3つ目の事例は、キャリアネットワークからローカル5Gネットワークに端末が高速で移動してきたときに、スムーズにネットワークを切り替える技術の実証実験だ。NICTでは「事前仮想接続技術」として研究開発を進めてきた。
ローカル5Gで、特にミリ波を使う場合、サービスエリアがそれほど大きくないことや接続性により、移動体がローカル5Gのセルに入ってきても、接続されないまま通り抜けてしまう恐れがある。それを解決すると期待されているのが「事前仮想接続技術」だ。
NICTは、JR東日本、鉄道総研と連携し、JR東日本烏山線の営業線に自営リニアスポットセルを構築し、営業列車を使って実証実験を行った。
事前仮想接続技術では「アシストセル」という考え方が導入されている。ローカル5Gのスポットセルに入ろうするクルマは、セル外にいるときに、何かしらのネットワーク経由でローカル5Gのコアネットワークに事前にアクセスしておく。これにより、スポットセルの中に突入したときに即座につながるという仕組みになっている。
次のグラフは、事前仮想接続技術の効果をまとめたものだ。左の青い棒グラフは事前仮想接続技術を適用しなかった場合。突入からセルサーチに要する時間を表しているが、4分以上たっても接続できないケースがある。非常に速く接続できたケースもあるが、結果にはばらつきがあり、使い勝手がよくない。しかし、事前仮想接続技術を使うと、右のグラフのように10秒以下で接続できた。
左は事前仮想接続技術を適用しなかった場合のセルサーチに要する時間。4分でも接続できないケースがあったが、事前仮想接続技術を適用すると、14回の試行のうち、全て10秒以下で接続手続きが完了し、サービスを受けられると実証できたNICTでは、今後も研究開発、実証実験を通じて、ローカル5Gや5Gの高度化、その実用化について貢献していくとしている。
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