「iPhone 12」は“高くてもProの方がお買得”と思う理由 違いは望遠カメラにとどまらず本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)

» 2020年10月15日 17時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

LiDARによる形状認識で適切な光学演算処理が可能に

 iPhone 12と12 Pro、いずれも同じようにコンピュテーショナルフォトグラフィーの考え方は取り入れられているが、12 Proには赤外線レーザーを用いて対象物との距離や形状を測定する「LiDAR」スキャナが組み込まれている。

LiDAR iPhone 12 Proシリーズはカメラとともに「LiDAR」スキャナを搭載する

 iPad Proでは主にARで使われている空間を認識するためのスキャナセンサーだが、このセンサーが「より本格的なカメラ」をコンピュテーショナルフォトグラフィーで実現するための必須ツールとなる。

 LiDARを用いれば、画素ごとに距離情報を得ることが可能だ。しかも明るさに影響しないため、暗所でも正確に距離の測定が可能で、ナイトモードに切り替えが必要なほど暗い中でも、iPhoneはカメラ位置から見たときの景色を把握できる。

 これまでアウトカメラでは、複数のレンズが搭載されている位置のわずかな視差をもとに、ニューラルネットワーク処理で背景と被写体を切り抜いていたが、画素ごとの距離情報が判別できれば、もっと詳細なデプス(深度)マップをカメラ画像に適用できる。

 被写体の形状や背景との分離を的確に捉えることができれば、その形状や距離に合わせて光学シミュレーションが行えるため、よりリアリティーの高い写真を得ることが可能になる。もちろん、どのレベルまでできるかはセンサーの質と処理するプロセッサの能力に依存するが、LiDARのあるとないでは、今後のアップデートも含めてコンピュテーショナルフォトグラフィーで突き詰められる奥行きが変わってくる。

 また、ソニーが「Xperia 1 II」の3D iToFセンサーで行っているように、オートフォーカスのアシストにLiDARを用いているという。暗所でのオートフォーカス速度が大幅に向上しているとのことだが、こちらも実機が使えるようになってから確認したい。

LiDAR LiDARの搭載により、明るさが足りないシーンでのオートフォーカスは従来の6倍高速になったという。iPhone 12 Proシリーズではナイトモードのポートレートが可能になった。AppleによるiPhone 12 Proのサンプル写真

HDR動画の撮影から表示までを自己完結

 動画の撮影機能も進化が目覚ましい。むしろ動画画質の向上の方が、今回のiPhone 12と12 Proシリーズでは目玉と言えるかもしれない。何しろHDR(ハイダイナミックレンジ)映像を録画し、「Dolby Vision」形式で保存可能になったのだ。

 HDR動画の撮影に特別なテクニックは必要なく、ただ動画で撮影するだけでHDRの動画データを取得できる。このままでは互換性の問題が出そうだが、Dolby VisionはSDR(標準ダイナミックレンジ)の映像とHDRの差分情報を別々に記録するため、従来のディスプレイで表示する際にはSDRで問題なく表示される。

HDR 初めてiPhoneにHDR動画の撮影機能を搭載。4K・60fpsのHDR動画を「Dolby Vision」形式で保存できる。端末上でHDR映像のライブプレビューや編集も可能だ

 加えて今回発表された4モデルは、全て最大1200nitsのHDR表示を行える(HDR動画表示時のみ輝度がブーストされる)。HDR映像はおおよそ1000nitsを目安にロールオフ(徐々に飽和させる特性とすること)させる作品が多く、iPhone 12も同様の設定であればHDR動画については撮影から表示まで、シンプルに自己完結する。

display HDR動画の表示時はディスプレイの最大輝度が1200nitsまで明るくなる

 ここまではiPhone 12も12 Proシリーズも同じだが、実は通常表示時の最大輝度が異なる。iPhone 12と12 miniは625nitsだが、12 Proと12 Pro Maxは800nitsと少し最大輝度が明るいのだ。いずれも従来製品よりも高い輝度なのだが、この差は何を意味しているのだろうか。

 いずれもHDR動画を表示する際には1200nitsが最大輝度だが、これはあくまでも最大値であって、全画面を同時に長時間表示し続けることを想定していないはずだ。なぜなら、これほどの明るさで表示し続ければ、バッテリーに負担をかけるだけではなく、ディスプレイの寿命にも影響するからだ。

 通常のHDR対応ディスプレイは画面の一部だけを光らせるときに最大輝度になるが、スペックを見る限りiPhone 12 Proの方が1200nitsで表示できる面積が広いなどの違いがあるかもしれない。

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