5Gが創出する新ビジネス

ローカル5Gの高度化を図る技術とは? カギを握る“キャリア網”との連携(1/3 ページ)

» 2020年06月25日 10時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 ブロードバンド・アソシエーションが、ローカル5Gの普及を目指した「ローカル5G普及研究会」を設立し、5月22日にオンラインで設立発表会を開催した。発表会では東京都産業労働局と情報通信研究機構(以下、NICT)の担当者が講演し、ローカル5Gに関連する取り組みを紹介した。

5Gは「つながる東京」の基幹インフラ

 東京都産業労働局 次長の坂本雅彦氏は、最初に東京都全体としての5Gに関する取り組みを紹介した。

ローカル5G 東京都 産業労働局 次長の坂本雅彦氏

 東京都は2019年12月に「未来の東京戦略ビジョン」を発表。その中で、目指すべき未来の姿の1つとして打ち出したのが、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し、都民が質の高い生活を送ることができる東京版Society 5.0となる「スマート東京」だ。

 スマート東京の実現に向け、都は3つの柱を立てて施策を展開する。1つ目の施策が「電波の道」で「つながる東京」(TOKYO Data Highway)。1964年の東京オリンピックでは、それを契機に新幹線や高速道路といった現実の道が建設されたが、今回は電波の道を整備するというもの。いつでも、誰でも、どこでも、何でも、何があっても「つながる東京」を構築する。

 また、電波の道を整備することで、公共施設や都民サービスのデジタルシフトを進める(街のDX)。さらに3つ目が都庁のデジタルシフト(都庁のDX)。都庁そのものもデジタルトランスフォーメーションを強力に進めるとしている。

ローカル5G スマート東京の実現を目指し、3つの施策を展開する

 こうした施策でスマート東京を目指すにあたり、基幹となっていくのが5Gだ。

 東京都は2019年12月にローカル5Gの免許を申請しており、東京大学とNTT東日本とともに、ローカル5Gの環境整備、利活用に関する3者協定を締結。通信技術の研究・検証や適応領域、ユースケースの検討、中小企業への開発支援などで相互協力していく。

ローカル5G 東京都、東京大学、NTT東日本はローカル5Gの環境整備、利活用に関する3者協定を締結

 一方、東京の産業を活性化し、雇用の確保を図るための施策を推進している東京都産業労働力も、5Gを展開するにあたって各分野での取り組みを進めている。坂本氏は中小企業支援、観光施策、農業振興、雇用就業施策の4分野における施策を紹介した。

ローカル5G 東京都 産業労働力の5Gに関する施策

 中小企業支援では、「5G・IoT・ロボット普及促進事業」として、青海にある東京都立産業技術研究センターにローカル5G環境を構築。中小企業の製品の性能検査や試作品の検証ができるようにし、関連製品の開発を支援する。東京大学とNTT東日本の知見も共有し、新しい展開を探求していくという。

ローカル5G 産業技術研究センターにローカル5G環境を構築し、中小企業の製品開発を支援する

 また、工場への5G導入を支援する「工場のスマート化モデル事業」や、5Gを活用したサービスや製品開発を考えているスタートアップを支援する「5G技術活用型開発等促進事業」にも取り組む。

 観光施策では、ローカル5Gを活用して3Dで観光スポットの紹介やルート案内を実現するような「5G映像体験実証事業」に取り組み、東京観光情報センターの中で展示する。遠隔地にロボットを置いて、それを操作しながら現地を疑似体験できるようなアクティビティー体験も考えているという。

ローカル5G 東京観光センターに、5Gを活用した新たな映像体験ができる施設を展示予定

 農業振興では「東京型スマート農業プロジェクト」として、ローカル5Gを活用した遠隔での農業指導やAIによる農作業支援など新たな農業技術を開発。雇用就業施策では、5Gを活用した新しいワークスタイルのアイデアを募集して、実際にそれをモデルとして支援することによって、新しい働き方の普及を目指す他、ローカル5Gを備えた次世代型シェアオフィス整備事業にも取り組む。

 「2019年12月には、都内の30人以上の中小企業でテレワークを導入しているのは25%くらいだった。それが現在は60%と劇的に増えている。テレワークはコロナ禍で危機管理ツールとして有効ということが実証されつつあり、これを次世代に向けて定着させることが、東京都の重要な仕事になるだろうと思っている」(坂本氏)。

 東京都は、ローカル5Gを活用しながら新しい時代の行政スタイル、事業モデルを確立していく考えだ。

ローカル5Gの性能アップを図る研究開発

 NICT ワイヤレスネットワーク総合研究センターの松村武氏は、「ローカル5G可用性向上に向けたNICTの研究開発」と題して講演し、ローカル5Gに関わる研究開発を紹介した。

ローカル5G 情報通信研究機構(NICT) ワイヤレスネットワーク総合研究センターの松村武氏

 NICTは、2015年ごろから5Gの研究開発を進め、「プライベートセル」という概念を提案してきた。ローカル5Gが登場してからは、それと連携する形で研究開発を進め、ローカル5Gに応用できそうな技術が実証実験などで成果を出しているという。

 ローカル5Gの研究を進めながら、6Gも見据え、大きく3つの柱を立てて研究開発を進めている。1つが無線通信の性能、技術そのものを発展させていく方向性。また、ローカル5Gでも課題の1つとなっている、干渉の制御技術の確立。3つ目は高信頼・ロバスト(頑強)なヘテロジニアスネットワーク(複数のシステムが混ざり合った複雑なネットワーク)の構築だ。これらをテーマに研究開発を進めている。

ローカル5G 6Gを見据え、NICTが取り組んでいる5Gの高度化技術

 このうち、干渉制御技術とヘテロジニアスネットワークを構築する技術は、ローカル5Gの可用性向上につながっていく技術だと松村氏は期待を寄せる。その上で、ヘテロジニアスネットワークをテーマにNICTが行ってきた実証実験、研究開発のうち、3つの事例を紹介した。

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