NPO法人のブロードバンド・アソシエーションが、ローカル5Gの普及を目指し、ものづくりとパートナー形成、ユースケースの探求を通じて、ローカル5G導入プラットフォームの成功モデルを確立することを目的とした「ローカル5G普及研究会」を設立した。本来は3月に設立発表会の開催を予定していたが、新型コロナウイルスによる感染症の拡大の影響で、5月22日にオンライン配信で設立発表会が行われた。
発表会では、前半に研究会とその下部組織となるワーキンググループの活動についての紹介、後半で関連団体の講演が行われた。今回は前半の講演で語られたローカル5Gの特徴と研究会の活動、ローカル5Gの課題解決に向けたワーキンググループの取り組みを中心に紹介する。
ローカル5Gは、地域企業や自治体、大学などが、個別ニーズに応じて、自らの建物内や敷地内でスポット的に構築できる5Gシステムだ。2019年12月に制度化され、東京都やNTT東日本、NECなどが免許を申請。交付も始まっている。ローカル5Gが使用する周波数で、現在、免許を取得ができるのは28MHz帯の100MHz幅。その他、Sub6の4.5GHz帯もローカル5G用として割り当てが検討されている。
ローカル5G普及研究会の委員長で東京大学 大学院情報学環 教授の中尾彰宏氏は「ローカル5Gは自前でカスタマイズ可能なネットワーク。『情報通信の民主化』が期待できる」と期待を寄せている。
ただ、ローカル5Gの導入にはプラットフォームの整備が必要で、そこに課題が多いという。中尾氏が地域を回って最もよく質問されることが「コストはどれくらいかかるのか」だ。機器の低廉化、オープン化、カスタマイズに応えられる柔軟性、運用の容易化、大手キャリアが提供する5Gサービス(公衆5G)と組み合わせること、セキュリティの高度化、有線ネットワークを含めた展開など、多くの課題を解決していく必要がある。
ローカル5G普及研究会はこれらの課題を認識し、解決するために「さまざまなステークホルダーが英知を結集して、実際のものづくり、パートナー形成、およびユースケースの探求を通じてプラットフォームの成功モデルケースを確立すること」を目的として設立された。低コストでありながらカスタマイズ可能で、公衆5Gと遜色ないレベルのインフラの早期実現と普及を図り、公衆5Gとローカル5Gの適材適所の利活用方法を探求するとしている。
研究会には下部組織として実証試験ワーキンググループ、技術ワーキンググループが置かれている。実証試験ワーキンググループは東京大学とNTT東日本が共同で設立した「ローカル5Gオープンラボ」を使って、ユースケースの確立に役立つ情報収集を行っている。また、技術ワーキンググループは、ローカル5Gを実際に構築し、運用していくためのプラットフォームを開発する。ものづくりのノウハウを蓄積し、提供していくという。
例えば、ローカル5Gオープンラボでは、スタンドアロン型の5G基地局を自前で開発。「普段使っているPCでも、ソフトウェアを開発することで非常に安価な基地局を作ることができる」と中尾氏は説明している。
また、ローカル5Gは利用者が望むようにカスタマイズできることが特徴。ローカル5Gを使うユースケースでは、カメラで撮った映像を送信するなど、データの受信よりも送信に帯域を使うケースも多い。そこで、受信と送信の帯域幅を2:7(合計10にはならないが便宜上、この比率で実験)の比率で行ったところ、送信時に200Mbps近い速度を出した。公衆5Gではできない、帯域のカスタマイズができることも、ローカル5Gの利点の1つだ。
研究会では、こうした「カスタマイズを可能にするような物作りをしていきたい」と中尾氏は語っている。
中尾氏は、5Gの先の6Gにも既に目を向けており、「ローカル5Gの課題解決から革新が生まれ、ローカル6Gへと進化して、その共通仕様が6Gにまとめられていくのではないか」と期待を寄せる。「ローカル5Gを進めることは、次世代の通信を作ることにもつながっている。実際に手を動かして、ものを作って、プラットフォームの低廉化・普及に貢献できる方々の参加をお待ちしている」と呼びかけた。
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