世界を変える5G

顧客とベンダーの視点から見るローカル5Gの現状 普及に向けた課題は?:Interop Tokyo カンファレンス 2021(2/2 ページ)

» 2021年07月01日 11時35分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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4.7GHz帯の割り当てで盛り上がるも活用は道半ば

 NECのデジタルネットワーク事業部 上席事業主幹の藤本幸一郎氏は、ローカル5Gの最新動向について説明した。2020年12月にSub-6の周波数帯である4.7GHz帯が割り当てられた。ユーザー側の視点に立つと、この帯域の割り当てはネットワーク整備やデバイスの入手など多くの面でメリットがあるため、ローカル5Gの普及に大きく貢献することが期待される。

ローカル5G NECの藤本氏は、実際にローカル5Gに携わる立場から、最新の情報やローカル5Gの現状などについて説明した

 また、ローカル5Gの普及に向けた大きな変化として藤本氏は、sXGPによる自営LTE網で用いられている1.9GHz帯を、ローカル5Gをノンスタンドアロン(NSA)で運用する際、制御信号などを扱う4Gのアンカーバンドに利用できるようになったことを挙げる。ローカル5Gのアンカーバンドは既に地域BWA向けの2.5GHz帯が存在するが、「地域BWAを使っている地域では干渉調整に失敗し、使えない」(藤本氏)ことが多かったことから、1.9GHz帯が使えるようになったことも大きな意味があるという。

ローカル5G ローカル5GをNSAで運用する際のアンカーバンドに、地域BWAの2.5GHz帯だけでなくsXGPで用いる1.9GHz帯も活用できるようになった

 そしてもう1つ、藤本氏が重要な変化ポイントとして挙げたのが「同期」である。ローカル5Gの周波数帯は上りと下りの通信を短い時間で切り替えるTDD(時分割複信)での運用が求められることから、場所を選ばず利用するにはそのタイミングを、隣接する帯域を使うキャリアと同期する「同期運用」が求められる。だがそれでは上りに割り当てられる比率が変えられず、アップロードを高速化したい企業のニーズに応えられない。

 そこで、一部だけ同期パターンを変えて運用することにより、キャリアとの調整が必要なくアップロードの高速化などを実現できる「準同期運用」、そしてキャリアの電波と干渉しない建物内での利用を前提に、非同期で運用する「完全非同期運用」という手段も用意されたという。藤本氏によるとこれは「世界的に見ても日本が先進的」とのことで、非常に面白い取り組みと評価しているようだ。

ローカル5G ローカル5Gでは上りと下りのタイミングをキャリアと同期して運用するだけでなく、非同期、あるいは一部だけを非同期にする準同期での運用も可能となっている

 藤本氏は、自らローカル5Gの実証実験やPoC(概念実証)に携わった立場から、現状の課題についても言及した。今のところ、ローカル5Gの活用は高速大容量が主であり、低遅延などを生かした取り組みは少ないことに加え、専用の周波数帯を用いた閉域でのネットワークであることから、安全・安定性が高く評価されている。しかしそれらは「実は5Gの特徴ではない」と話し、ローカル5Gの実力を発揮する取り組みが進んでいない様子も示している。

 その要因について藤本氏は、現状の5Gはまだ進化の途上であり、提供される機器の成熟が進んでいないことを挙げる。また現在のローカル5Gの性能では、Wi-Fiと比べ100m〜200mほど安定した電波を飛ばせる一方、通信速度は遅いなど、圧倒的な機能差がなく明確な差異化ができていないことも課題だとする。

 一方で藤本氏は、2022年頃には多様な製品が提供されて機器の成熟が進み、価格競争が起きることで2023年頃には本格的に市場が立ち上がると見ているようだ。ただ、そのためには、ネットワーク機器を提供するベンダーの“脱キャリア”、具体的にはキャリアのネットワーク水準での製品開発から抜け出す必要があるという。

 実際普及を進める上では、ネットワーク機器の価格も「ちょっと安いじゃ駄目。1桁、2桁くらい下げる勢いじゃないといけない」(藤本氏)とのこと。ローカル5Gを導入する企業のニーズに応えられるよう、機器のアーキテクチャそのものから考え直して、低価格化などを進めていく必要があるのではないかとも話している。

ローカル5G ローカル5G向けの製品が本格投入されるのは2022年からで、それを見越すと普及は2023年からと藤本氏は見込むが、普及には機器の大幅な低価格化が必須だという
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