5Gが創出する新ビジネス

ローカル5Gの高度化を図る技術とは? カギを握る“キャリア網”との連携(2/3 ページ)

» 2020年06月25日 10時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

キャリアの5Gネットワークと協調させる必要がある

 1つ目は、キャリアネットワーク(公衆ネットワーク)とローカル5Gの協調制御・基地局共用技術の実証事例だ。この実験では、キャリアネットワークの中にローカル5Gのセルが存在していると想定。大手キャリアと契約している端末がローカル5Gのエリアに入ると、ローカル5Gのセルが運用を開始し、そのサービス(ここではスマートオフィスサービス)を受けられるようになる。

 同時に、ローカル5Gのセル外からでも、制限付きでサービスを受けられる環境となっている。セル外では通信品質がよくないので、アクセスできても制限付きだが、ローカル5Gのセル内に入ったら直接サービスにアクセスでき、高品質なサービスを受けられる。

ローカル5G キャリアネットワークとローカル5Gの協調制御・基地局共用技術の事例

 これを実現するためには、キャリアネットワークとローカル5Gのネットワークが相互に協調する必要がある。事前にローカル5Gの運用者が、大手キャリアに対し運用情報を提供しておくと、ローカル5Gのサービスに加入しているユーザーが近くに来たときに、運用情報を先に端末側に提供することで、ユーザーはローカル5Gのセルの中に入ると即座にサービスを受けることができる。

 端末には、キャリアネットワークとローカル5Gネットワークに対応した通信モジュールがそれぞれ搭載され、独立に接続できるようになっている。また、大手キャリアそれぞれが、同じようにローカル5Gの共用基地局に接続できるようにした。

ローカル5G ネットワークと端末の構成

 端末がローカル5Gのセルの外側にいるときは、サービスの質が若干落ちるが、ローカル5Gのセル内に入るとミリ波での通信が始まり、サービス品質が改善。端末の移動とそれに伴うネットワークの切り替えが可能なことが実証された。

ローカル5G 端末が紫色のキャリアネットワーク内にいて、ローカル5Gのセル(緑の円)外にいる。これはスマートオフィスのアプリケーションに外側からアクセスしている状況。そのため、右下の男性の画質も若干悪くなっている
ローカル5G 端末がローカル5Gのセルの中に移動すると、ミリ波帯での通信が始まり画質が改善した

最小限の基地局配置で5Gのメリットを享受できる

 5Gは高速大容量通信、低遅延、多数接続という3つの機能がある。ローカル5Gのエリアでも、スマホが接続するのはもちろん、多数のセンサーデバイスがあったり、あるいは自動制御系の通信が行われていたりと、5Gで掲げられている3つの機能それぞれに特化したものが、同じ場所に存在することも予想される。

 その際に、共用基地局をその数だけ打つのか、切り替えて使うのか、という問題が出てくる。しかし、システムのパラメーターをダイナミックに設定できれば、1つの基地局で同時に複数のシステムを運用できるのではないかと想定し、研究開発を進めたという。

ローカル5G さまざまなタイプの通信が行われる共用基地局で、ベースバンドの帯域割り当てをダイナミックに変更する実験
ローカル5G マルチRAN共用基地局の構成

 実験では、複数のRFユニットと複数のベースバンドユニットを1つの基地局の中に実装。これをコントロール部から適切に制御するという構成になっている。

 これにより、広域のマクロセルと小さなマイクロセルを、同じ場所に1つの基地局で実現でき、接続先のネットワークを切り替えることも容易になる。例えば、高画質の画像を伝送したい場合はマイクロセルに接続し、一般的な通信、あるいは基地局から離れていったらマクロセルに切り替えることで、スムーズな運用ができる。さらに、大容量の動画伝送には多くのリソースを割くなど、優先度の高い通信にリソースを多く割り当てることが1つの基地局でできれば、最小限のリソースで運用できる。

 このシステムは、例えばイベント会場などで有効だという。大型のスクリーンがある会場で、複数のイベントスペースごとにスマホを使うアトラクションが開催されているとする。あるときはスペースAでアトラクションが行われ、共用基地局のリソースはスペースAにいるユーザーに割り当てられる。アトラクションを行っていないスペースは、多くのリソースを大型スクリーンの高精細動画に割り当てる。

ローカル5G システムリソース制御の例

 スペースAからスペースBに人が移動すると、共用基地局はリソースの割り当てを変えていく。複数の基地局が相互に協調することで、最小限の基地局設置で効率的な通信が行えるという。

ローカル5G 人が移動すると、基地局はリソースの割り当てを変えていく

 実証実験では、ミリ波帯も含めたさまざまな周波数帯をサポートすることで複数のシステムを収容。コントロール部でベースバンドの帯域割り当てを制御した。「システムのリソースを振り分けられるところまで実装を進めることができた」(松村氏)。

ローカル5G 機材は2016年から2017年に開発したもので、まだ非常に大きいが、4.5GHz帯、28GHz帯に加え、当時、5Gの周波数候補だった32GHz帯の3つのバンドに対応している。帯域幅は20、40、60、80、100MHz幅で自由に選べるという構成
ローカル5G 同時運用すると、28GHz帯では20MHz幅、32GHz帯は80MHz幅で運用でき、帯域によって28GHz帯は40Mbps、32GHz帯は160Mbpsを達成した

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