対するソニーは、4月14日に発表したフラグシップモデルのXperia 1 IIIに、世界初をうたう可変式の望遠カメラを搭載した。ペリスコープの内部が動くことで、焦点距離を変更できるのが特徴だ。焦点距離は70mmと105mm。70mmは3倍弱、105mmは約4.4倍で、最大倍率はここまで挙げてきた端末に比べると抑えめだが、そのぶん画質を強化し、普段使いしやすい望遠カメラに仕上げた。
まず、画素数は広角カメラや超広角カメラと同じ1220万に統一。画角を変えると画素数まで変わってしまうといったことがなく、一眼カメラでレンズを交換するようなイメージで利用できる。単にレンズを望遠にしただけでなく、センサーサイズも1/2.9型と望遠カメラの中では大型のものを採用した。レンズのF値も70mmのときがF2.3、105mmのときがF2.8と明るい。
さらに、センサーは24mmや16mmのカメラと同じDual PD(デュアルフォトダイオード)で、オートフォーカスの合焦が速い。物体をAIで認識、被写体をロックオンして追いかけ続ける「リアルタイムトラッキング」にも対応しているため、望遠カメラながら、動いている被写体にも強い。広角カメラより性能は落ちるが、秒間30コマのAF(オートフォーカス)/AE(オートエクスポージャー)演算や、秒間10コマの高速連写にも対応する。画質だけでなく、使い勝手にもこだわった望遠カメラといえそうだ。
先代のXperia 1 IIと比べ、望遠カメラのレンズが大きくなってはいるものの、同じトリプルカメラのため、見た目の差は小さい。ボディーの厚さは8.2mmで、7.9mmだったXperia 1 IIよりはやや厚くなっているが、実機を見た限り、大きな差は感じられなかった。70mmと105mmの間は、70mmのデジタルズームでつながなければいけない課題は残っているものの、現時点では、スマートフォンの望遠カメラの中で最も使い勝手がいいように見えた。
片手で持って操作でき、ポケットにもしまえる必要があるため、スマートフォンのカメラには、どうしても制約がある。一方で、メインカメラの画質はセンサーサイズの大型化や、処理能力の向上によるAIの進展で、ある程度デジカメに迫る画質が実現できるようになってきた。ただ、サイズの制約を受けやすい望遠カメラは、まだ発展途上といえる。こうした状況のなか、サムスンは多眼化で、ソニーは可変式レンズで、望遠撮影時の使い勝手のよさを打ち出してきた格好だ。望遠カメラの競争軸が、徐々に変わってきたことがうかがえる。
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