基づいて用語や言い回しの置換が行える

 この置換辞書には、専門用語だけでなく、文中の言い回しや、漢字を開く・開かないといった書き分けも登録してあり、置換を実行することで、音声で入力した原稿が、キーボードで入力した文章と見比べても遜色ないレベルへとブラッシュアップされる。その後さらに推敲を重ね、完成に至るというわけだ。学習機能でなんとかするのではなく、割り切って手動置換をかけるのが大きなポイントということになる。

 実のところ、この単語の置換さえ終われば、以降の推敲作業はPCでもスマホでも大差ないので、PCで置換作業を終えたあとは、再びスマホに戻って作業を続行することも多い。将来的に、こうした語句の一括置換が行えるスマホアプリが見つかれば、いずれそちらで一本化することになるだろう。

「気持ちが乗らないので書けない」を回避できるのが最大の利点?

 ところで、音声入力の利点とは何だろうか。

 話し言葉を100%の精度でテキストに変換することは、現在はもちろん、将来にわたっても技術的に難しいだろう。あとから修正する手間を考えると、最初からキーボードを使って一気に書いた方が速いように思える。厳密に比較したことはないが、前述の置換の手間なども考えると、むしろトータルの所要時間では不利になっている可能性も高い。

 しかし、筆者が思う音声入力のメリットはまた別のところにある。それは作業に着手するまでの心理的抵抗が非常に低いということだ。

 PCに向かってキーボードでテキストを入力する場合、気分が乗っていない時はなかなか書き始められないことも多い。自分を追い込んでエイヤッと書き始めても、いまいちテンションが上がらず、途中で頓挫することもしばしばだ。電話や通知音など、外部要因に影響される確率もそこそこ高い。

 それに対して、音声入力は、まずは少しでも構わないのでテキストに起こしてみようと軽い気持ちでスタートした結果、そのまま数千字にもわたって書いてしまうなど、気分が乗っていない状態からブーストがかかる確率が非常に高い。しゃべっている最中は周囲からの干渉を受けにくく、集中しやすいのも理由の1つだろう。

 また、これは書き手の性格にも依存しそうだが、文章をゼロの状態から一気に書き上げるのと、ある程度形になった下書きを削りながら整えていくのとでは、後者のほうが圧倒的にやりやすいというのも大きい。書くにはそこそこの集中力が必要だが、読み手視点でチェックして必要に応じて修正を行う分には、そこまでの集中力はいらないからだ。

 つまり「キーボードでの入力時間」と「音声入力での下書き+用語の置換+推敲」という理想的な単純比較であれば前者の方が所要時間は短いが、前者に「キーボードで文章を入力できるようになるまでの気合を入れる時間」や「いまいち気持ちが乗らずに中断する時間」も加えて考えると、後者の方が圧倒的に高効率というのが、ここ何年かで音声入力の割合が増えつつある筆者の考えだ。

 またその副次効果として、モノ書きによく見られる、気持ちが乗らないせいで作業が全く進まない(加えて、それによって無用なプレッシャーにさいなまれる)問題も回避できる他、体調などに影響されず、いつでも書き始められるというのも大きい。

 もう1つ、タスク管理の観点から見ると、「原稿を書く」という作業は、案件ごとの変動の幅が大きいために工数を非常に計算しにくいが、音声入力であればそれを「下書き」「用語の置換」「推敲」といったプロセスに分解できるので、消化がはかどりやすく、また進捗も把握しやすい。将来的に音声入力の精度が上がれば、個々のプロセスはさらに短縮されるはずで、そうした意味では前途有望だろう。

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