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» 2020年10月15日 17時00分 公開

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「iPhone 12」は“高くてもProの方がお買得”と思う理由 違いは望遠カメラにとどまらず (2/4)

[本田雅一,ITmedia]

iPhone 12と12 Proはメモリ容量が異なる?

 コンピュータ端末として見た場合の能力的な面はほとんど同じだとみられるものの、iPhone 12 Proおよび12 Pro MaxにはあってiPhone 12および12 miniにはないソフトウェア処理上の違いが一つだけある。

 Appleはハードウェア上の制約がない場合、よほどのことがない限り、どのiPhoneでも同じ機能を提供してきた。言い換えれば、ソフトウェアの機能に制約が設けられている背景には、実はハードウェアの制約があるということだ。

 例えば暗所でのカメラ画質を大きく引き上げる画像合成技術の「Deep Fusion」はiOS 13.2で追加されたが、A13 Bionicの「Neural Engine」を利用するため、それを搭載するiPhone 11シリーズでしか使えなかった。

Deep Fusion 機械学習を用いて写真をピクセル単位で処理し、写真の画質を引き上げる「Deep Fusion」。AppleによるiPhone 12 Pro Maxのサンプル写真

 今回はカメラRAWに対して、A14 Bionicが施した映像分析結果の情報を付加したApple ProRAWフォーマットへの対応はiPhone 12・12 miniでは行えない(そもそもこの機能は年内に追加されるボーナス機能の扱いだ)。

 A14 Bionicでさらに高速化された「Neural Engine」やISP(Image Signal Processor)、GPUなどを活用した分析データは膨大で、RAWで記録する際に付与するためにはバッファがある程度は必要だろう。ということで、恐らくだが今回、iPhone 12と12 Proシリーズでは搭載メモリ容量が違うと推察される。

Apple ProRAW iPhone 12 Proシリーズに追加される予定の「Apple ProRAW」。イメージセンサーRAWデータにA14 Bionicが分析した画像処理データを付与したデータ形式で、色、細部、ダイナミックレンジのコントロールを端末上やサードパーティーの写真編集アプリで柔軟に行えるようになる

 ただし過去のiPhoneやiPadがそうだったように、搭載メモリ容量をユーザーが意識することはほとんどないだろう。単に搭載メモリ容量で使える機能が異なる可能性がある、程度のものだ。つまりApple ProRAWを使うつもりがないならば、この話は考慮しなくていいだろう。

キーワードは「コンピュテーショナルフォトグラフィー」

 AppleはiPhone 12と12 Proシリーズについて、頻繁に「コンピュテーショナルフォトグラフィー」という言葉を使う。演算処理を用いて写真を生成するプロセス、技術などのことを指す言葉だが、この言葉こそがAppleと他のスマートフォンメーカーの、カメラ機能に対するスタンスの違いを表している。

 どのメーカーもカメラ機能を重要視しているが、写真画像を生み出すプロセスについての考え方が異なるのだ。

 iPhone 11シリーズのカメラ画質が評価されたのは、あざとい修整を自動的に施すのではなく、光学的な現象のシミュレーションや複数フレームを活用して演算能力でリアリティーを追求するなど、写真としての質を高める方向で作り込んでいたからだ。

 コンピュテーショナルフォトグラフィーという言葉を今年多用しているAppleだが、実際にその取り組みを大幅に取り入れたのはiPhone 11の世代だった。そしてiPhone 12と12 Proシリーズにおいても、その路線に変更はない。

 最新のA14 Bionicに搭載されるNeural Engine、ISP、機械学習アクセラレータ、GPUなどを活用し、iPhone 11と11 Proシリーズにおけるカメラ画質向上路線をさらに引き上げている。

 演算によって光学特性をシミュレートし、結果として得られる写真の質を高めるという考え方を突き詰めていけば、演算能力が高まるほどに画質も向上する。従って1年分、SoCの能力が高まれば、その分、画質も向上する。

A14 カメラの画質向上には、A14 Bionicに搭載されるNeural Engine、ISP、機械学習アクセラレータ、GPUなどを活用。SoCの進化が画質の向上につながっている

 実際にどの程度、画質が高まったかは今後、実機で確かめることにしたいが、搭載する全てのカメラで、「ナイトモード」や「スマートHDR」、そしてDeep Fusionといった画像処理による高画質化を施せるようになったのも、SoCの進化によるところが大きい。

Night Mode ナイトモードのAppleによるiPhone 12 Proのサンプル写真。従来より明るく撮影できるようになった

 複数フレームの異なる露出から適切な画像を得るスマートHDRは「スマートHDR 3」に進化し、機械学習による最適なトーンマップを行うようになったのも、A14 Bionicの機械学習処理が80%高速化されたからだ。

Smart HDR 3 スマートHDR 3を活用したAppleによるiPhone 12 Proのサンプル写真。機械学習がシーンに応じて、シャープネス、カラー、トーンを調整する

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