スマホの望遠カメラが新境地に 「Galaxy S21 Ultra 5G」「Xperia 1 III」に施した工夫石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年04月17日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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世界初の可変式望遠カメラで2つの焦点距離をカバーするXperia 1 III

 対するソニーは、4月14日に発表したフラグシップモデルのXperia 1 IIIに、世界初をうたう可変式の望遠カメラを搭載した。ペリスコープの内部が動くことで、焦点距離を変更できるのが特徴だ。焦点距離は70mmと105mm。70mmは3倍弱、105mmは約4.4倍で、最大倍率はここまで挙げてきた端末に比べると抑えめだが、そのぶん画質を強化し、普段使いしやすい望遠カメラに仕上げた。

Xperia 1 III Xperia 1 IIIには、70mmと105mmの可変式望遠カメラが搭載された

 まず、画素数は広角カメラや超広角カメラと同じ1220万に統一。画角を変えると画素数まで変わってしまうといったことがなく、一眼カメラでレンズを交換するようなイメージで利用できる。単にレンズを望遠にしただけでなく、センサーサイズも1/2.9型と望遠カメラの中では大型のものを採用した。レンズのF値も70mmのときがF2.3、105mmのときがF2.8と明るい。

Xperia 1 III 画素数は3つのカメラを1220万画素に統一

 さらに、センサーは24mmや16mmのカメラと同じDual PD(デュアルフォトダイオード)で、オートフォーカスの合焦が速い。物体をAIで認識、被写体をロックオンして追いかけ続ける「リアルタイムトラッキング」にも対応しているため、望遠カメラながら、動いている被写体にも強い。広角カメラより性能は落ちるが、秒間30コマのAF(オートフォーカス)/AE(オートエクスポージャー)演算や、秒間10コマの高速連写にも対応する。画質だけでなく、使い勝手にもこだわった望遠カメラといえそうだ。

Xperia 1 III 明るいレンズと、比較的大きなセンサーで暗所に強い。Dual PDを採用しており、オートフォーカスも速い

 先代のXperia 1 IIと比べ、望遠カメラのレンズが大きくなってはいるものの、同じトリプルカメラのため、見た目の差は小さい。ボディーの厚さは8.2mmで、7.9mmだったXperia 1 IIよりはやや厚くなっているが、実機を見た限り、大きな差は感じられなかった。70mmと105mmの間は、70mmのデジタルズームでつながなければいけない課題は残っているものの、現時点では、スマートフォンの望遠カメラの中で最も使い勝手がいいように見えた。

Xperia 1 III 70mmと105mmを1つのカメラに収めたことで、Xperia 1 IIのデザインを踏襲できた
Xperia 1 III Xperia 1 III(左)の方がやや厚いものの、サイズ感も非常に近い
Xperia 1 III
Xperia 1 III
Xperia 1 III 参考までに、Xperia 1 IIで撮影した作例。上から焦点距離は24mm、70mm、70mmからデジタルズームで105mm。105mmでもある程度遠くの被写体をカバーできることが分かる

 片手で持って操作でき、ポケットにもしまえる必要があるため、スマートフォンのカメラには、どうしても制約がある。一方で、メインカメラの画質はセンサーサイズの大型化や、処理能力の向上によるAIの進展で、ある程度デジカメに迫る画質が実現できるようになってきた。ただ、サイズの制約を受けやすい望遠カメラは、まだ発展途上といえる。こうした状況のなか、サムスンは多眼化で、ソニーは可変式レンズで、望遠撮影時の使い勝手のよさを打ち出してきた格好だ。望遠カメラの競争軸が、徐々に変わってきたことがうかがえる。

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