IIJ(インターネットイニシアティブ)が5月14日、2019年3月期(2018年度)の連結業績について説明した。増収増益と好調を維持しており「IIJとしていいビジネスサイクルに入った」と勝栄二郎社長は評価する。
一方、2019年3月に発表されたドコモの接続料改定は、当初IIJが見込んでいた14%を大きく下回る5%の低減率だったため、想定よりもネットワーク原価が20.5億円上乗せされた。
勝氏は「われわれの見立てが甘かったと言えばそうかもしれないが、過去の数字を見れば、去年(2018年)が−18.2%、2年前が−14.1%、3年前が−16.9%、その前が−23.5%だったので、見立てに根拠がないと言うこともない」との見方を示す。
渡井昭久CFOは、2019年度の接続料の見立てについては、「従来の14%といった低減率を前提に置くのはアグレッシブすぎるので、1桁で想定するのが妥当」としている。
MVNOが支払う接続料は、例えば2019年3月に決定したものは、2017年度の実績を元に算出されるため、MVNOが予測を立てて原価をシミュレーションしなければならない。渡井氏はこの仕組みについて「MVNO側として、接続料が決まるのは遅すぎると問題視している」と話す。総務省は、将来原価方式で接続料を算定することも検討しており、2020年度から導入する可能性もあることから、「後出しでのズレは回避できる」と同氏は期待を寄せる。
KDDIの接続料は20%減だったことも受け、「キャリアによって需要のとらえ方、設備の打ち方のタイミングは違うので下がり方はまちまちだが、全体的なトラフィックは増加しているので、(ドコモの)5%減は低いという評価をしている」と渡井氏。
過去の実績に基づいて接続料を算定する現行の実績原価方式は「一方的に通告されて適用される。いろいろな問題点を抱えている」と勝氏は指摘する。「ドコモの言い分は『需要が9%増えたから』。前年は10%増だったが、(今回の)9%の根拠が分からない。社内資料にはあると思うが、もう少し透明化する必要がある。(新料金プランの)4割下げをする中で、MVNOに対しても方向性を示していただきたい」と要望を述べた。
なおIIJは、2019年3月25日のプレスリリースで「当社は、従前比低い低減率の定額通信料水準について詳細な確認が必要と認識しており、NTTドコモに対し情報開示要求等の対応及び協議をしてまいります」と述べている(参照※PDF)。
ドコモやKDDIが、新たな分離プランである新料金プランを発表し、大手キャリアで値下げが活性化している。MVNOへの影響が懸念されるが、勝氏は「4割(値下げ)と言っても、ドコモは1GB、3家族で2年縛りの場合。それ以外は劇的な値下げではない。われわれのプランに対してさほど影響がないと考えている」と話した。
2018年度第4四半期時点でのモバイル総回線数は274.5万となり、個人向け「IIJmio」は106.3万回線、法人向け「IIJモバイル」は167.5万回線(うちMVNEは104.8万回線)となった。法人の方が好調に伸びている状況は変わらず、「個人も法人もやっているところが強み」と渡井氏はあらためて話す。「トラフィックも個人と法人で違うので、法人のトラフィックを積み上げることで、全体として利益を積み重ねていける」と同氏。
中でもIIJが期待するのが「フルMVNO」事業だ。2018年度の目標売り上げ5億円を超える、6.6億円の売り上げをフルMVNOで達成し、2019年度はさらに高い17億円規模の売り上げを目指す。勝氏によると、監視カメラや訪日外国人向けのプリペイドSIMが特に好調だという。
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