日本電信電話(NTT)とKDDIは9月11日、「社会的課題の解決に協調して取り組む社会貢献連携協定」を締結した。取り組みの第1弾として、大規模災害時に両社のグループ企業が保有する船舶を相互利用した物資の運搬や、災害対応訓練や各種啓発活動における相互協力を実施する。
同日に行われた報道関係者向け説明会では、NTTの澤田純社長とKDDIの高橋誠社長がそれぞれ提携に関する説明を行った。
まず、澤田氏が連携協定の締結に至った背景を説明した。
同氏はコロナ禍によって社会トレンドが変化していることを指摘した。正解では、「ソーシャルディスタンス」と経済活動の同時実現を求める「リモートワールド(分散型社会)」がトレンドとなる一方で、「グローバリズム」と自国ファーストな「ローカリズム」が同時に実現する「ニューグローカリズム」が台頭している。
ニューグローカリズムのトレンドを通信業界に当てはめると、通信事業者はビジネスにおいて厳しい競争をする一方で、公共的な部分では協力をしていくということになる。
厳しい競争と公共的な部分での協力――これらの同時実現が、持続可能な社会の実現につながると、澤田氏は考えを述べた。
「持続可能な社会の実現のために、特に公共性の分野でKDDIとNTTで何かできることがないかと考え、災害対策、環境問題、通信の健全な利用、労働環境の4分野について、2社で議論を進めた」(澤田氏)
相互協力に関する議論は、2019年後半から行われていたという。今回の協定に基づく社会貢献の取り組みは「つなぐ×かえるプロジェクト」として積極的に推進する。
会見では、具体的な取り組みの一例として、両社のグループ企業が保有する海底ケーブル敷設船の相互利用について紹介された。
2018年に発生した「北海道胆振東部地震」において、NTTはケーブル敷設船を長崎から北海道まで3日間かけて送ったという。今回の連携により、災害が発生した場合に「より早く、より充実した災害復旧活動をお互いに進めることができる」(澤田社長)。
KDDIの高橋社長は、「重要なライフラインである通信を24時間365日、安定して提供する」と共に、近年は毎年のように発生する大災害では「事業者間で競争しながら、1分1秒でも早い通信網の復旧を目指して取り組んでいる」と説明した。
なお、日本の通信事業者でケーブル敷設船を持っているのはNTTグループ(NTTワールドエンジニアリングマリン)とKDDIグループ(国際ケーブル・シップ)のみ。ケーブル敷設船は通常時、各グループにおける光海底ケーブルの敷設や修理・補修などを担っているが、今回の協定により、通信の早期復旧と被災者支援のために、災害時には船舶を共同運用・共同活用する。
今回の協力により、災害時に活躍する車載型/可搬型基地局や発電機、燃料の他、水や食料など両社の物資をまとめて船に積み込み、被災地に運搬することで通信の復旧を迅速化し、より早く、より多くの被災者を支援する考えだ。
高橋社長は「大規模な直下型地震など、陸路での物資の運搬が非常に難しいときに大きな効果が見込まれる」と、共同運用への期待を語った。
船舶の相互利用以外でも、両社は被災地の早期復旧に向けた相互協力を検討する。
例えば、災害時における両社の設備復旧に当たり、復旧活動の妨げとなる障害物の除去を共同で行うことを検討する。さらに、平時においても防災活動を両社で継続的に連携して推進したり、各地の災害対策訓練を共同実施したり、「災害時伝言板」などの災害時に役立つサービスの共同利用啓発も実施したりする予定だ。
「就労支援やスマホの健全利用、気候変動への対応などさまざまな社会課題に対し、両社のアセットを掛け合わせて、課題解決に貢献する取り組みを検討していく」(高橋社長)
今回の協定は「ケーブル敷設船を保有していること」という共通点が足がかりとなったものだが、両社では今後、他社との連携も検討する。高橋社長は「2社だけで話し合ったので、協定締結までスピード感があったが、思いを共有できる方々とは一緒にやっていきたい」と語った。
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